80歳を過ぎたら積極的なガン検診に行く必要はあるのか?
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
最近うちの患者さんの話です。
89歳の男性の患者Aさんです。17年前は脊柱管狭窄症でご来院され、以来足腰の痛みの予防及びその他の病気にならないよう、通い続けている方です。性格は非常にまじめで、論理的に物事を考える習慣があります。自治体の健診を真面目に受け、89歳の今でも特にこれっといった問題もなく、血圧、血糖値、コレステロール、尿酸値、肝臓・腎臓の数値は正常です。40数年前から飲んでいる降圧剤と近所の整形外科でもらったビタミン剤以外は常用薬もありません。
しかし、突如”事件”が起きました。地方赴任になった息子さんが東京に出張で来られて、ご実家に泊まった時、「お父さん、だいぶ痩せたんじゃない?」と夕食の時に言ったそうです。さりげないこの一言がどうしても気になり、家のデジタル体重計に乗ったら、ビックリ!!!確かに半年前の区民健診で67キロあった体重が今57キロしかない!!!どこも痛くないし、よく食べているし、自覚症状もないが、万が一良くない病気だったらと思い、翌日近所のかかりつけ医(ここで健診と降圧剤をもらっています)にすぐに行かれたそうです。半年で体重が10キロも落ちたなんて、どこかがおかしくなっているのではないかと。
かかりつけ医はとりあえずもう一度血液検査をやろうとおっしゃい、採血だけして帰ってきたそうです。結果待ちの間に、私のところでいつもの鍼灸治療がありましたので、このことを教えてくださいました。
1、鍼灸師は定期的に患者さんのからだを診ていますので、体重、皮膚の変化などすぐにわかります。10キロも体重が減ったとは到底思えませんでした。
2、かかりつけ医が行った血液検査の中に、腫瘍マーカーが含まれていないそうです。ここでまずホットしました。私もAさんの場合、腫瘍マーカーを見る必要はないと思います。かかりつけ医の方を存じ上げておりませんが、この先生の判断には医学書やガイドラインを超えた心の優しさを感じます。しかも、腫瘍マーカーはガンではない炎症などにも反応し、偽陽性の問題があり、単独診断には向きません。
3、しいて言えば、かかりつけ医のクリニックでもう一度体重を測ればよかったと思います。
患者さんに、検査結果はきっと何の異常もないよって申し上げて、安心してもらいました。
そして、その次に治療にいらっしゃったときに、結果報告がありました:
1、血液検査の結果はなんの問題もありません。
2、半年で体重が10キロも”落ちた”犯人が分かりました。おうちの体重計の故障だそうです。デジタル表示の左下の縦棒が表示されなくなり、 が
になってしまったそうです。つまり、体重は全然落ちていなかったのです。ちなみに、奥様の体重は40キロ台ですので、この一件で奥様も何度か体重計に乗ってみたのですが、4は左下の縦棒に関係ないですので、機械の故障には気づきませんでした。。。
「こんなこともあるんですね!」って、二人で笑い飛ばしたのですが、内心ではホットして、この”事件”もここで一件落着となりました。もし、腫瘍マーカーを出して基準値を超える値が一つでもあったら、或いは総合病院を紹介され、そこで血液検査、尿検査、内視鏡、MRI、CT検査をしたら、患者さんにとって、精神的にも、体力的にも、もちろん経済的にも大きな負担になります。
半年前の区民健診ですべて正常で、なんの自覚症状もない方が、仮に本当に体重が10キロ落ちても、89歳にもなった方はここで積極的にガンがあるかどうかを探しに行ったほうがいいのか、しないほうがいいのか、迷うところですが、Aさんの場合は、しないほうがいいと思います。
1、おとしは89歳です。検査して、どこかにガンができたと診断された場合、標準治療に入ります。手術、放射線、そして抗がん剤投与、どれも心身の負担が大きいです。薬物療法の場合、年齢から、抗ガン剤ではなく、ホルモン由来のガンの場合、ホルモン剤のみの場合もあるでしょうが、副作用に負けてしまう可能性がゼロではありません。ガン告知され、何事もなかったように、標準治療もしないと選択できる方はやはり極めて少数派だと思います。ここがキーポイントでしょう。つまり、標準治療を受けるつもりがあるかどうかです。年齢から治療を選択しないと決めているなら、検診を受ける意味もここでなくなります。
2、仮にどこかに既にガンがあるとしても、ご本人はグルメな方で、一日三食をよく頂いて、晩酌も美味しく、痛いところもない、なんら不快な自覚症状はなく、毎日奥様と散歩や買物、趣味のカメラ撮影に出かけていらっしゃい、この状態でガン診断をもらったほうが問題です。ご性格からきっと大きなストレスとなるでしょう。知らないほうが命のためになるということはやはりあるのです。知らないほうがストレスもなく、奥様の栄養バランスの取れた手料理を頂いて、知らないガンの存在と共に健やかに生きていけるのです。
3、若者と違い、80代、特に85歳以降は仮にからだのどこかにガンができても、通常進行が遅く、仮に自覚症状が出るようになってからでも、自覚症状を改善する対症療法のみでという考え方もあります。
いろいろ考えさせられたできごとでした。80歳を過ぎて特に85歳以降、積極的にガン健診をうけるのか、もちろん体力などの個人差がありますし、受けるのも受けないのも自由で、正解というものはありません、皆様はどのようにお考えでしょうか。
先日の夏休みで富士山の近くに行きましたが、偶然トウモロコシ畑を見つけました。写真の時は曇っていましたが、遠くの山々が隠れてしまい、一面のトウモロコシ畑が目の前に広がり、思わず大昔に見た北海道の風景を思い出しておりました。
海も曇りですが、遠くの赤い貨物船が近くにきたら、相当迫力があるでしょうね。