症例紹介:肺MAC症の鍼灸治療
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
今回は肺MAC症に対する鍼灸治療をご紹介いたします。
肺MAC症は結核菌と同じグループに属するMAC菌による慢性的な呼吸器感染症です。肺結核と違い、人から人への感染はありませんので、非結核性抗酸菌症の一つです。しかし、肺結核には今良い治療薬があり、半年間服薬すれば完治できますが、肺MAC症には特効薬と言われる抗菌薬はないため、抗菌薬治療が非常に難しく、治癒できる薬は現段階ではありません。もし症状が既にあって、画像上も進行が速い場合、抗結核薬を含めた3つの飲み薬を基本として治療を開始することが多いです。服薬期間は少なくても1-3年間を続ける必要があり、抗菌薬を長期間服用するにあたり、強い副作用が懸念されます。よく出る薬の副作用は発疹、肝機能障害、発熱、汎血球減少、様々な消化器症状、視力障害、聴覚障害です。
肺MAC症は繊維空洞型と結節・気管支拡張型があり、日本ではおよそ8割は結節・気管支拡張型です。症状は咳と痰が最も頻度が高い症状で、血痰、発熱、呼吸困難、倦怠感、体重減少などがあります。
今日ご紹介する症例は結節型で末梢肺の結節が鍼灸治療のみでほぼ消失した症例です。
患者様:Sさん、60代女性、会社員
初診時主訴:
Sさんは2021年6月の健康診断で肺に陰影があると言われ、その後喀痰培養検査、CT検査を経て、肺MAC症と診断されました。左肺に大小違う二つの結節像が確認され、自覚症状には、咳、痰(黄色、粘り気ある)、食欲不振、体重減少、不眠(診断後、病気と今後の仕事のあり方に対する不安から)があります。また、緑内障の治療中で、2種類の点眼薬が処方されています。
病院では、抗菌薬による投薬治療を提案されましたが、Sさんは薬の副作用(緑内障の治療中なので、視力障害を特に気になられました)が気になり、すぐの服薬を見送り、その間薬以外のアプローチを探していた結果、当治療院の鍼灸治療にかけてみることにしたそうです。
治療経過及び結果:
東洋医学の診断では、Sさんは典型的な「肺腎陰虚」、合わせて軽度な「脾気虚」が伴います。診断されてから不眠、肩こりの症状が出てきたその裏には、「肝気郁結」が隠れており、「肺」のみならず、「腎」、「肝」、「心」、「脾」を含めた全身治療が必要です。
2021年9月から治療を開始し(2週間に1回のペース)、同年12月の定期検査では、MAC菌を検出できず、レントゲン画像上も改善が見られ始め、この頃から眠れるようになり、咳はほぼ出ず、痰の頻度も減りました。食欲はまだそれほどありませんが、病気に打ち勝つため、三食をちゃんと食べるように、ご自分に言い聞かせながら食事を摂っておられました。肩こりはなくなり、仕事が相変わらずお忙しかったですが、その中で体調が少しずつ上向いてきました。2022年12月のCT検査では、左肺にあった二つの結節像は無くなり、主治医からは「不思議ですね、これはめったにないことです」と言われたそうです。
Sさんは今も体調維持のために、鍼灸治療を続けておられます。特別なご事情以外、必ず予定通りに治療をコツコツと続けてこられたSさんの努力は実を結んだ結果です。
新緑が素敵な季節になりました。
麦!
竹林