どうして鍼灸は効くの(33)?
今日から二回に分けて、鍼灸治療と血液粘性、そして血管拡張作用との関係の続きを見ます。
(4)血液粘性の改善作用
中国広西中医学院第一付属病院鍼灸科は、MDK-3200KSデュアルチャネル自動レオロジーテストアナライザ(血液粘性分析機器)およびToshiba120-FR全自動アナライザ(血脂分析機器)を使い、患者さんの鍼灸治療前後の血液粘性と血脂を調べました。100人(男性41人、女性59人、年齢は42歳〜72歳)の脂質異常症の外来患者さんに打膿灸(直接肌にもぐさを置いて、焼けどになるお灸)を1回した後、隔日に1回、計20回の鍼治療を続けました。それから治療前と治療後の全患者さんの血液粘性、中性脂肪(TG)、総コレステロール(TC)、善玉コレステロール(HDL)、悪玉コレステロール(LDL)を測定しました。なお、全血粘度の測定は血液の流動速度(剪断速度)を高・中・低に分けて行いました。
表2 血液粘度(⁻x±s)
治療前 | 治療後 | |
高速(300mPa/s) | 5.94±0.62 | 5.43±0.59 |
中速(20mPa/s) | 7.21±0.82 | 6.67±0.79 |
低速(3mPa/s) | 14.04±1.84 | 12.70±1.77 |
表3 血脂質 (⁻x±s,mmol/L)
治療前 | 治療後 | |
TG | 1.728±1.069 | 1.340±0.678 |
TC | 5.340±0.678 | 5.116±0.951 |
HDL | 1.310±0.382 | 1.430±0.317 |
LDL | 3.470±1.070 | 3.350±0.669 |
検査結果から見ると、鍼灸の刺激で血液粘性はどの剪断速度でも下がったことがわかり、血脂の改善がその一因だと考えられます。悪玉コレステロールの降下は少なかったものの、中性脂肪と総コレステロールは有意に低下し、善玉コレステロールは増えた格好になっております。
前のブログにもあった天津中医学院第二附属病院はウサギを使った実験で、人為的に末梢循環を悪くし、細静脈の流れを観察したところ、血行が悪くなったウサギは細静脈の流れが鈍く、所々に粒状流、絮状流、線様流のような血流が滞っている状態でしたが、2ヶ月の鍼治療をして観察すると、細静脈の血液流速は速くなり、粒状流が消失し、赤血球の凝集現象はだいぶ減りました。この研究グループは、血液の粘性が改善された原因は、活性酸素の減少、ET値の低下、NO値の増加と関係していると結論づけました。
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