どうして鍼灸は効くの?(87)-癌について
二、ガン(癌、悪性腫瘍)
日本において2人に1人がガンになるそうです。これだけ医療技術が進歩していると言われるにも関わらず、先進国の中でなぜか日本だけがガンの罹患率が増えています。毎年40万近くガンで人は亡くなり、この漢字一文字だけの病名は未だに患者のみならずご家族にも大きなショックと恐怖をもたらします。
余談ですが、うちの治療院に病気予防のために20-30年間通い続ける患者さんは多くいらっしゃい、ガンになった方は一人もいません。
平均寿命はかなり延びたから、ガンになる人は増えたという解釈はあります、確かにこれは理解できます。一方で、今は罹患年齢が若年化しているのも事実です。癌化しやすい食生活、低体温化、交感神経優位(高度なストレス)、空気・土壌・水の環境汚染、過剰な薬の服用など、すぐに思いつく原因はたくさんあるのではないでしょうか。ガンは全身の病気です、たまたま一つの器官に発生したものが問題視されますが、それを育むからだ全体がガンになりやすい内部環境になってしまっていると見なければなりません。ですので、一部位にできたガンをたまたま発見して、一生懸命にそこのガン細胞を死滅させようとしても、根本治療にはなりません。また、ガンの早期発見・早期治療は患者の寿命を延ばす医学的エビデンスは実際にはないと主張する医療関係者もいます。ガンは基本的にならないように予防に徹するべきです。それには、予防医学でもある鍼灸医学に大いに期待できます。
1、ガンと免疫の関係
(1)ガンはどういうものか
ガンは細胞遺伝子が傷つき、免疫力低下によるガン細胞の異常増殖をきたす病気です。
ガン細胞は、正常の細胞が何らかの原因(危険な生活習慣、化学性発ガン物質の直接・間接作用、放射線暴露、ウイルス・細菌感染など)によって遺伝子の損傷・変異が起こり、ガン細胞に変身したものです。細胞の増殖には4種類の正常な調節遺伝子があり、細胞分裂を促進する癌原遺伝子(オンコジーン)、分裂を抑制する癌抑制遺伝子、細胞死(アポトーシス)を制御する遺伝子、DNAを修復する遺伝子です。癌原遺伝子が変異するとガン遺伝子と化けます。いずれにせよ、これらの遺伝子は2つ以上に変異が起こり、また多数の変異が蓄積すると正常な細胞はガン細胞に変身する可能性が大きくなります。
ガン細胞が一つだけの場合は、細胞レベルでのガンといい、2つ以上のガン細胞が集合すると個体レベルでのガンとなります。1個のガン細胞は30~40回の分裂を繰り返して、やっと臨床検査でわかるガンとなり、このときのガンは臨床レベルのガンといいます。
(2)ガンはどんな性質があるのか
ガンには次のような性質を持ちます:
①ガン細胞の分化程度はさまざまで、正常細胞とほとんど変わらない高分化なものがあれば、完全に未分化のものもあります。未分化であるほど、増殖は速く、本来の細胞機能を失いやすい。
②癌原遺伝子から変異する癌遺伝子はガン細胞を無限的、無制約、クローン的な複製や増殖を促進するため、ガンの増殖速度は非常に速い。
③ガン抑制遺伝子の不活性化や腫瘍細胞のアポトーシスの回避により、ガン細胞は死なない細胞となる。
④ガン細胞自身の栄養摂取や増殖のために勝手に血管を作る(血管新生)。ただしこのような血管は漏れやすく、血管間の吻合はでたらめである。
⑤ガンは周囲の組織に浸潤して、正常組織を破壊しながら自身の増殖を図る。
⑥ガン細胞は転移能をもち、体腔への播種、リンパ行性転移、血行性転移の3つの経路を介して遠隔組織に転移する。
ガンのことはまだわかっていることは限られているため、今後新たな発見が出てくるでしょう。次回は人体に備わっているガンに対する免疫監視機構をみます。
暑いです! 皆様はいかがお過ごしでしょうか。涼しい環境に身を置き、出かける時は首に保冷剤を巻き、男性も日傘を活用しましょう。精力のつく食事、十分な睡眠をとりましょう。