症例紹介:貧血と鍼灸治療
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
貧血とは、末梢組織まで十分な酸素を運ぶための赤血球の数が少ないという状態です。貧血を客観的に診るための検査指標は、
①赤血球数 ②血色素量(ヘモグロビンHb) ③ヘマトクリット値
の三つです。
今まで治療院で経験した貧血に対する鍼灸治療は以下の診断名のつくものがありました。
■血小板減少性紫斑病
■慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスによる貧血
■悪性腫瘍(癌)による貧血
■再生不良性貧血
■骨髄異形成症候群による貧血
また、原因疾患はなく、単なる鉄不足による鉄欠乏性貧血の患者さんに対しては、まずお食事内容の指導から始めなければなりません。なぜなら、単純性鉄欠乏性貧血の一番有効な治療法は正しい食事を取ることで、十分な鉄分を体内に効率よく取り込むことです。
原因疾患・基礎疾患がある場合、原因疾患に対する治療を優先しながら、貧血対策も同時に講じていく必要があります。上記疾患のほか、慢性胃腸炎、慢性肝炎、慢性腎炎、子宮筋腫などの疾患や鎮痛剤、抗凝固剤など薬の副作用も貧血を引き起こすことがよくあります。慢性炎症がある場合、赤血球が鉄を取り込めなくなるほか、赤血球の生成に必要なビタミン(B12)、ホルモン(エリスロポエチン)不足、臓器からの出血などが貧血につながってしまいます。
鍼灸には「増血作用」があることは既に実証されております。鍼灸治療を受けた後の患者さんの血中赤血球数、血色素量(ヘモグロビンHb)が有意に増加したことが認められています。これが貧血が改善できる根拠になっております。また、血液凝固時間の短縮、白血球および血小板の数も増えることがわかっており、鍼灸治療が免疫力の向上、止血作用があると言われている一つの由来です。
鍼灸治療は、貧血と直接な関係がある赤血球だけでなく、白血球と血小板も増やす作用があることから、鍼灸治療は骨髄における全般的な造血機能を向上させているのではないかと考えられます。その根拠の一つに、鍼灸治療は血清CSF(コロニー刺激因子。造血因子の一つ)の量と活性度を増やし、各種骨髄幹細胞の増殖を促すことが確認されております。
余談になってしまいますが、うちの治療院に通われている、抗がん剤と放射線治療を受けている癌患者さんの方々は、白血球総数および感染症予防能力の指数になっている「好中球」(Neut、白血球の一種)の数を維持できております。抗がん剤などの副作用で白血球の数は減りますが、ある基準以下に減少してしまうと、抗がん剤治療そのものを中断せざるを得ません。白血球の中で特に注目すべきなのは、癌細胞を直接攻撃するリンパ球(lymph)の数です。進行癌でも、このリンパ球数は2,000個/mlを3年間維持できていれば、進行はしないと言われております。また、癌患者さんはほとんど貧血傾向ですので、鍼灸治療は同時に貧血の改善にもなります。