どうして鍼灸は効くの?(91)-癌について
(3)高ストレス感性
人間は生きている限り、寒さ・熱さ・肉体疲労・飢えなどの身体的ストレス以外に、さまざまな精神的ストレスを感じます。日本だけがストレスの多い国だとは思いません、戦争により家族も家も失い、貧困で産まれてから一度もおなか一杯ご飯を食べたことはなく、常に飢えている人々はもっと大変なストレスを抱えているでしょう。
戦後の日本は大変ありがたいことに平和が続いていて、子供たちは平等を目標に、「ほめて育てる」ことで大人になっています。しかしときには、子供の時からストレス対処法をあまり身につけることはなく、大人になって社会を出てから少々のことで大きくストレスを感じることがあります。つまり、ストレス感性が高く、言い換えればストレス耐性が弱くなってきて、体への悪影響も出やすくなります。
精神的ストレスは、ある出来事で悩んだり、怒ったり、怯えたり、イライラしたり、強い不安を感じたり、落ち込んだり、憂鬱になったりなどの精神的不安定な状態です。ストレスを強く感じると、まず自律神経のバランスが崩れます。交感神経は緊張し優位な状態になります。そうすると、心臓がドキドキし、血管が収縮して血圧が高くなり血液循環も悪くなります。食欲はなくなったり、胃もたれや胃酸の逆流、下痢・便秘の症状になったり、栄養状態は悪くなります。ほかに頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、不眠、肩こり、腰痛などの自覚症状も感じます。そして自分ではすぐに感じることのない異変も実際体に起きています、それは免疫力の低下です。免疫力が低下すると、風邪や帯状疱疹などになりやすいのは理解できますが、もっと怖いのは、ガン免疫細胞の数の減少や活性の低下です。
ガン患者さんの多くは数年前、十数年前に強い精神的ストレスを経験したことがあります。その時の激しいストレス、あるいは長期間にわたる慢性的ストレスで免疫力が弱くなり、細胞レベルのガンに対しても免疫細胞の処分能力はなくなり、1個のガン細胞からどんどん分裂・増殖して、個体レベルないし臨床レベルのガンへと発展させたものです。臨床レベルのガンまでは通常十年以上時間がかかることが多いです。
(4)優れた医療体制と診療技術
日本では健康保険証を持っていれば、いつでも、どこでも、少ない窓口負担額で診療を受け、処方薬をもらえます。また、街中のドラッグストアやインターネットで処方薬とほぼ同じ成分入りの市販薬を買えます。救急車は無料ですぐに来てくれます。命は平等です。もちろん、満足できないところは個人レベルであるでしょうが、ほとんどの国は日本と同様な医療保健を享受できないのは現状です。
しかし、物事には必ず両面性があります。
①薬の影響
非常に手軽に、安く薬を処方或いは買うことができるため、多種類の薬を同時に長年飲んでいる方は少なくありません。漢方薬も含めて、薬というのは症状を抑える役割と毒性の両方を持ち合わせています。どんな良い薬であっても望ましくない副作用があります。副作用についてもっと理解する必要があるのではないでしょうか。薬が吸収されたら、病所だけではなく、全身にいきます。例えば、胃薬は胃だけに届き、胃だけを治療するものではなく、血流に乗り全身に作用します。どの薬も肝臓で解毒され腎臓から排出されるため、肝臓と腎臓に負担をかけます。口から飲む薬は胃に入るため、胃腸機能にも影響します。皮膚に貼る湿布は皮膚に負担をかけます。薬は脂溶性のものが多く、吸収されたらたんぱく質(アルブミン)と結合して細胞膜を通過して核内のDNAを傷害することがあります。短期間なら修復は可能ですが、長期間なら毒性の蓄積で修復が不能となり、遺伝子変異を起こしガン細胞に変化してしまう可能性があります。また、多種類の薬を同時に飲み合わせ、薬と薬の間でどんな化学反応をおこし、どんな反応産物ができあがるのか、それが細胞、組織にどんな影響があるのか、ほとんどの場合、もはや地球上の誰にもわからない世界に入っていきます。
もう一度強調したいですが、薬は悪ではありません、利用者の使い方次第です。短期間、少ない種類(できたら3種以下)を服用する分には、忙しい現代人にとって、対症療法的に自覚症状を楽にし、生活の質を高めるものも多いです。例えば、咳で夜眠れず、次の日は仕事を休めない時、寝る前に体温を下げない咳止めを飲んで寝て、睡眠を保証し風邪を早く治したほうがいいでしょう。胃酸がこみ上げて吐き気、みぞおちが焼かれるような痛みがある時、短期間で胃酸を抑える薬を飲んでもいいでしょう。急に肩が痛くなり、夜も眠れない時、一回痛み止め剤を飲んで、翌朝起きたらすっきり痛みが取れることもあります。夏場非常に痒みの伴うあせもになり、大体一週間ぐらい我慢すれば何もしなくても自然に治りますが、イライラしながら我慢したくない方は、弱いステロイドの入った軟膏を3日ぐらい塗れば早く治り、つらい痒みから解放されます。翌朝大事な会議があり、しかし緊張で眠れない時、一回だけ睡眠導入剤を飲んで寝てもいいでしょう。次の日緊張するような出来事が終われば自然に眠れますので、一回だけの服用なら、依存性を心配しなくてもいいです。
このように上手に薬と付き合い、薬を利用して症状を楽にすることがあっても、決して薬に支配されないように心がけましょう。
②画像診断の影響
画像診断の普及と進歩で疾患の早期診断・治療ができるようになりました。ただし、頻繁なレントゲン検査、コンピーター断層撮影(CT)、ラジオアイソトープ検査(RI)、陽電子放射断層撮影(PET)などの放射線被曝のある内容は慎重になったほうがいいでしょう。
③人間ドッグ/健診の影響
中高年になったら、どこか一つ、二つが正常データー(健康な人平均的な数値)から外れてくるのは当たり前のことです。標準値と正常値は違う概念で、そこを混同しないようにしましょう。つまり、標準値から外れても、その方にとってはその値は正常であり、そこで医療介入をする必要はないこともあれば、常に標準値内に収まっていても病気にならないとは限りません。しかし、「要精密検査」というコメントがあると、再検査、そして検査結果を待っている間に、とても不安な毎日を過ごして、このストレスだけでも体のどこか具合が悪くなりそうです。やっと結果が出れば、「異常なし」である場合はほとんどです。なんだか損した気分になりませんか。或いは、心配性の方なら、「いや、この病院の検査はどこか漏れているかもしれない、やはり私は病気なんじゃないのか」とそれから延々と不安な気持ちを抱えるようになります。これら心身のストレスは免疫力を下げていることは言うまでもありません。
そして基準値も変更されることがあります。例えば、高血圧の服薬基準値は昨年変更されました。積極的に最新情報を取りにいきましょう。
冬の野菜畑
菜の花?は咲いています。
竹林はどの季節に訪れてもいいもんです。
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