鍼談灸話(10):鍼灸の経絡とツボは6次元時空に存在する?
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
気が付けば、この「鍼談灸話」コーナーは昨年3月(2019.3.15、「鍼談灸話(9):老化を引起す慢性炎症に対する鍼灸治療④-自律神経調整」)以来書いていなくて、今日は久しぶりです。ここのところ、シリーズ「どうして鍼灸は効くの?」を続けてきております。このシリーズでは、西洋医学の見地から、動物実験データと臨床研究の論文に基づき、目に見えない経絡上のツボに鍼やお灸をして、どうしてそれで病気が治るのかについて、エビデンスを示してきました。以前のブログでも話したように、科学実験や献体等の解剖に基づく数百年の歴史を持つ西洋医学の実験手法により、五千年前から実際に人を治療してきた臨床経験の集積に自然哲学を融合させた理論体系から誕生した東洋医学を「検証」すること自体が、かなり無理のあるやり方ですが、どうしても既に西洋医学の学説に慣れた現代の人々を「納得させる」には必要ですので、必要ならやるしかないのです。「どうして鍼灸は効くの?」シリーズとは別に、この「「鍼談灸話」コーナーでは、どちらかというと、ざっくばらんに雑談的な、私の独り言の場所です(が、このコーナーにある「老化を引起す慢性炎症に対する鍼灸治療」の4回シリーズはちゃんとしたエビデンスも入れて書かせていただきました。ただ、私個人の考えがメインですので、「鍼談灸話」コーナーに入れさせていただきました)。
先日ある雑誌で偶然「高次元」の話を読ませていただきました。世界中の物理学者が「高次元」を探しているそうですが、なぜなかなかその正体を見いだせないかというと、「高次元」に存在するものは我々の目には見えないからです。これと同じように、私がしている鍼灸治療に使われる「経絡」、「ツボ」、「気の流れ」などの基礎理論もどれも「目に見えない存在で、現代科学の領域ではまだ確認できていない」ものばかりです。自然に、「経絡や気」は高次元の時空に存在するのではないかと誰もが思いつきます。いや、むしろこのように考えたほうが鍼灸の臨床論はようやく説明がつくような気がします。しかし、そもそも目に見えないものはエビデンスが取れず、信用できないのか?では逆に、目に見えるものはみんな真実なのか?(←それは違うと、ほとんどの方はそう思うでしょう)
なお、今日のブログに書かせていただく高次元に関する理論や仮設は各物理学者と数学学者が立てたもので、鍼灸の時空に関する話はあくまでも私個人の妄想だけで、妄想でも真剣に妄想しておりますので、懲りずにお付き合いくださいませ。
なぜ物理学者たちが「高次元空間」を一生懸命探しているのか?
それは、自然界の「四つの力」の統一に高次元空間が必要だからです。そして、この四つの力の統一こそが、物理学の悲願なのです。物理学の歴史は、統一の歴史でもあります。私の物理学の知識は非常に乏しいですので、詳しく説明できませんが、現在の自然界の力は、「重力」、「電磁気力」、「強い力」、「弱い力」の四つに集約されます。この四つの力を統一することこそが、物理学の悲願で、現在重力を除いた他の三つの力は既に統一が実現していて、唯一、四つの力の中で圧倒的に弱い重力を統一するのはまだ難しくてできません。我々の生きている空間は3次元空間ですが、4次元以上の高次元空間が存在していれば、高次元空間に力を拡散する重力の特質から、3次元空間には重力の一部しか伝わってこないため、結果弱く見えるだけです。こういうふうに説明できれば、この四つの力を統一する可能性が見えてきます。高次元に関わる近年の物理界の理論として、少なくても以下のような内容があります。
〇超ひも(超弦)理論:
1984年、提唱者:イギリスの物理学者マイケル・グリーン氏&アメリカの物理学者ジョン・シュワルツ氏
〇ADD理論:
1998年、提唱者:物理学者ニーマ・アルカニハメド氏、サバス・ディモポロス氏、ジョージ・ドゥバリ氏
〇RS理論(RSモデル):
1999年、提唱者:物理学者リサ・ランドール氏、ラマン・サンドラム氏
〇その他:UED理論など
経絡は何次元の話?
我々は3次元の空間に生きています。私たちのカラダも3次元です。鍼灸の治療対象はこの3次元のカラダを持つ「病人」ですが、その治療根拠となっている経絡、経絡の沿路上にあるツボ、経絡の中を通過している気・血・津液(特に気のほう)も3次元でしょうか。それは違うと私は考えております。3次元なら、いつかは目で確認できるはずです。少なくても今の段階ではどんなに進んだ機械を使っても見えませんので、4次元以上の空間に存在するものだと考えるのはむしろ自然です。しかし、4次元なら、その存在の一部を「投射」(物体の持つ情報の一部を影として、より低次元空間に映し出す)の形で3次元の空間で確認できるですが、その投射でさえ我々には見えません。では、5次元の存在だと考えるのは自然の流れになるのではないでしょうか。そこで、一次元の時間を加え、私は経絡やツボを6次元(或いはそれ以上の)の存在だと考えます。
なぜ、5次元の空間に加え、時間も入れないといけないのか?それは、鍼灸治療の一部で、「子午流注鍼法」という理論は臨床で診断・治療に実際応用されているからです。「子午流注鍼法」を簡単に言うと、年・月・日・時刻に応じて、治療する経絡と取るツボ(経穴)が決まってくる手法です。「子午」は時間の変化、「流注」は経絡を流れる気血の運行、盛衰です。時間により、気血の勢いが一番盛んになっている経絡上にある五兪穴や原穴を選ひます。また、いつも決まった時間帯に決まった症状が出るとしたら、その時間帯に対応する経絡が問題を引き起こしていると診断する場合もあります。このように、鍼灸治療から「時間」の概念を外すことはできませんので、時間を多次元空間に追加する必要は、鍼灸の場合にどうしても発生します。
宇宙の誕生とカラダの中の宇宙
東洋医学には「天人合一」の思想があり、大宇宙の中で生きている人間のカラダの内部にはみんな小さいな宇宙を持っていると見ております。西洋医学の解剖学で見えるような内臓・組織、そして神経・ホルモンなどは異なった機能を持ちながら、互いに連絡し合った上で、有機的なつながりを持った一つの宇宙のような統一体をなしていると、東洋医学は数千年前からそう考えております。もちろんその時代にはホルモン、細胞、遺伝子などの概念はなかったのですが。
東洋医学、鍼灸の理論体系は、宇宙(世界)の本質は「気」であり、陰と陽の二つの気の対立と統一によるものであると見ております。気を空間と時間の具体的な事象として解釈しております。例えば、宇宙の始まりは形のない、混沌とした広がりのみで、この混沌とした広がりの中から「気」が生じて、これが気の始まりです。そして、気が分化して、清軽な陽気と重濁な陰気が生じます。やがて、陽気が上の方向へ上り天となり、陰気が下に沈み、地を形成します。天地の陰陽二気から四季の季節が生じ、人を含む万物が産まれます。
では、物理学で宇宙の誕生をどう見ているのか。物理学では、「量子重力理論」により宇宙は原子よりも小さいサイズで誕生したと考えているようです。量子重力理論の有力候補として、前述の「超ひも理論」がありますが、この理論が正しいと仮定すれば、誕生したばかりの宇宙はミクロな9次元空間だったと考えます。9次元のうちの6次元空間が何らかの理由で小さく丸められ、残りの3次元空間のみが急激に膨張を始め、やがて現在の3次元空間の宇宙が形作られてきたと考えています。つまり、我々が住むこの3次元空間以外に、小さくて気づけない(見えない)6次元の空間が存在しているのです。そこで、1次元の時間の入れると、宇宙は元々10次元の時空だったというのです。
なるほど、この流れで、宇宙にいる人、人の中にある宇宙、我々のカラダに、我々の見えない高次元が本来存在していて、日々それに影響されているのではないかと考えてもおかしくない話となります。
鍼灸の「左病右治」という治療原則は高次元空間なら説明がつく!
鍼灸臨床では、「上病下治」、「左病右治」という治療原則があります。例えば、ゴルフ練習で左の肘を痛めた患者さんを治療する時に、痛む患部である左の肘に鍼する以外に、一見全くの関係のない、右の膝にも鍼をします。これは、考えても結論の出ない難解で、ただ、大昔からの鍼灸治療論には、この治療原則が記載されているため、現在でも臨床で応用されております。なぜでしょうか。それは治療効果があるからです。難解ではありますが、今でも使われいる治療手法です。しかし、この治論を高次元空間で考えると、説明がつくのです。
4次元空間では、3次元空間の物体をつまんで回転させると、左がそのまま右に反転できます。左右の反転というのは、3次元空間でどう踏ん張ってもできないことです(鏡の中はできますが)。例えば、顔の左にある痣は3次元空間でどう頑張っても顔右にそのまま移動できないのです。しかし、これは4次元空間なら簡単にできます。また、左右反転したものが再度回転すると、今度上下も反転します。これが5次元空間の中なら、一度に左右上下がそっくりと入れ替われる(反転できる)かもしれません。となると、5次元空間では、左肘の痛みを右膝を治療して治すという行為は不思議でなくなり、説明がつくようになるのではないか。
この世でいつになったら経絡と気が見えるの?
私にもわかりません。我々の脳の進化次第でしょうか。
そもそも、3次元物体を見る時は、我々の目に映っているのは2次元の面だけです。目の奥にある網膜という平面スクリーンに左右の目で見た二つの2次元平面像を、我々の脳がうまく処理・合成して、脳の中で3次元の像を作っているだけです。つまり、脳が3次元物体を「見える」ようにしているのです。これが現在の脳の限界でしょうか。それとも網膜の限界でしょうか。2次元の面から3次元の立体を組み立てるのはできますが、4次元以上の物体を組み立てる能力はまだ我々にはありません。我々が住む3次元空間の世界を本当の意味でちゃんと見えるのは、4次元以上の空間に住む住民だけなのです。
いつか、脳が進化し、或いは現在の脳の同時駆動領域が更に広がり、4次元以上の多次元空間が「見えてくる」としたら、経絡やツボ、気の存在もやがて見えるようになるかもしれません。
或いは、見えないもの、測れないものも感じる力、信じる力を身に着けられるか、かもしれません。
東京都内。