どうして鍼灸は効くの?(85)-糖尿病及びその予備軍
(5)糖尿病による心筋梗塞・脳梗塞の予防・治療作用
糖尿病が血管を壊す病気です。そのために心筋梗塞・脳梗塞の発症リスクは高くなります。鍼灸は血管を保護する作用がありますので、心筋梗塞・脳梗塞の予防・治療に効果があるのは従来より知られております。それは、
①まず血糖値を下げる効果があり、元となる病気の糖尿病を根本治療する。
②血中脂質を下げる効果があり、脂質の血管壁への付着を改善する。
③血管を拡張して血栓による血管の閉塞を防ぐ。
④血小板の凝集を抑制し、血栓の形成を防ぐ。
⑤ヘモレオロジーの改善で、血液の流れをつねによい状態を保つ。
⑥活性酸素産生の減少、分解酵素の増加により、脂質の過酸化を改善する。
⑦炎症性反応の抑制により、免疫細胞の血管に対する破壊作用を予防できる。
と簡潔にまとめます。
前のブログで紹介した天津市中医病院鍼灸科の研究グループは、鍼灸の糖尿病による狭心症発作を予防する治療効果に関して、次のように発表しました。
例によって、このグループは120名の狭心症(虚血性心臓病)を合併する糖尿病患者を観察組と対照組に分けました。観察組にはこのグループが独自に研究して組み合わせたツボ群を使い、対照組には教科書に載せた標準治療ツボ群を使って、その違いを検討するのは一つの目的でした。結果としては、独自に考えたツボ群の効果は標準治療ツボ群よりよく、ここでは前者の研究データだけを紹介します。鍼治療前後に使った指標は以下の通りです:
①心臓発作の回数(回/週)、
②発作持続時間(min/回)、
③治療薬のニトログリセリンの服用量(mg/週)、
④心電図の変化、
⑤心エコー検査
①心臓発作の回数(回/週):治療前の26.46±12.23から8.38±3.17に減少しました。
②発作持続時間(min/回):9.97±4.69から2.85±1.19と短くなりました。
③治療薬のニトログリセリンの服用量(mg/週):発作時だけ服薬し、発作回数・持続時間の減少によって使う量も治療前の6.68±2.33から1.65±0.45までに減りました。
④心電図の変化:心電図の変化から鍼治療効果をみて、
〇「効果が顕著」(心電図ほぼ正常状態にもどる)は50%、
〇「効果がある」(ST波の低下、T波の陰転、心房・心室間の伝導や心室内伝導ブロックなど、ある程度の改善がみられる)は38.33%、
〇「無効」(心電図はまったく変わらない)は11.67%でした。
⑤心エコー検査:左心室拡張末期の内径(LVDD)、左心房拡張末期の内径(LADD)、左心室駆出率(LVEF)、僧帽弁(心室と心房間の弁膜)口の拡張早期血流速度(VE)、僧帽弁口拡張晩期血流速度(VA)とその比(VA/VE)を測定した結果(具体的な数値は省略)、LVDD、VA、VA/VEは明らかに低下し、VE、LVEFは明らかに上昇し、LADDは変化なしでした。鍼治療は左心室の充満状態や心筋収縮力を改善し、心室の血液駆出量が増えるため、冠状動脈の虚血状態も改善されます。
次回は境界型糖尿病の予防・治療です。
新緑の季節です。