帯状疱疹後神経痛の鍼灸治療、そして新しい帯状疱疹ワクチン
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
治療院には時々、帯状疱疹後神経痛の患者さんがいらっしゃいます。帯状疱疹はよく知られている病気で、子供の頃に一度水痘にかかり、大人になった後になる病気です。私も6歳ぐらいの時に、近所の子供からうつされ、水痘にかかった記憶はありますので、将来帯状疱疹にかかる可能性があります。水痘は水痘・帯状疱疹ウィルスによりおこる病気で、このウィルは非常に強い伝染力を持ち、直接触れ合わなくても、発症者の近くにいるだけで感染しますので、私の記憶では、私を含め遊び仲間の7-8人の子供全員がほぼ同時期に水痘にかかりました。意外に知られていないようですが、重症の帯状疱疹と水痘発症者からは空気感染することがあります。
さて、水痘に一度かかると、体内に侵入した水痘・帯状疱疹ウィルスがそのまま脊髄神経節に居残り休眠します。免疫力が低下した時に覚醒し活動が活発になり、結果的に帯状疱疹が発症します。帯状疱疹の典型症状はまず皮膚のピリピリとした痛みから始まり、そして帯状の水泡を伴う発疹になります。一部の方(特に高齢者や帯状疱疹の治療に遅れた方)は発疹が治った後も、強い痛みが残り、帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行してしまいます。こうなると、治療が長期化し、痛みがなかなか治りにくく生活の質が著しく損なわれます。
PHNを予防するには、何といっても帯状疱疹を予防することです。うちの治療院に定期的に通われている方(病気予防・健康増進のため)は途中で帯状疱疹を発症することはまずありません。これはみなさんが鍼灸治療を通して高い免疫力をずっと保たれているからです。
しかし、既に帯状疱疹にかかってしまった方はなるべく早い段階で病院を受診し、抗ウィルス薬や鎮痛剤の服用(或いは点滴)により症状の広がりを抑えましょう。帯状疱疹の初期症状は典型例以外に、痛みはなく、かゆみや痺れ、違和感だけのケースもあり、「あれ?」と思ったら油断せず受診することをお勧めします。
さて、PHNは感覚神経が傷つくことによる神経障害性疼痛で、耐え難い神経の過敏痛、自発痛が起こります。治療は長期間(時には2-3年以上)を要し、薬物療法や神経ブロック(免疫抑制剤や局所麻酔薬で痛みの伝達を止める)療法で治療します。なかなか思うように治療がいかない時に鍼灸治療に来られる方が多いのは現状です。
鍼灸の分野では昔から帯状疱疹後神経痛を治療を行ってきました。来られる患者さんの多くは既に半年以上に長引いた頑固な神経痛になっている方が多いため、治療はある程度の期間(例えば10回を1クール)を継続的に行います。軽症のうちにいらっしゃる患者さんは数回の治療で痛みが取れることが多いです。一部の患者さんは西洋医学の薬物療法と併用して治療することもあります。鍼灸治療で期待する効果は以下の点にあります:
①ウィルスにより障害された脊髄神経の修復
②疼痛のコントロールと軽減
③外部物理刺激に対する疼痛閾値(敏感度)を下げる
④体全体の状態を整え、免疫力を上げ、再発を予防する
⑤薬物療法を受けている方にとって、薬の副作用を軽減する
先ほどお話したように、ほかの病気と同じように、PHNもなった後の苦しみを考えたら、まずならないようにつまり予防するのは一番大事です。PHNの病理から子供の時期(1-2歳)に水痘ワクチンの予防接種をするのはもちろんですが、私のように水痘にかかったことのある大人は50歳を過ぎたら、帯状疱疹ワクチンを接種するのも一つの方法です。帯状疱疹ワクチンは2種類があります。従来型の水痘ワクチン(前述の子供向けのワクチンで、日本で開発された)に加え、昨年から「シングリックス筋注用」というワクチンも日本で使用可能となりました。これは偶然に接種を受けたうちの患者さんからいただいた情報ですが、この新しい帯状疱疹ワクチンがより高い予防効果が得られるようです。50歳以上の方が対象で、2回接種になります。費用は少し高いそうですが、自治体により補助金が出るところもあるようです。ワクチンですので、接種できない方や接種後の注意事項があり、接種をお考えの方はかかりつけ医や自治体にまずお問い合わせいただき、情報を集めてくださいね。
予防接種するか否かに関わらず、やはりご自身の免疫力を保つ・高めるのは一番確実で、PHNだけでなく、ほかの免疫力低下による様々な病気の予防になります。高い免疫力を保つ生活習慣は何といっても食事栄養、睡眠、ストレス解消、程良い運動(運動のし過ぎは禁物)です!
少しずつ遠ざかっていく春をもう一度思い出すために!
これもさくらだそうです(サト桜、初めて知りました)。咲く時期は染井吉野より遅めのようです。