症例紹介:頚椎症の鍼灸治療
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
先日鍼灸で頚椎症を治療できるかという問い合わせのお電話がありました。そこでやっと気づいたのですが、このホームページの「症例紹介」に「頚椎症」のことを書いていませんでした。結論から先に申し上げますと、頚椎症の鍼灸治療は日常的によく行われており、うちの治療院で治療を受けた患者様は全員数回の治療で大きく改善が見られ、ほとんどの方は治癒に至ります。治療院が始まってから28年間、日常的に頚椎症の患者様を受け入れており、数多くの症例があります。また長年定期的に病気予防のために通われている方に対して、毎回頚椎症予防の鍼もしており、こちらの方々においては新たな頚椎症の発症はまずありません。
つい最近の症例をご紹介させていただきます。
頚椎症は頚椎の変形、椎間板の脱出(ヘルニア)、頚椎間関節&靭帯などの組織退行性変性により、頚椎部の脊柱管を通る脊髄、そこから出る神経根、椎骨動脈、頚部の交感神経が圧迫などの悪影響を受け、さまざまな症状が出ます。年齢を重ねることでなりやすく、40代以降段々患者数が増えてきます。また最近携帯電話の普及により、若者の頚椎症症状も見受けられます。代表的な症状は、頚部、肩、腕、手指の痛み、しびれ、めまい、吐き気、頭痛。大半は進行性ですので、重症化すると、足先がしびれ、うまく歩けなくなったり、手指の巧緻運動(細かく字を書く、ボタンをかける、お箸でおかずを取るなど)ができなくなります。生活の質が落ち、進行してしまう可能性が十分あり得ますので、早めの治療が必要です。
整形外科での診断はレントゲン検査、MRI、CTスキャンを利用します。頚椎は7個の椎骨からできており、上から5番と6番の間が一番トラベルが起こりやすい場所です。その次は6番と7番、さらに4番と5番の間です。整形外科での治療は保存療法が最初の選択肢です。例えば、鎮痛剤、筋弛緩剤、ビタミンBなどの飲み薬、頚椎牽引、頚部カラー固定、頚部周辺マッサージなどの理学療法です。保存療法で効果が薄く進行してしまう場合、手術を選択することもあります。
鍼灸治療において、頚椎症は「項強」、「頚筋急」、「頚肩痛」に分類できます。考えられる病因は:
①老衰による肝腎不足、筋骨失養
②外傷、長時間座る、下を向くなどにより、正気を消耗し、筋骨を損傷する。
③頚肩部が冷たい寒気、湿気などに曝され、気血鬱滞、経脈痺阻を起こしてしまう。
患者様:50代男性、会社員
初診時主訴:コロナ渦で最近週に4回自宅で仕事をするようになり、二ヶ月前から左の腕が重だるく、しびれるようになった。同時期から、夕方になると、胸が軽く締め付けられるような感覚があり、夜度々入眠困難になった。そうなると、朝起きても頭が重くて、昼間頭痛とめまいも起こるようになった。すぐ近所の総合病院で24時間心電図、心臓CT、脳MRI、血液検査などの精密検査をしてもらったが、脳にも心臓にも何の異常も見つからなかった。次に同じ病院の整形外科で首のレントゲン、MRI検査をしたが、頚椎のごく軽いヘルニア(それにより、椎骨間の間隔が少し狭くなる)があるという診断が出て、ビタミンB剤が処方された。また頚椎牽引も提案されたが、患者さんご本人が牽引治療をやりたくなく、鍼灸治療を試してみたいとのことで、ご来院されました。
診断:東洋医学的に、主に「労傷血瘀」という診断になります。また、精神的なストレスと長時間座ることからおこる「心脾両虚」の病態の治療も同時に行わなければなりません。
最近自宅勤務が増え、また秋に入り、気温も下がったことから、こういった首・肩周辺のトラブル、腰痛などの訴えが確実に増えてきたと感じております。会社にある事務用の椅子と違い、床や畳の上に座ったり、或いは食卓の座椅子に長時間座り、下を向いてパソコンで作業するスタイルが増えてきました。また、家では通常靴下だけ(素足もしばしば)、スリッパだけを履いて仕事する方が多くて、気が付けば、男性でも足元からかなり冷えていることが多いです。こういう状況はやはり首・肩・腰・膝など、整形外科系の病気を引き起こしやすくなります。
治療結果:2回の治療を終え、左腕のしびれと重だるさは7割取れました。頭痛とめまいのほうは完全に無くなり、夜の睡眠と夕方の胸の締め付け感もかなり改善されました。3回目の治療が終わり、上記の症状は全部取れました。
コロナ渦も何事もきっとそれなりの意味があります。過去・今・未来、静かに時を眺めるのも悪くはありません。