秋の夜長に、これを考えたら更に眠れなくなる?
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
さて、これは何の紋章でしょうか。
約100年前(1922年)にノーベル物理学賞を受賞したデンマークの物理学者、量子論の育ての親として知られているニールス・ボーアがデザインした紋章で、デンマーク最高の勲章であるエレファンド勲章を受章ために作ったものです。驚くことに、中国・易学に淵縁を持つ陰陽魚太極図がドン真ん中に書かれているのではありませんか?!遥かに離れた西洋と東洋、量子物理学と東洋哲学の世界、どうして?
こちら↑が陰陽魚太極図です。黒魚と白魚が互いに絡み合い、黒魚の中に白い円、白魚の中に黒い円、まるで魚の眼のようです。太極図の起源は様々な説があり、例えば一説によると、現中国湖北省から出土した4500年前の陶器に、太極図に似た渦巻模様が発見されました。この模様にまだ魚の目が描かれていません。また、今から約1300年前に中国・宋朝の書物「太極図説」に具体的な記載があり、その後に続く明朝の書物「六書本義」に書かれた天地自然河図は今の陰陽魚太極図の始まりだと言われます。
なぜボーアが自分を象徴する紋章に太極図を取り入れたのか。
そして、2022年、ちょうどボーアが受賞した100年後のノーベル物理学賞は、「量子もつれ光子を用いる実験によって、ベルの不等式が破れていることを示し、量子情報分野を創始した実績」として、フランス、アメリカ、オーストリアの大学・研究機関に在籍の三名の学者に授与されました。量子は分子より小さく、粒子と波の性質を併せ持ったエネルギー単位のことで、光子、原子、電子、中性子、陽子などがすべて量子です。量子もつれは粒子間の強い相関関係を示し、もつれ状態にある粒子は互いに回転方向を反対にして観察された瞬間に、距離に関係なく、仮に宇宙の遥か向こう側に離れていても必ず同時に決まるという、今までの常識では考えられないものです。この同期する速度は光の伝搬速度を遥かに超え、空間(距離)がまるで存在しないような速さです。量子もつれを観測し、可視化するのは至難のことでしたが、とうとう2019年イギリスの大学研究チームが世界で初めて実験的に量子もつれを画像化することに成功し、学者たちが一世紀近く悩んできた問題を解決する糸口を見つけてくれました。その画像の一部はこちらです↓
その後2023年、カナダとイタリアの研究チームは、ナノ秒の解像度を持つ先進的なカメラシステムを用いて、もつれ状態にある光子の波動関数をリアルタイムに可視化する新たな現像技術を実証する際に、最も実験結果をよく表せるモデルとして選んだのは、なぜか再びこの陰陽魚太極図でした。この技術は量子コンピュータの開発に応用できる可能性があり、撮影されたもつれ状態にある二つの光子はこちらです↓
面白くないですか!?どう考えても関係のなさそうな、量子理論と数千年前の遥か昔にできた陰陽論がなぜ出会うのか。
約100年前にノーベル賞を受賞したボーアは、量子物理学と東洋哲学は類似していて、東洋哲学特に「易経」を研究していました。太極図はまさに「易経」の精髄です。「易経」は今から3100年前の書物で、幅広い分野をカバーしているのですが、中にある宇宙、自然、人間は常に相互に感応し合う有機的なつながりをもった統一体で、「天人合一」の思想は東洋医学に多大な影響を与えてきました。人は大宇宙の中で生き、人体には小宇宙が生きています。そして、宇宙も人体も突き詰めれば物質的に量子からできています。
陰陽魚太極図は宇宙万物の運化を表し、白は陽、黒は陰、陽がなければ陰もなし、反対もそうであるように、陰と陽は相互に依存しています。また、陰陽は互いに対立しながら制約する存在でもあります。陰と陽は絶対的消長をもって相対的平衡を保ち、「物が極まれば必ず反す」で言うように、量的変化が頂点に達せば、質的な変化が起こり、陰と陽が反転することになります。
鍼灸医学はまさにこの陰陽論と五行説を基礎理論とし、人体の臓腑、生理機能、病理変化、診断と治療のあらゆるところで陰陽論を根拠にしています。
太極図は円の中に、黒と白の領域があって、その境目はバサッと一直線ではなく、S字になっています。なぜ?そして、黒の中に白眼、白の中に黒眼が書かれていて、これは単なる構図上の「目」を表すだけでしょうか?
これは陰と陽の消長と平衡、陰(陽)が極まれば陽(陰)になり、陰と陽の中にそれぞれ陽と陰を含めていることを表しているのではないでしょうか。人間の体の中心にある背骨、背骨の形も一直線でなく、二つのS字の続きになっています。細胞核にあるDNA(人間の遺伝情報の本体)の二重らせん構造も二本の直線でなく、S形の連続に見えませんか。ちなみDNAを転写したRNAの塩基組み合わせは64通りがあって、「易経」にも64卦があり、偶然に一致しています^ー^。
ところで、太極図は中国以外に、世界のどこにも存在しなかったでしょうか。いや、7500年前から約3000年間も続いたククテニ文化にも太極図の原型があったとされています。ククテニ文化は現在のウクライナ、モルダビア、ルーマニアをまたがる地域で生まれ、繁栄した文化です。ククテニ文化の集落は城壁を持たず、家と家が連なって建てられ、復元した集落を上空から見たときに、なんと陰陽魚太極図の形をしていました。ククテニ時代の人々はなぜか60年ー80年の周期で家を一度壊してからまた再度建て直すことを慣習にしていたことがわかっており、これも家は自然や人間と同じように命を持ち、”始まりー終わりー始まり・・・”を循環させることで脈々と命を繋いていくという考えを持っていたからだと考えられます。出土したククテニの土器に、魚眼を持つ陰陽魚太極図に酷似した模様が見られます。これも興味深いです、なぜなら、この話は中国のそれよりも更に年代が早いからです。
そもそも、陰と陽の考え方は人間の体と精神世界を含めた宇宙万物の本質を突いたもので、地域や種族に関係なく、時間の前後があるにせよ、この本質に気づいた人は地球上のどこにいてもおかしくないのです。
あっ!”気づいた人”、気づき、、直感、、、とてもとても大事ですね。。。。知識や”エビデンス”、目に見える世界を越えた何かが。まるで陰陽魚太極図にある魚眼のように。
これからの秋の夜長に、考えたら恐らくますます眠くならないこれらの世界に、色々な思いを巡らせてみてはいかがでしょうか、面白いですね!
十五夜
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