鍼談灸話(12):鍼灸で美容?→見た目の若さは細胞の若さです。
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
先日ある患者さんから、”美容鍼はやらないのですか”と聞かれて、ふっと思ったのですが、長年定期的に病気予防・健康増進のために通われている患者さんはみんな見た目も若いということ。
美容鍼と言えば、顔に数十本の柔らかい鍼を刺鍼するイメージをすぐに思い浮かぶことでしょう。うちの治療院はこのような美容鍼をしたことはありません。しかし考えてみれば、30代から通い始め、今60代の患者さんは見た目少なくても10歳若く見えます。30年前から50代後半で通い始めた患者さんは、今は80代後半にはとても見えず、ー20歳ぐらい若く見えます。なぜ若く見えるのか、それは鍼灸治療を通して、血管、神経、内臓組織、もっと言えば細胞レベルで老化のスピードを緩めることができているからです。細胞の若さは見た目の若さになります。
鍼灸で美容と言えば、最初は顔を含める全身の皮膚に病変が起き、著しく美容に支障をきたした病気を治すためのものです。例えば、ニキビ、疣贅、アトピー性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、帯状疱疹、顔面神経麻痺、全身性エリテマトーデス、一部の悪性腫瘍などです。一方で、今でいう美容鍼はほとんどの場合、顔の見た目の若さに焦点を当てています。例えば、年齢と共に出てくるほうれい線、たるみ、しみ、しわ、くすみなどです。これらの”問題”には、顔に直接鍼をするのはもちろん即効効果があります。が、からだ全体を内側から若返らせる(=老化のスピードを緩める)ことが根本的な対処法です。
”からだ全体を内側から”と言えば、皮膚の状態を下支えする顔の筋肉、その筋肉に入り込んだ血管、神経、そして、明るく透明感のある顔色を決める各内臓の健康状態、イキイキとした雰囲気を醸し出す精神状態など、関連する範囲はまさにからだ全体です。顔はあくまでもからだの一部分です、からだそのものが病んでいれば、顔だけが輝かしい美しさと若さを保つのは難しいです。
以前、からだ全体の老化を引起す慢性炎症と鍼灸治療との関連性について、この「鍼談灸話」シリーズで書いたことがあります。慢性炎症が進んでいれば、顔も当然若々しさを通常より早いスピードで失っていきます。ご興味のある方は以下をご参照くださいませ。
①鍼談灸話(2):老化を引起す慢性炎症に対する鍼灸治療①–炎症性サイトカイン(2016年12月8日)
②鍼談灸話(4):老化を引起す慢性炎症に対する鍼灸治療②–微小循環(2017年6月2日)
③鍼談灸話(6):老化を引起す慢性炎症に対する鍼灸治療③–胸腺の退縮(2017年9月15日)
④鍼談灸話(9) :老化を引起す慢性炎症に対する鍼灸治療④–自律神経調整(2019年3月15日)
この中で内分泌系の話はしておりませんが、一番最近のシリーズ「どうして鍼灸は効くの?」第62回では、内分泌・自律神経・免疫系の関係について少しお話させていただいたように、見た目の若さに影響を与えるホルモン分泌に関しても、鍼灸はそのバランスを是正し、ホルモンの過不足に起因する症状を緩和できます。
うちの治療院では、眼科疾患、認知症の予防、目の疲れ、めまい、頭痛、難聴、不眠・不安・うつ症状、花粉症、顔面神経麻痺など具体的な症状はもちろん、困った症状はなくても、健康増進・病気予防の患者さん全員に対しても、顔面部を含む頭部の刺鍼を必要なツボだけ選んで施します。
各年齢層には、その歳なりの美しさがあります。実年齢より若く見られるのは、しみ、しわ、わるみという特徴因子よりもっと大事なのは、全体的に活気があるかどうか、イキイキとしているかどうかという点にあると思います。つまり、精神的要素がもっと重要で、その支えになっているのは肉体の健全さと十分な体力、気力です。
鍼灸治療は、
①経絡上の経穴(ツボ)を通して、体内の気・血・水液の循環を向かうべき方向に滞りなく推動します。
②内臓(五臓六腑)の機能改善を通して、その臓に内蔵する精気、情志、精神状態を調節します(これは東洋医学の考え方で少しわかりづらいですが)。
③新陳代謝を促すことにより、効率よく活動に必要なエネルギーを作り出し、不要になった毒素を体外に排出します。
④性ホルモン、甲状腺ホルモンなどを含む内分泌系の正常化を図ります。
⑤顔局所の刺鍼は皮膚の皮脂バランス、顔筋の弾力性も調節します。
これが鍼灸治療が”見た目”の若さに貢献している理由だと思います。もちろん、良い栄養、睡眠、適度な運動は老化スピードを緩める基本です。このブログは時々料理ブログに見えるのも、季節・体調に応じた料理から栄養を摂ることはご自宅でどなたにもできる立派な治療法だからです。
今月の富士山、やはり富士山を見るだけで気持ちは癒されます。
冬の葉っぱ絨毯です。