どうして鍼灸は効くの(77)?
本日より筋肉の病気について考えます。
八、筋肉の病気
筋肉によく現れる症状について、まず考えられるのは①筋肉の痛み・痺れ、②筋肉の麻痺、③痛みや麻痺による筋肉の萎縮、などです。これらの症状を引き起こす原因疾患は様々です。
1、痛み
日常的に筋肉の痛みは時々発生しますが、中には心配しなくてもよい症状とちゃんと治療しなければならない病気があります。そして治りにくい難病もあります。
(1)手足の使いすぎ、例えば歩きすぎ、同じ動作を繰り返し、筋トレやストレッチのやりすぎ、普段しないポーズ・姿勢を頑張って取ってしまったりするなどです。こむら返りのような筋肉のひきつりの後、長時間寒いところや冷房の効きすぎる場所にいることによる筋肉痛の場合、休んだり、からだを温めたりすれば、自然に治ることは多いです。
(2)捻挫、打撲、骨折などの外傷に伴う筋肉の痛みは、適正な治療やリハビリで筋肉の症状も少しずつなくなります。
(3)頭部、胸・腹部などに痛みがありますが、見た目で外傷・皮膚の変化(たとえば疱疹など)は何もない場合、筋肉の部位に発生する神経痛の可能性が大きいです。例えば、坐骨神経痛、肋間神経痛、後頭神経痛などがあります。この場合、原因疾患を治療すれば痛みも改善されます。
(4)薬害による筋肉痛もあります。最もよくみられるのは脂質異常症などの治療薬による横紋筋融解症です。体を動かすための一般的な筋肉は横紋筋で、もしどんな治療をしてもよくならない筋肉の痛み(ふくらはぎ、背中など)があれば、薬の副作用を一度調べてもいいかもしれません。
(5)更年期症状として、筋肉の痛みを感じることがあります。痛みの度合いや頻度により、治療したほうが良い場合、鍼灸治療や西洋医学の薬物療法などの選択肢があります。
2、痺れと麻痺
痺れと麻痺は異なります。皮膚感覚としてびりびりと感じるのは痺れで、例えば長時間正座するとお尻と足がしびれてきますが、起きてしばらく動かせばすぐ直ります。また、頚椎症、脊柱管狭窄症のような末梢神経が圧迫されて手足がびりびりと感じる外科の病気もありますし、糖尿病による血管障害、全身性血管炎のような自己免疫疾患による痺れが発生する内科の疾患もあります。このような痺れは原因疾患を治療すれば改善されます。痺れがあっても皮膚感覚がありますし、手足を動かすこともできます。
麻痺となると、感覚はないか、手足を動かせない、あるいは感覚も運動能力も失います。麻痺を起こすのは脊髄・脳の中枢神経細胞の壊死・変性によるものが多いです。よく見られるのは脳梗塞・脳出血による片麻痺で、ほかには事故による脊髄・脳の損傷、ウイルス・化膿菌による脊髄・脳感染症にもみられる症状です。
3、筋萎縮
痛みや痺れによって手・足の筋肉は少しずつ痩せてきて(萎縮)、筋力が落ちることはよくあります。例えば、脊柱管狭窄症の患者の場合は、長く歩けば足の痺れと痛みが強くなるため、歩くのはおっくうになってしまいます。歩かなければ足の筋肉が弱くなり、特にすねの筋肉(前脛骨筋)が萎縮しやすく足を高く上げられません。道や家にあるちょっした段差につまづき転倒しやすくなり、転倒したら膝のおさらが割れて、手術をしても回復が悪く寝たきりになることもあります。ほかに筋萎縮が速やかに進行する難病(筋萎縮性側索硬化症、進行性筋ジストロフィー、多系統萎縮症など)があります。
次回は鍼灸による、筋肉の痛みに対する治療をみます。
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