症例紹介 時々追加中、最新症例は「鍼灸師ブログ」にてご確認ください。
↓筋緊張性頭痛 | ↓偏頭痛 | ↓群発性頭痛 | ↓突発性難聴 | ↓耳鳴り ↓めまい | ↓頚椎症 | ↓肩こり | ↓腕の痛みとしびれ | ↓ぎっくり腰 | ↓脊柱管狭窄症 | ↓ふともも付け根の痛み | ↓変形性膝関節症 | ↓急性アレルギー性皮膚炎 | ↓花粉症(アレルギー性鼻炎) | ↓喘息 | ↓不整脈 | ↓脂肪肝・肝機能低下 | ↓糖尿病境界型 | ↓過敏性腸症候群 | ↓膀胱炎 | ↓過活動膀胱・頻尿 | ↓不妊症 | ↓バセドウ病 | ↓慢性関節リウマチ | ↓自己免疫性肝炎 | ↓原発性胆汁性(自己免疫性)胆管炎 | ↓うつ病 | ↓パーキンソン病 | ↓多剤耐性肺結核 | ↓肺MAC症(肺非結核性抗酸菌症) | ↓気管支拡張症 |
筋緊張性頭痛
20歳の女子大学生。
参考書を探すため閉店間際の紀伊国屋書店に入りました。夥しい数の本から何冊かの目次や内容を読んでいるうちに、目の奥からなんとなく鈍痛を感じたので、諦めてわりと気に入った1冊だけを購入しました。書店を出て電車に乗ってから、頭全体が締め付けられるように重く痛くなり、首・肩・背中のコリも強く感じるようになりました。寝ればよくなると思っていましたが、翌朝になってもまだ頭痛がして、何もやる気はしなくなったので、お母様の勧めで来院されました。
・治療方針:
①首・肩・背中のこりをほぐし、全身治療を行います。
②頭痛をとるため、鎮痛に優れた効果のあるツボを組合わせます。
③自律神経のバランスを正常化させます。
・治療結果:
治療の途中から頭痛は半分軽減しました。治療が終わった時点で、こり感と頭痛は完全に無くなりました。1週間後に治療効果を維持するために再度来院されましたが、その後頭痛の再発はありません。
偏頭痛
52歳の女性。
2月の最も寒い日の出来事でした。ウォーキングのつもりで2駅を歩いて新橋にあるデパートへ買い物に行きました。歩きながら「寒いな~」とガクガクしながら、やっと目的地に着きました。暖かい建物に入ってホットしたとたんに、右のこめかみ当たりがジンジンと痛み始めました。品物を選んでいるうちに痛みはどんどんひどくなり、気分が悪くて我慢できなくなりました。薬局に駆け込んで鎮痛剤を買って飲みましたが、痛みがいくらか和らいだものの、完全に取れませんでした。2年前当治療院で更年期障害の治療をしたこともあって、その足で緊急来院されました。
・治療方針:
①まず鎮痛効果の強いツボをとり、刺鍼し手技を行います。
②自律神経のバランスを調整するため、全身治療を施します。
③安定作用のあるツボをとり、鎮痛効果を強化させます。
・治療結果:
刺鍼し手技を行っているうちに、頭の痛みが止まり、患者様は深い眠りに入りました。1時間半の治療後、からだのだるさはまだ残っているものの、痛みはまったく感じなくなりました。それ以来、この患者様は定期的に健康維持・増進の目的で通院するようになり、偏頭痛の発作は二度とありませんでした。
群発性頭痛
37歳の男性。
会社の仕事が忙しく、連日緊張状態が続いていました。ある日の明け方、急に激しい頭痛で目を覚ましました。頭の芯まで強い痛みがして、吐き気もありました。涙と鼻水もなぜか突然出て止まりません。奥様が心配して、何か変な病気ではないかと、すぐ病院に行くように勧めましたが、その日大事な会議があるので、まず家にある鎮痛剤を飲みました。会社に行く前に多少軽くなり、午後にやっと痛みが治まりました。しかし、3日後にまた同じような頭痛発作があって、病院で「群発性頭痛」と診断されました。薬を飲みましたが、やはり時々発作が起こっていたため、義理の母親の勧めで当治療院に来院されました。
・治療方針:
①まず鎮痛効果の強いツボをとり、刺鍼し手技を行います。
②自律神経のバランスを調節し、全身治療を行います。
③安定作用のあるツボをとり、鎮痛効果を強化します。
・治療結果:
週に1回の治療を4回続けました。鍼灸治療が始まってから、1回だけ軽く発作が起こりましたが、薬を飲まずに自然に治っていきました。その後、月に1回予防のために1年間治療を続けましたが、再発はなかったので、しばらく「様子を見る」ということで治療を一段落としました。
突発性難聴
24歳の男性。
入社して2年目になりましたが、すでに会社から重要な仕事を任せられるようになりました。責任感の強いまじめな好青年です。ある日の朝、会社の電話が鳴りました。彼は受話器を取り、いつもの習慣で左耳に受話器を当てましたが、何も聞こえない!慌てて右耳に替えたら、今度は聞こえました。病院での診断は左耳の「突発性難聴」でした。2週間分の飲み薬をもらいましたが、その薬が「副腎皮質ホルモン剤」だと知ったお母様は「その薬を飲んじゃだめ!」と、薬の服用に強く反対しました。
彼のお母様は3年前に「血小板減少性紫斑病」で、病院で処方された「副腎皮質ホルモン剤」を1年あまり飲みましたが、良い効果を得られなかった上、骨粗しょう症・骨折・うつ症状などの副作用に長い間苦しんでいました。その後、薬をやめて友人の紹介で当院に来院され、半年の鍼灸治療を受けたところ、様々な自覚症状は改善され、検査での血小板の数値も徐々に増えてきた経緯がありました。
翌日の土曜日、青年は母親に連れられ、当治療院に来院されました。
・治療方針:
①難聴に特効性のあるツボを組合わせて刺鍼します。
②血流をよくさせます。
③安定作用のあるツボを同時に取ります。
④免疫系のバランスを調節します。
⑤自律神経のバランスを調節します。
・治療結果:
二回の治療で左耳の聴力は完全に回復し(突発性難聴は発症後すぐに治療を開始したほ
うが治療効果が高いです)、ご本人もびっくりされました。
耳鳴り
46歳の主婦。
お母様が手術のために入院しているので、毎日のように病院に通っていました。ようやくお母様の手術が成功し無事に退院した頃、彼女は両耳の耳鳴りを感じ始めました。音がうるさく、一日中鳴っていました。周りが静かになると、余計に耳鳴りが大きくなり、夜はなかなか寝付けませんでした。睡眠不足で毎日体がだるくて元気もなくなりました。この状態が数ヶ月続いて、だんだんうつ状態になり、精神科を受診し睡眠薬が処方されました。もらった誘眠剤を飲んでから睡眠が改善されましたが、目が覚めると同時にやはり耳鳴りが始まり、止まりません。苦悩の挙句、お友達に相談し、当治療院が紹介されました。
・治療方針:
①耳鳴りに特効性のあるツボをとります。
②安定作用のあるツボを同時にとります。
③全身の血流をよくさせます。
④自律神経のバランスを改善します。
⑤誘導療法を施します。
・治療結果:
治療は週に1回のペースで始まりました。耳鳴りはすぐに治まりませんでしたが、体調が全般的に改善され、睡眠がよくなり、元気とやる気が出てきました。耳鳴りの音がだんだん気にならなくなり、ある日、「あっ、鳴っていない!」と気付き、ご自分でもびっくりされました。3ヵ月後に、耳鳴りが完全に止まりました。それ以来、更年期症状の予防・健康増進の目的で2週間に1度予防治療に通院されています。
めまい
めまいの鍼灸治療は日常的に行われており、ほとんどの方は一回もしくは数回の治療で改善・完治できております。数多くの症例はありますが、ここでは一例のみ挙げさせていただきます。
患者様:64歳の女性。
ある日の朝、起きようとすると、経験したことのないめまいに襲われました。しばらくしてから無理に起きましたが、頭がボーとして、何となく一日中ふらふらして、家事がきちんとできる状態ではありませんでした。二日後、同じように朝起きたときにめまいがしました。心配になって近所の内科に行ったところ、「頭位性めまい」と言われました。薬を飲んで少し改善しましたが、一週間後スーパーで買い物していた時、偶然居合わせた友人に名前を呼ばれ、振り返った途端に、また似たようなめまいが起きてしまいました。外でしたから、とても怖かったとのことでした。そのご友人のご紹介で当治療院に来られました。
・治療方針:
①中耳と内耳の血行・リンパ液の流れをよくします。
②めまいの特効ツボをとります。
③自律神経のバランスを調節します。
④全身の筋緊張をほぐします。
・治療結果:
1回めの治療から、2回めの治療(4日後)まで1度もめまいをしたことはありませんでした。2回目の治療が終わって1週間後に、3回めの治療をしました。その間ずっとめまいは起きなかったので、治療を一旦終了にして、経過観察にさせて頂きました。3ヵ月後に、ぎっくり腰のために再来院されましたが、めまいは完全に治ったとおっしゃっていました。
肩こり
35歳の女性会社員。
毎日パソコンを使って仕事していますので、首・肩・背中が板のようにパンパンと張り、腰も重い。そして、目の疲れと乾燥も大変つらいのでした。ご自分で適当に体を動かしたり、ご主人に肩を揉んでもらったりしましたが、症状は改善されませんでした。同僚の勧めで、当治療院に来院されました。
・治療方針:
①まず、張っている筋肉の緊張をほぐします。
②目の周り・首・肩・背中・腰の血流を改善させます。
③弱まった副交感神経の働きを正常に戻します。
・治療結果:
治療したあと、「大変気持ちがいい!」と喜んでおられました。目がすっきりしましたし、首・肩・背中のこっている感覚が完全に取れて、腰もかなり楽になりました。1週間後に2回目の治療をしました。様々なつらい症状がほぼなくなり、生理痛と睡眠までよくなったので、3回目の治療を2週間後にしました。「調子はとても良い」ということで、再発予防と健康維持のために、月に1回治療に来られています。
ぎっくり腰
47歳の男性会社員。
仕事はデスクワークなので、毎日ほとんど腰掛けて仕事をしています。ある日、隣のデスクの電話を取ろうと、無理に腕を伸ばした瞬間、電撃が走ったように腰が動かなくなりました。腰を曲げることもできないし、伸ばすこともできず、歩くのはやっとのことでした。かつて当治療院で腰痛治療を経験したことのある同僚に付き添われ、タクシーで当治療院に緊急来院されました。
・治療方針:
①急性腰痛に特効性のあるツボをとります。
②局所を冷やしつつ、炎症組織の自己修復を促します。
③自律神経の安定を図ります。
・治療結果:
治療が終わったら、痛みが半分以上減りました。歩けますし、腰を前後に動かしてもあまり痛みを感じませんでした。ただし、症状は緩和されましたが、病気自身はまだ根治していないので、重い物を持たない、基本的に安静にしたほうがよいと、患者様に生活の注意事項をお話しました。3日後に二度目の治療をして完治となりました。
脊柱管狭窄症
71歳の男性。
6年前会社を定年退職した頃から、腰が痛くなり、右足の痛みと痺れも現れてきました。特にこの1年くらいは、100メートも歩かないうちに、腰と足の痛み・痺れが強くなるため、その場で休まなければなりませんでした。病院の診断は「脊柱管狭窄症」で、湿布薬と鎮痛剤が処方されましたが、いっこうに良くなりませんでした。当治療院院長の著書を読んで、治療に来られました。
・治療方針:
①腰局部の慢性炎症性反応を改善します。
②腰局所の血流をよくします。
③腰部筋肉の緊張をほぐします。
④鎮痛効果の特効ツボをとります。
⑤全身の代謝を改善します。
・治療結果:
週に1回の治療で、3回目で腰と足の痛みが半減できました。3ヶ月の治療で痛みと痺れがほとんど感じなくなり、生活において不自由を感じることはなくなりました。その後、2週間に1度の治療で、長期の海外旅行にも行けるようになりました。からだ全般の調子もよくなったことで、自信を取り戻し、現在も毎日とても元気に過ごしていらっしゃいます。
変形性膝関節症
<症例①>60歳の女性。
子供の頃から運動が好きで、今でも週に2回テニスをしています。しかし、3週間前から突然右ひざが痛くなり始め、痛みが徐々にひどくなり、膝が倍ぐらいの大きさにパンパンと張ってきました。すぐに整形外科に行って、関節にたまった水を抜きましたが、まだ腫れていますし、痛みもあって歩けません。体を動かすのが大好きな彼女ですが、動けないため本当にまいってしまいました。お友達のご紹介によりタクシーで当治療院に来られました。
・治療方針:
①まず鎮痛バリをします。
②ひざ局所の炎症を鎮静化します。
③ひざ局所の血流をよくします。
④ひざ周囲の損傷した組織の再生・修復を促します。
⑤腰や健常のほうの足の疲れを取ります。
・治療結果:
1回の治療で腫れは完全に取れませんでしたが、痛みはだいぶ楽になりました。2回目の治療は電車で来られました。5回の治療後、階段を降りる時以外には、右ひざの痛みはほとんどなく、腫れもほとんど取れました。その後、テニスを続けるため、また生活習慣病の予防と健康増進のために、2週間に1回のペースで鍼灸治療を継続していらっしゃいます。膝の痛みはそれ以来、再発していません。
<症例②>2018年4月13日の「鍼灸師ブログ」にて紹介した症例です:
先日膝の痛みを訴える女性の患者さん(50代)Tさんがいらっしゃいました。Tさんは学生時代にバスケットボールの選手で活躍され、その時に膝の怪我をしたことがあったそうですが、選手をやめてから膝回りの大きなトラブルもほとんどなくなりました。数年前に友人に誘われテニス教室に通うようになり、テニスにはまっていますが、去年の冬から右膝が痛み出して、大事をとりテニスを休んでいますが、運動が減ったせいか、ストレスが溜まり、体重も増え、膝の痛みもなかなかよくならないため、職場の知人の紹介でうちの治療院にいらっしゃったそうです。
初診では、右膝の明らかな炎症(赤み、熱)はなく、0脚変形もありません。ただし、少し腫れがあり、膝関節の中に水が多少溜まっているように見受けられます。この水は膝関節を構成する軟骨や半月板を栄養する「関節液」です。ところが、いろいろな原因で関節の炎症が起これば、関節液が過剰に分泌され溜まるようになってしまいます。関節に溜まった水は関節の可動域を制限し、動きづらくしてしまいますが、膝の痛みの原因にはなりません、むしろ膝関節の炎症の結果です。痛みがある以上、まず痛みを引起す炎症を取り除く必要があり、炎症がなくなれば、痛みも腫れも自然によくなっていきます。
うちの患者さんの中には、痛風とリウマチで膝が痛む症例もありますが、膝痛の一番多い原因は変形性膝関節症です。痛む仕組みは簡単に言えば、関節軟骨や半月板の摩耗から、炎症性サイトカインが分泌され、滑膜(膝関節の関節包の内側にある)の炎症が起こったからです。以前のブログ(2016年12月8日に公開、「鍼談灸話(2):老化を引起す慢性炎症に対する鍼灸治療①-炎症性サイトカイン」をご参照下さい)でお話したように、鍼灸は実にこの炎症性サイトカインの分泌を抑制すると同時に、抗炎症性サイトカインの分泌を促す作用がありますので、膝痛の治療にはとても有効です。
Tさんの膝痛は既に慢性期に入り、鍼治療と同時にお灸による治療も施し、患部を温めました。すると、二回目の治療に訪れたときに、既に膝の痛みが完全に無くなったとおっしゃいますので、五月からテニスを再開してもいいとお話をさせていただきました。
Tさんは学生時代によく整形外科に通っていたそうですが、今回の膝痛は整形外科に行かず、市販のシップと鎮痛剤を頓服していたそうです。今は鎮痛剤とシップを一切やめて、私から紹介した膝体操と、ご自身が普段からやられているストレッチで痛みの予防をしているそうです。
そして、Tさんにもお勧めしましたが、ご自宅で簡単にできる食養生は一つに、生姜料理を取り入れたらいかがでしょうか。生姜は副作用のない、天然の鎮痛剤と言われております。これは生姜に含まれるジンゲロールやショウガオールといった抗炎症成分に由来します。その他、身体を温め、殺菌作用もあります。新鮮な生姜なら一日60g、乾燥したものなら6gを摂ればいいです。
花粉症(アレルギー性鼻炎)
52歳の男性。
つねに「体が丈夫で、病気しない」と自慢していますが、毎年3月になると花粉症で「まいったな」と弱音を吐きます。ゴルフが大好きなのに、この季節になると誘われても、ほとんど断ります。いつも耳鼻咽喉科からもらった飲み薬と吸入剤で花粉症の季節を忍びますが、会社の同僚に「ハリしてみたら?」と勧められて、当治療院にいらっしゃいました。
治療方針:
①まずくしゃみ・鼻水・鼻詰まりなどの症状を抑えます。
②免疫系のバランスを調節します。
③自律神経のバランスを調節します。
治療結果:
1回の鍼灸治療で自覚症状がほとんど改善されました。まず鼻水が止まって、くしゃみの
回数が減り、鼻が通るようになり、目のかゆみも楽になってきました。その後、続けて3回の治療を受けて、すっかりよくなりました。発症してから10年来、初めて花粉症の季節に普段通りのゴルフを楽しめるようになりました。
喘息
喘息に対する鍼灸の治療効果は非常に優れていて、臨床において全員の患者様は改善か治癒を実感し、長年患っていた喘息を数回の治療で完治した方も何人もいらっしゃいます。
<症例1>
58歳の男性。
子供の頃に小児喘息を患いました。成年してから少し軽くなりましたが、40代後半からまたひどくなり、病院から薬をもらい飲んでいるのですが、時々重い発作が起こります。特にこの1年ぐらい、ほぼ毎月1回重い発作が起こり、救急車を呼ばざるを得ない状態が続いています。発作がない時でも、気管あたりで常にぜーぜーと音がします。「違う方法(鍼灸)で治療してみたら」と、奥様のお友達のご紹介で当治療院に来院されました。
*この方は、肺気腫も患っていらっしゃいました。
治療方針:
①まず喘息の特効ツボをとります。
②痙攣状態の気管支を広げて、呼吸機能を改善します。
③気管に溜まっている多量な炎症性分泌物(痰)を減らします。
④免疫系のバランスを改善させます。
⑤自律神経のバランスを改善させます。
⑥体力の消耗が激しいですので、「元気」を補い、全身の健康状態を整えます。
治療結果:
週に2回の頻度で治療を行い、咳と痰が減り、呼吸がかなり楽になりました。1ヶ月の治療が終わった時点で、重い喘息発作が止まり、からだ全体が元気になりました。病状が落ち着いたため、週に1回の治療に切り替えました。3ヶ月が経過しましたが、発作は一度も起こらず、食欲があり睡眠もかなり改善されました。その後、2週間に1度の治療で健康を維持し、吸入剤と飲み薬を一切止めました。
<症例2>:2018.12.16のブログを転載しております。
最近、治療側としても患者さんの早い回復ぶりに関心した症例を一つ紹介させていただきます。
患者さん:Aさん、30代後半の女性、未婚、会社員
主訴:初診は三ヶ月前で、主な主訴は以下の通りです:
①生理は45-50日周期の時が多くて、時々二ヶ月以上の場合もあって、更年期にしては早すぎるのではないか。
②お腹がゆるいほうで、一回下痢が始まれば一週間以上続く(初診時も下痢している)。
③子供のときから喘息持ち、今もほぼ毎日小さい発作がおきるため、毎日ステロイドの吸入薬を使っている。
④左側の股関節あたりと膝が時々痛み、歩くのはつらいため、あまりにも痛むときは会社を休まざるをえない。
⑤気持ちの浮き沈みは大きくて、落ち込むことが多い。
⑥背中のコリもあって、からだ全体が疲れていて、顔色は優れない。
治療の経過及び結果:二回治療して早速効果が現れたのは下痢、股関節と膝の痛み、そして喘息の発作頻度でした。まず下痢は止まり、関節の痛みはなくなり、歩くのは怖くなくなり、足のむくみも以前ほど気にならなくなりました。そして、喘息の発作頻度は半分以下に下がり、三回目の治療にいらっしゃったときは、毎日ではなく発作が起きそうなときにだけ吸入薬を使用。
しかし、この三回目の治療にいらっしゃったときに思わぬことが起きてしまいました。
Aさんは待合室に入った瞬間思わずびっくりしてしまいました。彼女は大きなマスクをかけておられましたが、しかい顔の異変を隠すことはもはやできないぐらい、顔全体が赤く腫れ上がり、所々ただれていました。「どうしました?」と聞いたところ、少し風邪気味で、仕事を休まないため、本格的な風邪になる前に予防しようと思い市販の風邪薬を飲んだら、顔がパンパンに赤く腫れたので、皮膚科に行ったら、原因はやはり風邪薬の副作用だと言われたそうです。しかし、災難は続きます。今度は食品アレルギーと思われる症状で再び肌が荒れてしまい、両腕と胸の皮膚もただれ、再度皮膚科に行き、アレルギーの原因食品を血液検査し、塗り薬をもらい、三回目の治療日を迎えたそうです。
Aさんは横になり診察を始めたら、確かに、顔以外に両腕と両手の全体、そして胸の皮膚はひどい状態にあって、範囲は広い上、赤くただれた場所はあちらこちらあり、ただかゆみも痛みもないのは唯一の救いでした。
三回目の治療の重点はこの皮膚状態の改善にシフトさせていただきました。そして4回目の治療は一週間後に来ていただくことでAさんのご了解を頂きました。ここからはびっくりの連続でした。一週間後はまず顔の状態は普通に戻り、両腕と両手そして胸の皮膚も回復してきました。赤みは引き、ただれたところはかさぶたとなり、明らかに回復に転じ始めました。一週間前の皮膚の状態は悪さの程度を10で表すなら、今は5まで回復したように見えました。あまりにも良くなったので、皮膚科の先生にも驚かされたそうです。そして、一週間後に五回目の治療時は、もうほぼ回復しました(数字で表すと1と2の間ぐらいです)。
あまりにも回復が早いですので、私もAさんの自己治癒力に関心しました、すごいです。
その後、お仕事のご都合で不定期ですが、大体7-14日の間に一度治療にいらっしゃい、今三ヶ月経ちましたが、生理周期はほぼ30日になりました。喘息のほうですが、最近の一ヶ月は全く発作はなく、吸入薬も使っていないそうです。
そして、Aさんご本人は今一番喜んでいるのは、気分の浮き沈みは楽になり、問題や不愉快なことに遭ってもすぐに気持ちを前向きに切り替えられるようになり、真冬なのにお肌はつやつやで顔色も綺麗になったという点です。
不整脈
73歳の女性。
2週間前に待ちに待った初孫が生まれました。産婦である娘さんの家に泊まり込んで、食事やら洗濯やら、すべての家事を引き受けました。最初は嬉しくてテンションも上がり、さっさと体を動かしていましたが、1週間経った頃からだんだんと疲れを感じ始め、また夜中に孫の泣き声で何度も起きて、よく眠れなくなりました。特にこの2、3日はとても疲れて、少し家事をするだけで心臓がすぐにドキドキして、息切れもありました。以前肩こりで当院に通っていた娘さんの勧めで来院されました。
患者さんの様子がただの疲れではないと診て、聴診器で聴いてみたところ、その原因はすぐ判りました。そうです、心房細動を現す心音でした。
・治療方針:
①まず不整脈の特効ツボをとります。
②安定作用のあるツボをとります。
③強心作用のあるツボをとります。
④自律神経のバランスを調節し、副交感神経の働きを優位にします。
・治療結果:
治療途中で心房細動が鎮まり、心臓が正常な拍動リズムに戻りました。患者様は深い睡眠に入り、2時間あまりが経った後、患者様は自然に目が覚め、「気持ちいい、生き返ってきた」と喜んでいらっしゃいました。二度と心房細動を起こさないよう、生活上の注意事項などをお話しました。2日後に患者様は再度ご来院され、不整脈はなく、それからずっと「疲労解消・健康増進」という目的で治療を受けていらっしゃいます。今は毎年循環器内科で、心電図などの定期検査も受け、異常はありません。
脂肪肝・肝機能低下
40歳の男性。
3年前に結婚しました。奥様は美人だけではなく、お料理もとても上手です。若いときにはすごくスマートだった彼は、この1、2年で急に体重が増え、先日会社の健康診断で「メタボ」だと言われてしまいました。加えて血液検査の結果は、肝機能を示すデータが一律に基準値を超え、「要精密検査」となりました。その後、病院の超音波検査で「脂肪肝」と診断されました。彼はほとんどお酒を飲まないのに、「非アルコール性脂肪肝」と告げられました。「痩せなきゃー!」と思いましたが、奥様のお料理はあまりにも美味しく、ついついご飯をお代わりし、おかずも全て残さず平らげる毎日が続きました。
その時、「ハリで痩せるよ」と奥様に勧められ、また肩こりもひどかったですので、当治療院に来られました。
・治療方針:
①肝機能を改善します。
②全身の新陳代謝を向上させます。
③脂質代謝を改善します。
④食事療法、運動療法などの生活指導もします。
・治療結果:
ハリ治療を始めてから、奥様のご協力で、大変バランスのよい食事を摂って頂き、食べる量も減らすことになりました。3ヵ月後に彼の体重は3キロも減り、血液検査で肝機能を示す各項目は正常に戻りました。当治療院にある「体組成計」で月に一度測ってみると、体脂肪と内臓脂肪が減り、「体内年齢」も5歳若返りました。
過敏性腸症候群
25歳の男性。
入社してまだ1年に経っていません。会社の面接試験の日、電車に乗っている最中に急におなかが激しく痛くなり、次の駅で降りて慌てて駅内のトイレに駆け込み、下痢しました。面接会場のあるビルに入ったら、またおなかが痛くなり、この日二度目の下痢でした。自分の順番を待っている間に三度目のトイレに行き、それ以来、1日に2、3回軟便が出るようになって、下痢っぽい時もありました。その後病院で「過敏性腸症候群」と言われ、処方された薬もきちんと飲みましたが、効果はあまりなく、薬以外の治療方法を探している時に、健康情報誌で当治療院の連載を読み、ご来院されました。
・治療方針:
①胃腸の機能を改善します。
②自律神経のバランスを整えます。
③食事、ライフスタイルなどの生活指導をします。
・治療結果:
続けて2回の治療をしたら、「体調がよい。下痢もしなくなった」と喜んでおられましたが、重要な会議がある日など、2回もトイレへ行くことがまだ時々あると、落ち込み気味でした。このような繰り返しがあるのは普通で、おなかの症状はストレスによるものですので、すぐにはよくならないと説明しました。その後、定期的に治療を受け、またご本人は会社の仕事に慣れてきたこともあって、半年が経った時点で、以前の健康状態を取り戻すことができました。ごくたまにおなかの症状があっても、ご本人は気にしなくなりました。今は時々肩と背中のこりを取るためにご来院されますが、その際も必ず過敏性腸症候群が再発しないように、同時に予防治療をさせていただいております。
膀胱炎
59歳の女性。
2年前に友達と3人で日帰りのバス旅行に出掛けました。トイレに行かなくて済むように極力水分を取らないようにしました。真夏ですので、バスの中の冷房は非常に効き、最初は気持ちがいいと感じたのですが、だんだんと寒くなってました。羽織るものを余分に持ってこなかったので、黙って我慢していました。午後になると、なんとなく下腹部に違和感を感じるようになってしまいました。尿意があって、トイレへ行ったのですが、おしっこがあまり出ず、今度は下腹部に強い痛みを感じました。我慢してやっと夜になってうちに帰ると、なんと血尿になり、慌てて近くの病院の救急外来に行って、「膀胱炎」だと言われ、1週間抗生剤を飲みました。それ以来、膀胱の状態はずっとよくなく、頻繁に膀胱炎のような症状が出るようになりました。しょっちゅう抗生剤を飲むわけにもいかないため、鍼灸治療を試してみたいと思うようになって、ご来院されました。
・治療方針:
①免疫力を高めます。
②膀胱の過活動性を調節します。
③神経性頻尿を考慮しながら相応なツボをとります。
④膀胱炎を予防するための生活指導をします。
・治療結果:
週に1回の治療をし、4回(1ヶ月)が終わった時点で、膀胱炎の症状はすっかり消えて治りました。その後、2週間に1度の治療をし、3ヶ月続けましたが、再発することはありませんでしたので、鍼灸治療を一段落とさせていただきました。
不妊症
最新症例は「鍼灸師ブログ」にてご確認ください。
<症例1>:
患者様:39歳の女性
主訴:35歳で素敵な男性と出会って結婚されました。ご主人は自分より5歳年上で、子供がほしいと言われ、そこから真剣に妊娠のことを考え始めました。ご主人の両親やまわりの親戚たちからの期待も薄々と感じていました。しかし、結婚して4年も経ったのになかなか妊娠できませんでした。病院で夫婦二人とも検査しましたが、特に器質異常はないと言われました。病院の先生に体外受精を勧められましたが、自然に妊娠したいという思いが強いですので、かつて当治療院で不妊治療を受けた後、2人のお子さんに恵まれた友人のご紹介で来院されました。
治療方針:
①脳下垂体ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)の生成を促進します。
②卵巣ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の生成を促進します。
③全身の血行、とくに生殖器まわりの血流をよくします。
④卵胞の発達、卵子の成熟を促進します。
⑤子宮内膜の増殖を増進します。
⑥生活指導をします。
治療結果:
週に1回の治療をし、5ヵ月後に妊娠した(自然妊娠)と確定しました。その後、順調に健康な男の子を出産したとのお知らせを頂きました。今は更年期障害の予防のため通院されています。
<症例2>:2019.10.6のブローグを転載しております。
患者様:30代女性
主 訴:今4歳の女の子が一人いるが、なかなか二人目の子は妊娠できない。30代後半になった今、焦りを感じている。婦人科に行く前にまず鍼灸治療を試してみたい、体のほかの不調も感じているので、合わせて改善できたら嬉しい。
治療結果:4回の治療を終え、5回目の治療に来られた際、生理は来ておらず、市販の妊娠検査薬で陽性反応が出たため、ひょっとして妊娠したかもしれないとのこと。もう少ししたら婦人科で妊娠したかどうか診ていただくことにし、治療を一旦中止しました。今週お電話をいただき、婦人科で検査した結果やはり妊娠が確認でき、赤ちゃんの成長も順調だそうです。本当におめでとうございます!
バセドウ病
<症例1>23歳の女性。
3年前にシンガポールから日本に留学に来ました。日本語学校で2年の勉強をしてから、都内にある某有名な私立大学に入学できました。実家の負担を減らすために、昼間は大学の勉強、夜は中華料理屋でのアルバイト、夏休みには早朝の新聞配達を頑張っていました。ところが、だんだんと疲労感を強く感じるようになり、少し仕事をすると心臓がドキドキし、かなり食べているのに体が痩せる一方でした。もう一つ気になっていたのは、目が大きくなりきらきらと光っているように見えることでした。学校を休んで病院で検査してもらったところ、「バセドウ病」と診断されました。
毎日6錠の薬を飲んでいましたが、自覚症状の改善はあまりなく、検査データも満足できるほど下がりませんでした。実家に電話をして相談したところ、父親に鍼灸治療を受けたほうが良いと勧められ、当治療院にいらっしゃいました。
・治療方針:
①免疫系のバランスを調節します。
②自律神経のバランスを調節します。
③対症療法も同時にします。
④生活指導をします。
・治療結果:
週に2回の治療をし、1ヵ月後に自覚症状がかなり改善されました。病院の血液検査は甲状腺ホルモン(FT3,FT4)と促進ホルモン(TSH)の両方は正常範囲に入り、飲み薬は6錠から2錠に減りました。それから週に1回の鍼灸治療を続け、検査データは常に正常値となったため、病院の先生と相談し、飲み薬は1錠だけで状態を維持しています。大学を卒業してから会社に入り元気に仕事をしています。現在イギリスに渡り、日本で習得した知識と経験を生かしてますますご活躍されています。
<症例2>2017年12月17日の「鍼灸師ブログ」に掲載した症例です:
うちのある患者さん(Aさん、30代女性)はバセドウ病で今年八月から鍼灸治療を始めて、三ヶ月でFT3の値が治療前の10.6pg/mlから3.4pg/mlまで下がり(12月の検査では、更に2.8pg/mlまでに下がっております)、完全に正常値に戻りました。今回はこの症例をご紹介いたします。なお、FT3は血液検査でわかる重要な甲状腺ホルモンの一つで、正常値は2.2-4.3pg/mlです。
バセドウ病は、自己免疫疾患の一つで、甲状腺ホルモンが過剰に作られるため、甲状腺機能亢進症を起こす病気です。女性の患者さんが多く(男性の5倍程度です)、30-40代の発症が一番多いようです。発症の原因はストレス、出産、遺伝などが関わっていることがありますが、はっきりした理由はまだわかりません。
バセドウ病の代表的な三つの症状(メルセブルグの三徴)は甲状腺腫、眼球突出、頻脈です。これ以外に、動悸、疲れやすい、精神不安、不眠、体重変化(減少或いは増加)、手足の振るえ、便通の異常、汗をかきやすいなどの症状が見られ、甲状腺ホルモン過剰により、新陳代謝と内臓の働きが活発になりすぎるためです。
バセドウ病の検査は、症状の確認以外に、血液検査(FT3などの値)、超音波検査(甲状腺の大きさなど)などがあり、血液検査が基本となります。治療法は基本的にまず薬から始めます。薬の効果はないか、或いは副作用のため、服薬を中止せざるを得ない場合、アイソトープ(放射性ヨウ素)治療、手術による甲状腺摘出術を行います。
さて、Aさんは発症してから、まず薬を飲み始めたのですが、MMI(メルカゾール)とPTU(チウラジール/プロパジール)両方の薬を試したのですが、原因不明な高熱や肝機能異常が確認され、服薬を中止せざるを得ませんでした。そこで、仕方なくヨウ素剤を飲み始めたのですが、前記の副作用は無くなったものの、FT3などの値とご本人の自覚症状はそれほど良くなりませんでした。そこで主治医からアイソトープ治療を勧められました。しかしAさんご本人は、アイソトープ治療も手術治療もやりたくありません。非常に困ったところで、鍼灸治療を受けてみようと考え、本治療院にご来院されました。
・治療結果:
まず、治療開始から三ヶ月の間の血液検査の結果(FT3の値)をお伝えします。
治療開始時(8/17):10.6
9/4 の検査結果:8.1
9/29 の検査結果:6.8
10/26の検査結果:5.3
11/24の検査結果:3.4
12/25の検査結果:2.8(12月25日に追加した情報です)
検査値は完全に正常範囲内に収まり、主治医の先生はもう仕事を始めてもいいと言ったそうです。自覚症状に関しては、甲状腺と目の腫れはだいぶ改善され、便通、動悸はほぼ無くなり、頻脈はまだ少しあるものの、八月治療開始前と比較すると、かなり楽になりました(今の心拍数は60-70回/分と正常、夜寝る前に少し上がる程度)。大事をとり、まだ激しい運動はできませんが、後少しで自覚症状もおさまっていくと思います。
東洋医学では、甲状腺機能亢進症を「癭瘤」だと考えます。原因はいろいろとありますが、例えば肝火亢進、心陰虚熱、痰湿などからくる経絡凝滞です。
治療自体は東洋医学と西洋医学の両方が考える病因を加味し、治療方針を決めます。とるツボ(経穴)、治療手順、治療内容の加減はその日によって違います。これは患者さんのその日の体調および症状を確認しながら、また前回治療後の身体反応などをヒアリングした後に、その都度決めていきます。
先月末から、治療回数を半分までに減らし、主にまだ残っている自覚症状(夕方から夜にかけての頻脈)を取るための治療に切り替え、最終的には完治を目指します。
慢性関節リウマチ
66歳の女性。
2年前に慢性関節リウマチと診断されました。病院からもらった薬をずっと飲んでいますが、自覚症状がよくなったり悪くなったりします。今年の春から微熱があり、関節の痛みと変形がまた進み、血液検査で炎症性マーカーが上がり、リウマトイド因子・抗CCP抗体などが陽性となり、肝機能を示す指標も悪くなってしまいました。また尿検査で尿蛋白は「+2」でした。つらい症状と予想以上に悪い検査結果により、患者さんは大変不安になり、食欲もなく、眠れない日が続きました。子供さんから「ハリも効く」と聞き、当治療院を訪ねてこられました。
・治療方針:
①まず痛み止め効果のあるツボをとります。
②免疫系のバランスをとります。
③からだ全体の調子を整えます。
④衰弱状態のからだを補います。
⑤胃腸・肝臓・腎臓などの内臓機能を改善します。
⑥自律神経のバランスを整えます。
・治療結果:
病気の活動期とみて週に2回の治療をしたところ、1ヶ月後に関節の痛みと炎症反応が改善し、関節の変形は止まりました。食欲も出てきて、よく眠れるようになったため、体全体の痛みやだるさはほとんど取れ、元気になってきました。血液検査の結果は横ばいで、進行していません。その後、週に1回の治療を行い、検査結果は3ヶ月後にかなり改善され、半年後になると、ほぼ正常値になりました。ご本人は自覚症状をほとんど感じなく、普通の生活が送れるようになりました。現在、治療効果の維持と再発予防のために、定期的に治療にいらっしゃっていますが、「いかがですか?」と聞くと、いつも「調子がいいですよ」とおっしゃいます。主治医の先生と相談した結果、飲み薬をいっさい止め、薬の副作用による身体的な不調もなくなっています。
うつ病
<症例①>40歳になったばかりの男性。
有名大学出身のエリート社員で、入社当時から会社に期待され、いくつかの大きなプロジェクトの企画を任されました。ところが、最近食欲はない、寝つきも悪い、体が疲れやすい、仕事に対する意欲は湧かない、といった症状がおこり、会社に行くのは億劫になってきました。何か悪い病気でもなったかと奥さまが心配して、病院に行くよう勧めました。内科の検査結果はとくに異常はなく、心療内科で「うつ病ではないか」と言われ、抗うつ剤などの薬を何種類かもらいました。二ヶ月くらい真面目に薬を飲みましたが、病状はいっこう改善しなく、ますます元気はなくなり、休職する事態となってしまいました。「自分に生きる価値はない」「生きても意味がない」とつぶやいた言葉を聴いた奥さまが怖くなり、何とかご主人の病気を治さなければと考え、友人の勧めでご主人をうちの治療院に連れてきました。
・治療方針:
①まず根本治療の目的で、頭鍼を行い脳内神経伝達物質のバランスを調節する。
②対症療法:代謝、食欲、疲労感などを改善する。
③対話療法をする。
・治療結果:
「早く治してもらいたい」という患者さんのご希望もあり、週に2回の治療と決めました。2週間の治療を終えたら、「だいぶ元気になった」と患者さんは喜んで、治る自信へとつながりました。4週間の治療を終えた時点で、「仕事をしたい」、「会社に行く」、「どこも悪くない」と、ご本人のご希望で仕事復帰しました。仕事が始まってから、週に1回の治療を続けていました。鍼灸治療を続けている間、病状の改善に従い、飲む薬の種類と量も減りました。そして、半年後には寝る前の睡眠導入剤だけが治療薬として残っていますが、飲まなくても眠れるときがけっこうあります。「そのうち、この薬もやめる」とご本人が自信満々です!現在は、疲労解消や病気予防の目的で、2週間に1度の鍼灸治療を続けていらっしゃいます。
<症例②>2018年9月14日の「鍼灸師ブログ」にて紹介した、うつ症状を短期間で解消した症例です:
うつ病と診断され会社を休んでいる30代の男性会社員Aさんがお友達のご紹介で先日来院されました。会社を休んで三週間、復帰目処は立たず、抗うつ薬、睡眠導入剤、頭痛薬(頓服)、胃薬を服用して一ヶ月が経ちました。
初診時Aさんは笑顔はないものの、表情は比較的明るいです。お肌のつや、顔色もそれほど悪くありません。自覚症状、発病時期、ご自分が分析した病因など、非常に簡明に説明してくださいました。目の動き、発声の仕方、声の大きさそしてトン、まだまだ元気があることが伺えます。
Aさんは食欲なく、時々食べたら吐いてしまい、胃酸が逆流する自覚があり、体重も落ちたそうです。また、夜は眠れず、頭全体が締め付けられるような頭痛が時々します。働く意欲は湧かず、残業と会社の人間関係を考えると余計に頭が痛くなります。
うつ病は環境、性格、遺伝などいろいろな要素に影響され、誰でも発病する可能性がありますが、私から見れば、Aさんはまだうつ病に発展しておらず、うつ症状を抱えてしまっている段階です。本当のうつ病とうつ症状だけを持つ方は見た目からでもある程度区別できます。或いはこのうつ症状は軽症のうつ病だと反論する方もおられるかもしれませんが、一旦「あなたはうつ病だ」と言われると、患者さんに精神的な負担、落胆、自責、再発の恐怖等が更に重く圧し掛かり、快方に向うためのハードルを高めてしまうのではないかと思い、「うつ病」という言葉をまず安易に使うことはありません。これは余談ですが、うつ症状だけでもとてもつらく、会社を休まざるをえない状況に追い込まれる方はたくさんいらっしゃいます。
会社に早く復帰し、そのうち飲んでいる薬も全部やめたいのが鍼灸治療の目標です。
先日のブログ(7月13日、どうして鍼灸は効くの(10)?→現実と夢の境目には「医の原点」があります。-その3)でたまたま神経伝達物質の一つであるセロトニンと鍼灸治療との関係について書かせていただきました。ぜひこちらのブログもご参照してください。このブログはセロトニンに焦点を絞ったため、鍼灸治療前後のセロトニン分泌量の比較データだけを入れさせていただきましたが、実際にはノルアドレナリンとドーパミンの分泌量も治療後に有意に改善したことをここで報告させていただきます。うつ病においては、この三つの神経伝達物質の量が減少したり、働きが低下したりします。
東洋医学では、うつ症状を含むうつ病は「神志病」の範疇です。「陰」と「陽」、そして気血のバランスがくずれた結果だと考えます。具体的には、神志病は陽虚(陽気が不足し、陰気が強勢を示す)の結果ですので、この状態を改善するため、陽気を補う代表的な経脈である「督脈」、「足の太陽膀胱経」、「足の陽明胃経」、「足の少陽胆経」上のツボが最優先的に選ばれます。
治療は最初の二回は週に一度でしたが、頭痛と胃の不調はかなり落ち着いたため、三回目からは二週間一度に切り替わりました。六回目の治療から睡眠導入剤なしで夜眠れるようになり、半日だけの勤務ですが会社に復帰しました。八回目の治療で抗うつ剤を含む胃薬も全部やめました。今はフルタイム(まだ残業なしという条件つき)で働いていらっしゃいます。
今回の症例は発症の初期段階で鍼灸治療に踏み切ったこと、会社の勤務体制に柔軟性があることなど、いろいろなプラスの要因がありました。また治療を通して、Aさんご本人に意識の変化(対人トラブルをそれほど気にしなくなりました)があったことも大きいと思います。
パーキンソン病
60歳代前半の男性。
中小企業の社長で、経営難を乗り越えてようやく落ち着いたころ、ある日突然、体の異変に気がつきました。最初は、両手筋肉のこわばり、動きが遅くなり、電話を取ろうとしてもなかなか手は出ないなどの症状がありました。次第に右手と右足が震えるようになり、緊張すると更にひどくなってしまいました。そして、シャツのボタンはうまく締めつけられなく、急ぐほど手が固まってしまい、体のあちこちは思うように動けず、気分も落ち込んでしまいました。やっと、奥さまのアドバイスを聞き入れ、病院の診察を受けたら、パーキンソン病との診断でした。その後、治療薬を飲み続けた甲斐もあり、自覚症状はだいぶ改善されましたが、最近となって、またぶり返したように悪くなってきました。ネットで いろいろ調べて、ハリ治療も効果があると知り、当治療院に来院しました。
・治療方針:
①脳内伝達物質の一つであるドーパミンの生成・放出、受容体との結合を改善するために、頭鍼の施術を行う。
②頭部にある特定ツボをとり、電気鍼(低周波)での治療をメインとする。
③自律神経のバランスを調節する。
④手足の硬直、震えなどの症状に対する対症療法も同時に行う。
・治療結果:
週に1回の治療を1ヶ月(4回)続けてから、手足の硬直や震顫は改善され(4割が減った)、歩き方はほぼ普通に戻りました。また、4回の治療をした後、細かい手作業や車の運転はできるようになってきました。ご本人は自信がつき、精神的なストレスも軽減されました。その後、2週間に1度鍼灸治療を続けて、現在に至ります。
今は、会社の仕事も大好きなゴルフも完全に復帰でき、普通の日常を取り戻しました。たまに疲れたとき、緊張つづきのときは、右の手足が震えることもありますが、ご本人は気にしないようにしているそうです。症状の進展はありませんが、病院の診察は定期的に受け、飲み薬を続けています。「治療薬とハリとの併用で、普段通りの生活を維持できている!」と、ご本人は満足げに言います。
ふともも付け根の痛み
50歳代の主婦の方。
健康意識が強く、積極的にジムに通い、体操、ヨーガ、太極拳を楽しんでいます。ところが、約2週間前朝起きようとした時、右の腰やわき腹の痛みや重みを感じた。今度ベッドに座ってズボンと靴下を履こうとすると、右太ももの付け根やお腹にまた強い痛みが走りっ、思わず「いたたた」と声を上げました。やっとの思いでズボンと靴下を履きましたが、右半身の痛みで歩くのは大変でした。
早速近所にある総合病院に駆け込んで、レントゲン写真などの検査をしましたが、異常は見つからず、鎮痛剤や湿布薬をもらって、うちに帰りました。しかし2週間経っても、痛みは改善されることはなく、家事はいい加減になり、ジムにも行けなくなりました。こんなとき、友人に「鍼灸を試してみたら」と薦められ、うちの治療院に来ました。
・治療方針:
腸腰筋の損傷を疑う。腸腰筋は大腰筋、小腰筋、腸骨筋という三つの筋肉からできています。おもな働きは下肢を前に挙げたり、上半身を前に屈んだりすることです。何かの拍子や無理な姿勢でこの筋肉群を傷めたのではないか。
①太ももの付け根や腰などの痛みをとる。
②硬直した筋肉を弛緩させる。
③血行を改善し、損傷した筋膜などの組織の修復を促進する。
・治療結果:
1回の治療で、腰、太ももの付け根の痛みは半減、お腹の痛みもほとんど感じなくなりました。3回の治療が終わってから気になる痛みはほとんど感じません。治療効果を維持するために4回目の治療を受け、完治しました。
腕の痛みとしびれ
40歳代の女性。
大手会社の事務を担当し、非常に有能な方です。ご本人は仕事が大好きですので、毎日一生懸命に頑張っています。半年前から時々腕と手のしびれを感じるようになったが、それほどひどくなかったので、あまり気にしませんでした。しかし、1ヶ月経ったある日の朝、起きたとたんに首が痛くて動けなくなり、右の首、肩、腕から手の指まで強い痛みと痺れがありました。寝違えかなと彼女は無理に出勤しました。我慢しながら一日の仕事を終え、夕方整体院でマッサージしてもらいました。首のほうは少し動けるようになりましたが、肩、腕と手の痛み、痺れはいっこうによくなりませんでした。同僚のご紹介で当治療院に来られました。
・治療方針:
頸肩腕症候群の疑いがある。
①首・肩・背中の筋緊張をほぐす。
②首から肩・背中の血流を改善する。
③自律神経のバランスを良くし、交感神経の緊張を和らげる。
・治療結果:
1回目の治療が終わった時点で、「非常に気持ちがいい、久しぶりに気分が落ち着いた」と患者さんがおっしゃいました。「痛みとしびれがどうですか?」と聞いたら、「痛みはほとんどない。手の指に痺れがまだ少し残っている」との答え。
3回の治療で今までのつらい症状はすべてなくなりました。ただし、会社で朝から晩までパソコンに向かって手を使う仕事ですから、またいつか同様な症状が出てくる可能性があるため、今は1ヶ月に1度の予防と健康増進の治療を受けていて、現在に至ります。今のところ、再発はありません。
糖尿病境界型
60代後半、女性。
Aさんは自治体の年に一度の健康診断で、
・空腹時血糖値:129mg/dL
・HbA1c:6.7%
だとわかり、3ヶ月後に再度血液検査をすることとなりました。この間、白ご飯の量を半減し、月に数回楽しんでいた和菓子やケーキもやめるなどの糖質制限をしましたが、3ヶ月後の再検査の結果は、
・空腹時血糖値:120mg/dL
・HbA1c:6.9%
となり、糖尿病予備軍と言われ、薬の服用も勧められました。かなりの痩せ型で、ご飯の量も普通、外食もほとんどなく、野菜のおかずやサラダなどバランスよく作って毎日食べているのに、まさかご自分が糖尿病になるかもしれないとは思いもよらず、またこの3ヶ月の糖質制限は精神的につらくて、ストレスがかなり溜まってしまいました。糖尿病の薬も服用したくないとのことで、定期的に当治療院に通院しているご主人のご紹介で治療を開始されました。
・治療方針:
①膵臓機能を改善し、インスリン分泌を促進する。
②インスリンの効きを良くする。
③新陳代謝と血中グルコースの取り込みを促進する。
④肝機能の一つ、血中グルコースからグリコーゲンに変換させる機能を促進する。
⑤血管内膜における炎症反応を抑え、動脈硬化の進行を防ぐ。
⑥筋組織にあるインスリンレセプターを活性化する。
⑦血流を良くし、血液の粘度を減らし、動脈内膜のプラーク形成を抑制する。
・治療結果:
まず2週間に1回の治療を3ヶ月間続けました、この間は白ご飯の量を元に戻し、月に2回だけケーキを食べることにしました。再度の血液検査の結果、
・空腹時血糖値:106mg/dL
・HbA1c:6.0%
となり、Aさんはほっとしたそうです。その後は楽しみにしていたケーキや和菓子の頻度をストレスの溜まらない程度に増やし、代わりに甘いものを食べる日の夕飯のご飯の量を少し減らすことにしました。6ヶ月後の血液検査の結果は、
・空腹時血糖値:101mg/dL
・HbA1c:5.8%
でした。ご年齢から考えて、次の検査は年に一度で大丈夫だと言われました。Aさんにとって、この検査結果はとても励みになり、最近筋肉量を増やすためのストレッチも始めたそうです。
過活動膀胱・頻尿
・以下の2つの症例は2018年10月18日の「鍼灸師ブログ」に紹介されたものです:
頻尿と言えば、「急にトイレに行きたくなる」、「トイレの回数が多い」、「夜中も何回もトイレに行きたくなって、安眠できない」などの症状を指します。
最近メディアでよく見かける「過活動膀胱」も、一つの症状にはこの頻尿があります。過活動膀胱以外に、治療院で症状を訴えた患者さんの中には、以下の病気が原因だと見られるケースがよくあります。例えば、多いのは腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、前立腺肥大症、糖尿病です。また手術後(腰部椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の手術、或いは直腸がん・子宮がんの手術)の後遺症、膀胱がんもありました。この中には心因性のものも一部併発していると思われます。
病名がよくわかっていれば、まずその病気に対処できればおのずと症状も消えます。しかし、検査で原因がよくわからないものに加え、心因性頻尿、年齢的な衰えが実際に圧倒的に多いのです。例えば、前記の過活動膀胱は脳血管障害など脳・脊髄神経の障害に起因する神経因性もあれば、加齢や骨盤底筋の衰えからくる非神経因性もあります。
東洋医学では、頻尿は「小便不禁」と言います。用語ではわかりづらいですが、以下の原因が考えられます:
①脾肺気虚:急に尿意を感じ、時々もれてしまうこともあります。また咳、大笑いなどでもれてしまうこともあります。
②腎気不固:頻尿、疲れやすく、冷え症、足に力は入らず、腰や膝がだるい。
③下焦お滞:頻尿、下腹が張りやすい、時々痛みを感じる。
④湿熱下注:頻尿、排尿時熱感があり、尿の色が濃い。
うちの治療院では、東洋医学の診断と合せて、もし既に病院の検査で病名がわかっていればそれも考慮に入れ、総合的に治療方針を決めます。
<症例①>:
40代の女性患者Aさん。変形性膝関節症で以前数回鍼灸治療を受けたことがありました。ある日一泊の出張先からお電話を頂きまして、仕事を終え夕方ホテルに戻ってから急に一時間4、5回ぐらいお手洗いに行くようになったそうです。膀胱炎の症状についてまず伺いました。今まで何回か膀胱炎になったことがありますが、下腹の違和感、痛みなどは一切なく、尿の色も正常、膀胱炎ではなさそうだと、ご本人がおっしゃいます。次の日朝一で東京に戻りますが、病院での検査を渋り、それよりまず鍼灸治療を受けたいとのことでした。頻尿に対する鍼灸治療は即効性を含め良い効果があり、また治療しても効果がない場合、もっと深刻な病因が潜んでいるという原因の切り分けにもなるため(その場合、病院での受診を薦めるつもりです)、翌日の予約を取らせていただきました。
翌日Aさんは時間通りにいらっしゃいました。治療院に入ったらお手洗いに直行し、その後10分ほど問診をしましたが、うちの治療時間が長いため、念のために治療前にもう一度お手洗いに行き、治療開始です。仰向けになってからまず45分間の治療を行いました。途中またお手洗いに行きたくなるかもしれないと心配しましたが、なんと治療を中断することなく、45分間難なく我慢できました。うつぶせの治療に入る前に、念のために一度お手洗いに行きましたが、うつぶせの45分間の治療も問題なくこなせ、治療時間を短縮することなく、普通に終えることができました。
1回目の治療後、もし症状が改善しなければ三日以内またお電話で予約してくださいとお話しました。二日後お電話をいただきましたが、予約ではなく、症状はなくなり落ち着いてきたというお話でした。以来半年が過ぎ、再発はありません。Aさんの症状から、出張の疲れや精神的なストレスからくる心因性のもので、一時的に膀胱活動が過敏状態になったと思われます。また、東洋医学的「脾肺気虚」も確認できたため、今後の予防も含めて総合的に治療方針を立てました。
<症例②>:
80代の女性患者さんSさん。昼間はお手洗いの回数は多いため(10回以上)、お水をあまり飲まないようにしているそうです。夜間も4-5回行くため、快眠できず昼間は眠い。以前骨粗しょう症で脊椎圧迫骨折、心筋梗塞になったことがあったため、今でも定期的に病院に通っていらっしゃいます。主治医に頻尿の悩みを相談したところ、持病との関連性は特定できないが、症状を緩和する薬を処方されました。しかし、薬は効かず状況は改善しないため、最近頻尿の薬だけを止めて鍼灸治療に初めてチャレンジされたそうです。
最初の3回の治療は、治療前、途中、治療後にそれぞれ一度お手洗いに行く必要がありました。しかし、その後、治療途中と治療後のお手洗いは行かなくても大丈夫になり、治療中は十分お体を休めることができました。また、おうちでもお手洗いに行く回数が減り、特に夜間は2回ほどになり、だいぶ睡眠が取れるようになりました。お水を飲むことの重要性を説明し、今は積極的にお水を飲むようになりました。また、アクティブに外出するようになり、運動量が増えたせいか、気分は明るくなり、便通もよくなりました(実は初診時に「便秘」も悩みの一つでしたので、便秘治療も合わせて一緒にやらせていただきました)。
Sさんのご年齢から考えると、加齢や骨盤底筋の衰えは当然あるかと思います。東洋医学的に「腎気不固」、「脾肺気虚」ですので、これに該当する治療や生活指導を行ったところ、大きな改善が見られました。
多剤耐性肺結核
<2019.6.2のブログに記載した症例を転載しております>
多剤耐性肺結核の新患患者数は日本において年間50人程度で、薬剤耐性を持っているため、治癒率は40-50%と低く、5年死亡率は25%にも上る難治性肺結核です。今日は当院で約一年半の鍼灸治療を受けた後この病気を克服した症例をご紹介いたします。
・患者さん:30代男性Aさん
・初診:2017年10月末
・初診時主訴:実はAさん、鍼灸は呼吸器疾患を治療できるとは知らなかったため、肺結核の治療ではなく、当時服薬している肺結核治療薬による副作用を少しでも緩和できたらと思い、来院されました。Aさんの主訴は以下の通りです。
①吐き気、食事は取れない、体力はなくなった。
②不眠
③うつ状態
④家で寝たきりになっているため、首、肩、背中が痛い。
・初診時の服薬:肺結核治療薬(4種)、睡眠薬(3種)、胃薬
・現病歴:子供の頃肺結核にかかったことがあった。2017年会社の健康診断で肺のX線画像に影があると言われ、精密検査した結果肺結核の再発だとわかった。すぐに二ヶ月近く入院し投薬による治療を続けたものの、レントゲン検査による影の変化はなく、薬剤耐性を持つ多剤耐性肺結核との最終診断が出された。これ以上入院してもよくなる可能性は見込めなかった。幸い、最初から排菌は認められないため、退院したのち通院による薬剤治療に方針が切り替えられた。それからご自宅での静養となった。しかし、結核は治らなければ仕事再開の目処は立たなかった。治療薬の副作用が非常に苦痛になり、寝たきり状態から背中も痛い。その中で、たまたま近所にあった当治療院にご来院されました。
・鍼灸治療と結果:Aさんの主訴に対する治療(対症療法)と同時に肺結核治療(根治療法)も一緒に行いました。結核菌に対抗できるための免疫力をつけていくため、鍼治療と灸治療のどちらも非常に大事な治療法として、毎回の治療において半々ぐらいの比率で慎重に行いました。薬の副作用による不調は軽くなっていく中、鍼灸治療開始後一ヶ月半の病院での検査で思わぬ結果が出ました。なんと、今までずっと変化なしのレントゲン検査で、病巣としての影が小さくなったのです。鍼灸で結核の治療ができると思っていなかったAさんは驚かれ、生活に唯一の変化と言えば鍼灸治療を始めただけでしたので、良くなった理由は鍼灸にしかないと、この時Aさんは確信したそうです。このように当院での治療はほぼ週に一度のペースで(旅行や帰省などで二週間に一度治療をすることもありましたが)、病院で検査するたび状態が良くなっていったそうです。つい先月(2019.5)の検査で「治癒」との診断が下り、投薬はこれで全て終了となりました。なお、お仕事の再開は当治療院に通いはじめてから八ヶ月が経過したときで、仕事復帰しても問題ないと病院でも言われたため、後半は仕事をしながらの鍼灸治療でした。
東洋医学では、肺結核は「肺癆」の範疇です。発病当初は「肺陰虚」という状態になります。この段階で適切な治療をしないと、脾、肺および気、陰の両方が損なわれます。病気の後期になると、肺、脾、腎の三臓が共に「虚」となり、陰気と陽気が共に損害されます。Aさんの治療においては、肺の経絡上の主要穴(重要なツボ)を選ぶと同時に、脾および腎の経絡上のツボを有意義に選択し、「陰陽両虚」の状態を改善し、免疫力を正常なレベルまでに持っていく治療計画を立てました。
現在のAさんは普通にお仕事をこなしながら、しばらく二週間に一度の鍼灸を続けていらっしゃいます。今後は再発予防・健康維持・健康増進に治療方針を切り替えます。患者さんとの二人三脚で治療成果が得られ、Aさんが普通の生活を取り戻すことに少し役立てたことを心から嬉しく思います。
肺MAC症(肺非結核性抗酸菌症)
<2020.8.9のブログに記載した症例を転載しております>
最近のコロナ禍の中、副作用のない鍼灸治療によって如何に免疫力を上げ、コロナウィルスなどによる感染症にかからないか、或いはかかったとしても重症化を防げるかの話をしてきました。今日は別の、免疫力の低下による呼吸器系の病気 ― 肺MAC症に対する鍼灸治療の実際の症例を取り上げます。
肺MAC症は主に免疫力が低下した時にかかる呼吸器系の病気です。症状としては、長期に渡る咳(せき)と痰(たん、時には血液が混じることもあります)で、発熱、倦怠感、呼吸困難などです。肺MAC症は「肺非結核性抗酸菌症」ともいい、この病気の8割を示す原因菌であるMAC菌というのは病名の通り、結核菌ではない抗酸菌に一種で、人→人への感染はありません。
MAC菌は土、水など我々が住む環境に広く分布する弱い菌で、園芸の土、水道水などにも存在します。つまり、すべての人が日常的にMAC菌に接触しておりますが、一部の方だけが発症してしまいます。発症原因はまだわからない部分が多いですが、慢性肺疾患の持病のある方や免疫力の低下が指摘されております。治療法はまだ確立されておらず、通常3-4種類の抗菌薬を2-3年間も飲み続ける必要がありますが、再発・再感染も含め、完治することは難しく、病院で「一生治らない」と言われる方も多いかと思います。薬の副作用で治療を中断せざるをえないこともあり、この病気による死亡者数は年間1300人以上(日本)です。患者さんの中で急速に病状が悪化する方もいれば、自覚症状が最初から軽くて経過観察のみで数十年も状態を維持できている方もいて、様々です。
さて、以下にうちの患者さんの治療症例をご紹介いたします。
患者さん:
60代女性Aさん、専業主婦、やせ型。
初診時主訴:
2019年5月に風邪を引き、38℃前後の熱と激しい咳(血痰もあり)が2週間ぐらい続きました。普通の風邪ではないかもしれないと思い、風邪薬をもらっていた地元のクリニックに紹介してもらい、総合病院呼吸器科を受診しました。肺のCT検査と喀痰培養検査を受け、右肺に空洞(肺に穴が開き、たくさんあると呼吸困難になる)を確認でき、最終的には肺MAC症と診断されました。すぐに多剤抗菌剤による治療を始め、約5か月間の薬物治療を経て、自覚症状は改善されました。それから1-2年薬を飲み続ける必要があると言われましたが、薬の副作用のほうが目立ち始め、皮膚に出る皮疹のかゆみ、視力低下、白血球減少が起こり、血痰が再び出るようになったため、主治医の先生に相談したのですが、薬の減量や中断すると再び悪化する可能性があり、最悪肺の一部を手術で切除しなければならないと言われたそうです。困ったところで、ご知人の紹介で2019年11月末からうちで鍼灸治療を受けることとなりました。
当院治療方針:
①免疫力向上、自覚症状の改善
②薬による副作用の軽減
③精神状態を楽にし、自律神経のバランスなどからだ全体のバランスを整える。また食欲、体重、体力を回復させる。
治療結果:
一か月半の治療を経て、胃腸の調子がよくなり、食欲も増してきました。この頃から血痰は無くなり、咳の頻度も減りました。四か月後、体重が1.5キロ増え、咳はほとんど出なくなりました。精神状態がよくなり、体力と気力も病気する前の状態まで回復してきました。CT検査で肺の空洞はかなり縮小したと言われました。白血球の数が正常範囲に戻り、その他の薬による副作用も緩和できたそうです。元々薬を止めたいというAさんのご意向もあり、現在薬をやめ、定期的に病院でレントゲン検査、CT検査と血液検査のみをしてもらっているそうです。
当院の治療方針に沿った結果が出せて、ほっとしております。治療薬に関しては、鍼灸師の立場上、患者さんに進言することは一切できませんので、あくまでも患者さんのご意向、そして処方する病院の先生の判断になりますが、このような慢性的な疾患で、特効薬もない難しい治療に関しては、肺や気管支を侵す細菌の増殖を抑え、患者さんご自身の免疫力を上げるのは一番の治療だと言える中、鍼灸治療の力を借りるのも一つ賢い選択肢です。
肺MAC症は完治が難しいと言われますが、まずご自身の免疫力を上げて、そして高い免疫力の状態を維持できていれば、完治は夢ではないと思います。うまくこの病気と共存しつつ、そしていつかは打ち勝つつもりで、良い心理状態、前向きの気持ちがとても大事です。Aさんは今も2週間に一度鍼灸治療を続けておられますが、ご本人は既になんの自覚症状もなく、普通の生活に戻っておられますので、検査結果次第で治療を終了する日もそう遠くないと思います。
<2023.5.16のブログに記載した症例を転載しております>
肺MAC症は結核菌と同じグループに属するMAC菌による慢性的な呼吸器感染症です。肺結核と違い、人から人への感染はありませんので、非結核性抗酸菌症の一つです。しかし、肺結核には今良い治療薬があり、半年間服薬すれば完治できますが、肺MAC症には特効薬と言われる抗菌薬はないため、抗菌薬治療が非常に難しく、治癒できる薬は現段階ではありません。もし症状が既にあって、画像上も進行が速い場合、抗結核薬を含めた3つの飲み薬を基本として治療を開始することが多いです。服薬期間は少なくても1-3年間を続ける必要があり、抗菌薬を長期間服用するにあたり、強い副作用が懸念されます。よく出る薬の副作用は発疹、肝機能障害、発熱、汎血球減少、様々な消化器症状、視力障害、聴覚障害です。
肺MAC症は繊維空洞型と結節・気管支拡張型があり、日本ではおよそ8割は結節・気管支拡張型です。症状は咳と痰が最も頻度が高い症状で、血痰、発熱、呼吸困難、倦怠感、体重減少などがあります。
今日ご紹介する症例は結節型で末梢肺の結節が鍼灸治療のみでほぼ消失した症例です。
患者様:Sさん、60代女性、会社員
初診時主訴:
Sさんは2021年6月の健康診断で肺に陰影があると言われ、その後喀痰培養検査、CT検査を経て、肺MAC症と診断されました。左肺に大小違う二つの結節像が確認され、自覚症状には、咳、痰(黄色、粘り気ある)、食欲不振、体重減少、不眠(診断後、病気と今後の仕事のあり方に対する不安から)があります。また、緑内障の治療中で、2種類の点眼薬が処方されています。
病院では、抗菌薬による投薬治療を提案されましたが、Sさんは薬の副作用(緑内障の治療中なので、視力障害を特に気になられました)が気になり、すぐの服薬を見送り、その間薬以外のアプローチを探していた結果、当治療院の鍼灸治療にかけてみることにしたそうです。
治療経過及び結果:
東洋医学の診断では、Sさんは典型的な「肺腎陰虚」、合わせて軽度な「脾気虚」が伴います。診断されてから不眠、肩こりの症状が出てきたその裏には、「肝気郁結」が隠れており、「肺」のみならず、「腎」、「肝」、「心」、「脾」を含めた全身治療が必要です。
2021年9月から治療を開始し(2週間に1回のペース)、同年12月の定期検査では、MAC菌を検出できず、レントゲン画像上も改善が見られ始め、この頃から眠れるようになり、咳はほぼ出ず、痰の頻度も減りました。食欲はまだそれほどありませんが、病気に打ち勝つため、三食をちゃんと食べるように、ご自分に言い聞かせながら食事を摂っておられました。肩こりはなくなり、仕事が相変わらずお忙しかったですが、その中で体調が少しずつ上向いてきました。2022年12月のCT検査では、左肺にあった二つの結節像は無くなり、主治医からは「不思議ですね、これはめったにないことです」と言われたそうです。
Sさんは今も体調維持のために、鍼灸治療を続けておられます。特別なご事情以外、必ず予定通りに治療をコツコツと続けてこられたSさんの努力は実を結んだ結果です。
気管支拡張症
<2020.9.18のブログに記載した症例を転載しております>
気管支は鼻から吸った空気を肺に運ぶ枝状の通路で、何らかの原因で慢性的な炎症や感染を繰り返していると、気管支が膨らみ、気管支拡張症になります。気管支拡張症になると、気管支が壊れ、そこに細菌やカビが溜まり増殖し、炎症を起こすことにより、咳、血痰、吐血(時には大量の吐血が出る)、肺炎などの症状が見られます。肺炎を引き起こすため、肺の破壊も進み、肺の機能が徐々に落ちいきます。また、他の呼吸器系の病気にもなりやすいです。例えば、肺MAC症や新型コロナウィルス性肺炎、インフルエンザ肺炎などです。
この病気は進行性ですので、治療が必要です。通常マクロライド系の抗菌薬、痰を出す薬、感染を抑える抗生物質を投与します。喀血が目立つ場合、止血剤また血管に管を入れ血を止める薬剤を直接注入します。これでも改善しない場合、拡張した気管支を含む肺を切除します。
では、うちの患者さんの症例をご紹介いたします。
患者さん:
Bさん、60代男性。
初診時主訴:
喫煙歴は20代から。40代から咳をするようになり、黄色の痰を伴います。58歳の時に、一度高熱が出て、激しい咳と大量の血痰が出ました。すぐに呼吸器内科を受診し、気管支拡張症、気管支炎、肺炎と診断され、2週間入院しました。退院後も、抗生剤などを服用し続け、それで発病当時の症状はかなり最善し、これを機に、たばこをやめました。しかし、やはり咳と痰の量が多く、特に秋・冬になると、痰の色が黄色く、時々血痰も出ます。処方された薬は真面目に飲んでいますが、これ以上よくならないため、ご友人の紹介で当院にいらっしゃいました。
治療方針:
①免疫力を高める。
②過敏状態の気管支の状態を改善する。
③呼吸器全般の機能改善。
④糖尿病予備軍だと病院で言われたため、血糖値を下げ、代謝を調節する。
⑤現在服用している薬の副作用による不快症状を改善する。
結果:
週に1回の治療を一か月間続けて、咳と痰の量が減り、血痰は出なくなりました。呼吸は楽になり、月に3回の治療に切り替わり、更に2か月過ぎたところで、たまに咳をする程度で、体調はかなりよくなってきました。呼吸を楽にし、呼吸器系の機能を向上するストレッチも指導し、月に2回の治療になって今2年経ちました。この2年間、風邪も肺炎もなったことはなく、懸念の一つだった糖尿病にもなることなく、血糖値はご年齢から考えると、ほぼ正常に戻ってきました。
急性アレルギー性皮膚炎
<2018.10.16のブログに記載した症例を転載しております>
最近、治療側としても患者さんの早い回復ぶりに関心した症例を一つ紹介させていただきます。
患者さん:Aさん、30代後半の女性、未婚、会社員
主訴:初診は三ヶ月前で、主な主訴は以下の通りです:
①生理は45-50日周期の時が多くて、時々二ヶ月以上の場合もあって、更年期にしては早すぎるのではないか。
②お腹がゆるいほうで、一回下痢が始まれば一週間以上続く(初診時も下痢している)。
③子供のときから喘息持ち、今もほぼ毎日小さい発作がおきるため、毎日ステロイドの吸入薬を使っている。
④左側の股関節あたりと膝が時々痛み、歩くのはつらいため、あまりにも痛むときは会社を休まざるをえない。
⑤気持ちの浮き沈みは大きくて、落ち込むことが多い。
⑥背中のコリもあって、からだ全体が疲れていて、顔色は優れない。
治療の経過及び結果:二回治療して早速効果が現れたのは下痢、股関節と膝の痛み、そして喘息の発作頻度でした。まず下痢は止まり、関節の痛みはなくなり、歩くのは怖くなくなり、足のむくみも以前ほど気にならなくなりました。そして、喘息の発作頻度は半分以下に下がり、三回目の治療にいらっしゃったときは、毎日ではなく発作が起きそうなときにだけ吸入薬を使用。
しかし、この三回目の治療にいらっしゃったときに思わぬことが起きてしまいました。
Aさんは待合室に入った瞬間思わずびっくりしてしまいました。彼女は大きなマスクをかけておられましたが、しかい顔の異変を隠すことはもはやできないぐらい、顔全体が赤く腫れ上がり、所々ただれていました。「どうしました?」と聞いたところ、少し風邪気味で、仕事を休まないため、本格的な風邪になる前に予防しようと思い市販の風邪薬を飲んだら、顔がパンパンに赤く腫れたので、皮膚科に行ったら、原因はやはり風邪薬の副作用だと言われたそうです。しかし、災難は続きます。今度は食品アレルギーと思われる症状で再び肌が荒れてしまい、両腕と胸の皮膚もただれ、再度皮膚科に行き、アレルギーの原因食品を血液検査し、塗り薬をもらい、三回目の治療日を迎えたそうです。
Aさんは横になり診察を始めたら、確かに、顔以外に両腕と両手の全体、そして胸の皮膚はひどい状態にあって、範囲は広い上、赤くただれた場所はあちらこちらあり、ただかゆみも痛みもないのは唯一の救いでした。
三回目の治療の重点はこの皮膚状態の改善にシフトさせていただきました。そして4回目の治療は一週間後に来ていただくことでAさんのご了解を頂きました。ここからはびっくりの連続でした。一週間後はまず顔の状態は普通に戻り、両腕と両手そして胸の皮膚も回復してきました。赤みは引き、ただれたところはかさぶたとなり、明らかに回復に転じ始めました。一週間前の皮膚の状態は悪さの程度を10で表すなら、今は5まで回復したように見えました。あまりにも良くなったので、皮膚科の先生にも驚かされたそうです。そして、一週間後に五回目の治療時は、もうほぼ回復しました(数字で表すと1と2の間ぐらいです)。
あまりにも回復が早いですので、私もAさんの自己治癒力に関心しました、すごいです。
その後、お仕事のご都合で不定期ですが、大体7-14日の間に一度治療にいらっしゃい、今三ヶ月経ちましたが、生理周期はほぼ30日になりました。喘息のほうですが、最近の一ヶ月は全く発作はなく、吸入薬も使っていないそうです。
そして、Aさんご本人は今一番喜んでいるのは、気分の浮き沈みは楽になり、問題や不愉快なことに遭ってもすぐに気持ちを前向きに切り替えられるようになり、真冬なのにお肌はつやつやで顔色も綺麗になったという点です。
頚椎症
<2020.11.1のブログに記載した症例を転載しております>
先日鍼灸で頚椎症を治療できるかという問い合わせのお電話がありました。そこでやっと気づいたのですが、このホームページの「症例紹介」に「頚椎症」のことを書いていませんでした。結論から先に申し上げますと、頚椎症の鍼灸治療は日常的によく行われており、うちの治療院で治療を受けた患者様は全員数回の治療で大きく改善が見られ、ほとんどの方は治癒に至ります。治療院が始まってから28年間、日常的に頚椎症の患者様を受け入れており、数多くの症例があります。また長年定期的に病気予防のために通われている方に対して、毎回頚椎症予防の鍼もしており、こちらの方々においては新たな頚椎症の発症はまずありません。
つい最近の症例をご紹介させていただきます。
頚椎症は頚椎の変形、椎間板の脱出(ヘルニア)、頚椎間関節&靭帯などの組織退行性変性により、頚椎部の脊柱管を通る脊髄、そこから出る神経根、椎骨動脈、頚部の交感神経が圧迫などの悪影響を受け、さまざまな症状が出ます。年齢を重ねることでなりやすく、40代以降段々患者数が増えてきます。また最近携帯電話の普及により、若者の頚椎症症状も見受けられます。代表的な症状は、頚部、肩、腕、手指の痛み、しびれ、めまい、吐き気、頭痛。大半は進行性ですので、重症化すると、足先がしびれ、うまく歩けなくなったり、手指の巧緻運動(細かく字を書く、ボタンをかける、お箸でおかずを取るなど)ができなくなります。生活の質が落ち、進行してしまう可能性が十分あり得ますので、早めの治療が必要です。
整形外科での診断はレントゲン検査、MRI、CTスキャンを利用します。頚椎は7個の椎骨からできており、上から5番と6番の間が一番トラベルが起こりやすい場所です。その次は6番と7番、さらに4番と5番の間です。整形外科での治療は保存療法が最初の選択肢です。例えば、鎮痛剤、筋弛緩剤、ビタミンBなどの飲み薬、頚椎牽引、頚部カラー固定、頚部周辺マッサージなどの理学療法です。保存療法で効果が薄く進行してしまう場合、手術を選択することもあります。
鍼灸治療において、頚椎症は「項強」、「頚筋急」、「頚肩痛」に分類できます。考えられる病因は:
①老衰による肝腎不足、筋骨失養
②外傷、長時間座る、下を向くなどにより、正気を消耗し、筋骨を損傷する。
③頚肩部が冷たい寒気、湿気などに曝され、気血鬱滞、経脈痺阻を起こしてしまう。
患者様:50代男性、会社員
初診時主訴:コロナ渦で最近週に4回自宅で仕事をするようになり、二ヶ月前から左の腕が重だるく、しびれるようになった。同時期から、夕方になると、胸が軽く締め付けられるような感覚があり、夜度々入眠困難になった。そうなると、朝起きても頭が重くて、昼間頭痛とめまいも起こるようになった。すぐ近所の総合病院で24時間心電図、心臓CT、脳MRI、血液検査などの精密検査をしてもらったが、脳にも心臓にも何の異常も見つからなかった。次に同じ病院の整形外科で首のレントゲン、MRI検査をしたが、頚椎のごく軽いヘルニア(それにより、椎骨間の間隔が少し狭くなる)があるという診断が出て、ビタミンB剤が処方された。また頚椎牽引も提案されたが、患者さんご本人が牽引治療をやりたくなく、鍼灸治療を試してみたいとのことで、ご来院されました。
診断:東洋医学的に、主に「労傷血瘀」という診断になります。また、精神的なストレスと長時間座ることからおこる「心脾両虚」の病態の治療も同時に行わなければなりません。
最近自宅勤務が増え、また秋に入り、気温も下がったことから、こういった首・肩周辺のトラブル、腰痛などの訴えが確実に増えてきたと感じております。会社にある事務用の椅子と違い、床や畳の上に座ったり、或いは食卓の座椅子に長時間座り、下を向いてパソコンで作業するスタイルが増えてきました。また、家では通常靴下だけ(素足もしばしば)、スリッパだけを履いて仕事する方が多くて、気が付けば、男性でも足元からかなり冷えていることが多いです。こういう状況はやはり首・肩・腰・膝など、整形外科系の病気を引き起こしやすくなります。
治療結果:2回の治療を終え、左腕のしびれと重だるさは7割取れました。頭痛とめまいのほうは完全に無くなり、夜の睡眠と夕方の胸の締め付け感もかなり改善されました。3回目の治療が終わり、上記の症状は全部取れました。
自己免疫性肝炎
<2020.12.11のブログに記載した症例を転載しております>
最近の症例を一つご報告させていただきます。自己免疫性疾患の症例です。
今年4月19日に書かせていただきましたブログ(「“重症化しない”がキーワード ― withコロナ時代に生きる」)において述べたように、鍼灸治療は新型コロナウィルスによる重症化を防ぐ仕組みには、免疫細胞の暴走(炎症性サイトカインストーム)を止め、体内に備わっているTreg細胞を増やし活性化することが考えられます。これと同じことで、免疫細胞の誤作動や暴走による自己免疫性疾患である「自己免疫性肝炎」及び「原発性胆汁性胆管炎」(両方は難病指定です)に対しても、とても良い治療効果があります。最近の一つの症例をお示しします。
患者様:40代女性
初診時主訴:初診は2020年11月初旬です。
30代に自己免疫性肝炎&原発性胆汁性胆管炎だと診断され、以来ステロイドの飲み薬(免疫抑制剤)を10年間飲み続けております。しかし、3ヶ月前突然にALT値が上昇してしまい、ステロイドの服用量をすぐに2倍に増やしましたが、2ヶ月間が過ぎても効果は見られず、ALT高値が続いておりました。そこで、ステロイド以外の治療法も試してみたいと思うようになり、当院にご来院されました。
2020年10月9日の検査値(初診時にお持ち頂いた近々の検査データ):
AST:39
ALT:68
γ-GTP:202
LAP:110
検査値の意義:
上記4つの検査値は共に肝臓・胆道系の疾患がある時に増えてしまうものです。中で特にALTが肝細胞の障害程度を調べるのに最も適しております。これはASTが肝臓以外の組織にも存在するのに比べ、ALTは主に肝臓に存在しているからです。ALTだけが急に上がった時は、まず肝細胞の破壊が更に進み、肝機能が何らかの原因で下がっていることを疑います。
鍼灸治療の目標:
①五臓六腑の「肝」・「胆」だけでなく、全身調節が必要だと考えます。
東洋医学では、五臓六腑(内臓)は単体の存在ではなく、常に互いに影響し合いながら、一つの有機的な統合体として機能し、生命活動を支えていると考えております。この症例では、「肝」・「胆」以外に主に考慮しないといけない臓腑は「脾(胃)」、「腎」、「心」です。
②免疫系のバランスを正常に戻し、免疫細胞の暴走による、自らの肝・胆組織への攻撃を止めます。
③長年服用しているステロイドの副作用を緩和します。例えば、免疫力低下、糖尿病、脂質異常、骨粗鬆症などの可能性です。
④自律神経のバランスを整え、免疫系と内分泌系への良い相乗効果を狙います。
治療結果:
11月初旬から、11月末迄に計4回の治療(週に1回)を行い、11月27日の検査値は以下の通りです。
2020年11月27日の検査値:
AST:31(正常範囲に戻り、先月より8単位が下がりました)
ALT:49(先月より19単位も下がりました)
γ-GTP:170(先月より32単位が下がりました)
LAP:103(先月より7単位が下がりました)
各検査項目に改善が見られ、一番心配していたALT値は68単位から49単位までに下がり、後少しで正常範囲に入ります。治療は今も継続中で、もうしばらく一緒に頑張ります!
原発性胆汁性胆管炎
<2020.12.11のブログに記載した症例を転載しております>
最近の症例を一つご報告させていただきます。自己免疫性疾患の症例です。
今年4月19日に書かせていただきましたブログ(「“重症化しない”がキーワード ― withコロナ時代に生きる」)において述べたように、鍼灸治療は新型コロナウィルスによる重症化を防ぐ仕組みには、免疫細胞の暴走(炎症性サイトカインストーム)を止め、体内に備わっているTreg細胞を増やし活性化することが考えられます。これと同じことで、免疫細胞の誤作動や暴走による自己免疫性疾患である「自己免疫性肝炎」及び「原発性胆汁性胆管炎」(両方は難病指定です)に対しても、とても良い治療効果があります。最近の一つの症例をお示しします。
患者様:40代女性
初診時主訴:初診は2020年11月初旬です。
30代に自己免疫性肝炎&原発性胆汁性胆管炎だと診断され、以来ステロイドの飲み薬(免疫抑制剤)を10年間飲み続けております。しかし、3ヶ月前突然にALT値が上昇してしまい、ステロイドの服用量をすぐに2倍に増やしましたが、2ヶ月間が過ぎても効果は見られず、ALT高値が続いておりました。そこで、ステロイド以外の治療法も試してみたいと思うようになり、当院にご来院されました。
2020年10月9日の検査値(初診時にお持ち頂いた近々の検査データ):
AST:39
ALT:68
γ-GTP:202
LAP:110
検査値の意義:
上記4つの検査値は共に肝臓・胆道系の疾患がある時に増えてしまうものです。中で特にALTが肝細胞の障害程度を調べるのに最も適しております。これはASTが肝臓以外の組織にも存在するのに比べ、ALTは主に肝臓に存在しているからです。ALTだけが急に上がった時は、まず肝細胞の破壊が更に進み、肝機能が何らかの原因で下がっていることを疑います。
鍼灸治療の目標:
①五臓六腑の「肝」・「胆」だけでなく、全身調節が必要だと考えます。
東洋医学では、五臓六腑(内臓)は単体の存在ではなく、常に互いに影響し合いながら、一つの有機的な統合体として機能し、生命活動を支えていると考えております。この症例では、「肝」・「胆」以外に主に考慮しないといけない臓腑は「脾(胃)」、「腎」、「心」です。
②免疫系のバランスを正常に戻し、免疫細胞の暴走による、自らの肝・胆組織への攻撃を止めます。
③長年服用しているステロイドの副作用を緩和します。例えば、免疫力低下、糖尿病、脂質異常、骨粗鬆症などの可能性です。
④自律神経のバランスを整え、免疫系と内分泌系への良い相乗効果を狙います。
治療結果:
11月初旬から、11月末迄に計4回の治療(週に1回)を行い、11月27日の検査値は以下の通りです。
2020年11月27日の検査値:
AST:31(正常範囲に戻り、先月より8単位が下がりました)
ALT:49(先月より19単位も下がりました)
γ-GTP:170(先月より32単位が下がりました)
LAP:103(先月より7単位が下がりました)
各検査項目に改善が見られ、一番心配していたALT値は68単位から49単位までに下がり、後少しで正常範囲に入ります。治療は今も継続中で、もうしばらく一緒に頑張ります!