どうして鍼灸は効くの?(88)-癌について
(3)ガンに対する免疫監視機構
健常者でも1日数千個のガン細胞が体内にできてくるといわれています。個体レベルのガンや臨床レベルのガンに進行しないのは、ガンに対する免疫監視機構が我々のからだに元々あるからです。
免疫監視につとめている免疫細胞と免疫物質は、細胞障害性T細胞(CTL 別名キラーT細胞・CD8陽性T細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、マクロファージや樹状細胞などのエフェクター細胞(効果細胞)とIL-2、IFN-γなどのサイトカインです。
CTLは骨髄で作られた造血幹細胞から分化した後、さらに胸腺で分化・成熟するTリンパ球です。この細胞はガン細胞を見つけると、ガン細胞に接近してパーフォリンという酵素を含有する顆粒を放出して、ガン細胞膜に孔を開けて、グランザイムなどのアポトーシス誘導因子を放出します。これにより、ガン細胞の中で一連の化学反応が起こり、ガン細胞の核やDNAを破壊し、細胞死までに誘導します。
NK細胞とNKT細胞は同じように造血幹細胞由来するリンパ球で、NK細胞はおもに骨髄で分化・成熟するが、NKT細胞は胸腺以外に肝臓・腸管上皮などの組織でも成熟します。NK細胞はおもに脾臓・骨髄・肝臓に分布し、NKT細胞はそれ以外に胸腺、腸管上皮、子宮内膜などの部位にも存在します。両方とも特異的な抗原機構を持たずに、自然免疫につとめていますが、それぞれ違うサイトカインを産生し、別々の免疫機能を担っています。腫瘍に対して、NK細胞とNKT細胞は似たような殺傷作用を発揮し、CTLと共通な機序で強いガン細胞殺傷能力をもっています。また、NKT細胞はIFN-γを産生してNK細胞を活性化させる機能も持っています。
マクロファージの抗ガン作用は
①直接の食作用、
②生理活性物質の放出、
③免疫サイトカインの放出、
④抗原提示
などで発現すると考えられます。マクロファージの強力な殺菌・異物処理機能は昔から知られていますが、近年、腫瘍免疫にも参与するのが注目されています。その機能の発現は、
①マクロファージは腫瘍細胞を細胞内に取り込みファゴソーム(食胞)を作り、それをリソソーム(細胞内顆粒)と融合して、顆粒内の水解酵素で腫瘍細胞を分解する。
②活性酸素(H₂O₂)や一酸化窒素(NO)などの生理活性物質を放出して、細胞毒性作用でガン細胞を傷害する。
③インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)などの免疫サイトカインの放出により、腫瘍に対する細胞性免疫を実現する。
④ガンの死細胞を貪食し、その抗原情報をヘルパーT細胞、CTL、B細胞などに提示し、ガン免疫を活性化する。
などによるものだと考えられます。
IL-2(インターロイキン-2)は1型ヘルパーT細胞(Th1)から産生する免疫サイトカインで、マクロファージ・NK細胞・T細胞の分化・増殖・活性化を促進し、キラー細胞(LAK)の分化、IFN-γの生成を誘導する働きがあります。
INF-γはTh1細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞(抗原提示細胞)、マクロファージなどから生成するサイトカインで、マクロファージの活性化、キラーT細胞(CTL)の生成誘導などの機能をもち、腫瘍免疫に重要な役割を果たしています。
樹状細胞に関しては、マクロファージ以上に抗原提示作用が強く、ガン細胞を認識し、CTLなどのガン細胞を攻撃してくれる細胞に攻撃対象を示し、CTLを活性化します。これに関しては、以前のブログ(2016年11月公開、再びの「丸山ワクチン」)で紹介したことがあり、当時のブログの末尾部分を以下に再掲させていただきます:
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上記臨床試験の結果に加えて、丸山ワクチンの信憑性を高めたもう一つの柱は2011年にノーベル生理学・医学賞を受賞した自然免疫の要である「樹状細胞」に関する新たな研究成果です。樹状細胞は最初にがん細胞を貪食&分解し、がん細胞の持つ特徴を主力攻撃部隊であるキラーT細胞に細かく伝えます。キラーT細胞は樹状細胞から指令を受けて初めて、がん細胞を攻撃することができるようになります。ところが、増殖するがんの塊の中にある樹状細胞は正常に機能せず、このような樹状細胞のことを「免疫抑制型樹状細胞」といいます。一方の増殖が抑制されたがんにある樹状細胞は、キラーT細胞にがん細胞を攻撃するよう適切な指令を出せるのです。このような樹状細胞を「免疫活性型樹状細胞」といいます。つまり、樹状細胞の活性化がない限り、キラーT細胞は目の前のがん細胞を見過ごしているだけで、攻撃しようとしません。丸山ワクチンは抑制状態に陥った患者さん体内に元々あった樹状細胞を活性化できることが最近の科学的知見から明らかになってきました。
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免疫系の腫瘍免疫作用は実に複雑で、細胞性免疫が主役ですが、Bリンパ球による液性免疫、樹状細胞などの免疫提示細胞による腫瘍抗原の免疫提示など、免疫細胞や免疫活性物質などの総合作用により、ガンに対する免疫監視機構が成り立っています。なお、今現在わかっているのはまだ一部にすぎず、全容への解明など先へ急ぐ必要があります。
(4)免疫力はどういうときに弱くなるか
免疫監視機構が正常であれば、細胞レベルのガン細胞はつねに免疫細胞に処分されるので、個体あるいは臨床レベルのガンに発展していきません。しかし、免疫監視機構の働きは鈍く、或いはしなくなると、免疫力は弱くなり、ガンが徐々に形成されていきます。免疫力が弱くなる要素はいろいろありますが、たとえば次のようなものがあるでしょう。
①精神的な強いストレスを感じる。或いは長期間感じる。
②肉体疲労の蓄積、長期間の過労状態。
③不眠・寝不足が長期間続く。
④夜更かし、昼夜逆転などの不規則な生活が長く続く。
⑤体温が低い。
⑥過剰な薬を長期間服用する。
⑦食品添加物、農薬、殺虫剤に汚染された食べ物の過食。
⑧炎症性植物油、甘いもの、超加工食品の過食。
⑨肥満或いは低体重
⑩運動不足による血流不全、筋肉量が少ない。
まだ暑い毎日ですが、夏の緑は濃くてきれいです。
今年も蝉たちは元気はありません(蚊は少なくて助かっておりますが)。
暑いですけれど、みんな懸命に生きています。
なにが写っているのかはわかりますか^ー^(昆虫です)
こちらのトンボも見えますか。青く細長いしっぽ。
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