どうして鍼灸は効くの?(86)-糖尿病及びその予備軍
(6)境界型糖尿病の予防・治療
境界型糖尿病は糖尿病予備軍ともいい、まだ糖尿病として診断できませんが、このままでいくと糖尿病に移行するリスクが高いです。
境界型糖尿病を診断するおもな基準は経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)*18です。健康な方は食事の後血糖値が上昇しますが、2時間経つとほぼ正常値に戻ってきます。しかし糖代謝が異常な場合、OGTT2時間後の血糖値は140mg/dl以上、200mg/dl未満ですと、耐糖能異常だと診断されます。耐糖能異常の方は年月の経過とともに糖尿病に進行する可能性が普通の人に比べて大きいです。
境界型糖尿病のいやなところは、自覚症状はなく、静かに病状が進行することです。また、境界値であっても血管の病理変化は着実に進行することもあります。ただし、糖尿病になる前段階において生活習慣を変える上で鍼灸治療も受けるなら、健康状態に戻る可能性が十分にあります。
中国中医科学院鍼灸研究所は、30人の境界型糖尿病の外来患者に鍼治療を行い、治療効果を考察する報告があります。鍼治療は1日に1回、10回を1コースとし、5日を休んでから治療を再開し、全6コースを治療しました。その後、治療前後の空腹時血糖値(FBG)、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)値を比較しました。FBG(-x±s,mmol/L)は治療前の5.91±0.329から5.73±0.306に、OGTT(-x±s,mmol/L)は治療前の9.35±1.05から7.08±0.74に、HbA1c(-x±s,%)は治療前の6.94±0.48から5.74±0.35にそれぞれ下がりました(一部単位は日本と異なるため、データの変化傾向を見ていただければ幸いです)。
以上の結果から出した結論は、
①糖尿病前段階において、鍼治療は有効で持続性のある治療法です。
②鍼治療はインスリン抵抗性を改善する作用があると考え、筋などの末梢組織細胞のグルコースに対する利用率は高くなり、高血糖状態を改善します。
③鍼治療は正常血糖値を無意味に下げず、低血糖などの不良反応を起こさないため、より効果的で安全な治療法です。
さて、以前のブログでも触れましたが、Ⅱ型糖尿病予備軍及び糖尿病は典型的な生活習慣病です。まず本気で生活を改善する必要があります。場合によっては、鍼治療をしなくても生活習慣を改め、それを持続するだけで治る可能性があります。もう一度まとめますと:
①食生活の改善:炭水化物、甘いものは適量であれば問題ありませんが、過剰摂取をやめます。なるべく野菜、たんぱく質、炭水化物の順に食べます。
②運動を取り入れる:持続できる運動を1種類だけでもよく、筋肉量を増やし、維持します。夕食後に座らずすぐに体を動かします。例えば食器のお片付け、散歩、出かけられない場合は室内で太ももを高く上げての足踏み。
③睡眠の量と質の改善:6時間以上を確保、寝る前にお布団の中で深呼吸をします。
④ストレスの改善
⑤脂肪肝、高い尿酸値も糖尿病のリスクを上げるため、ならないようにします。
次回はもう一つの生活習慣病である悪性腫瘍(癌)を取り上げる予定です。最近若年人口の癌罹患率が上がっているのもあり、抗癌剤の費用は40兆円にもなる国民医療保険からの支払いに大きな比重を示し、引き続き真剣に対応しないといけない医療問題で、そして、癌は予防に限ります。
*18 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT):75gのブドウ糖(グルコース)を飲んで2時間後の血糖値を測るものです。健常者の場合、2時間後の血糖値は140mg/dl未満で、境界型(予備軍)の場合は140~199mg/dl、糖尿病と診断されるのは200mg/dl以上です。
やさいたちもすくすくと成長中
夏空ですね!
綺麗なアゲハ
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