症例紹介:逆流性食道炎と生理前症候群(PMS)の同時治療
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
32歳の会社員の女性(Aさん)が三ヶ月前に初診で治療院を訪れました。主訴は逆流性食道炎(診断されてから既に半年間、処方された薬を飲み続けている)です。問診するにつれ、主訴以外に、生理前症候群に見られる症状、胃もたれ、首・肩こり、目の疲れ、肌荒れにも困っているそうです。
食べたものが胃から食道へ逆流しないように、食道と胃の間には「下部食道括約筋」があります。なぜこの仕組みが必要かというと、胃酸はご存知のように、お酢よりも強いpH1-1.5(空腹時)ぐらいの強酸性を示します。食道には胃粘膜のような、胃酸から自身を守る構造はありませんので、胃酸が胃から食道に頻繁に上がってくると、食道の粘膜が炎症になってしまいます。胃酸が上がってくる原因は大体二つで、下部食道括約筋の緩みか、胃酸の分泌過ぎかです。老齢者には、前者によるものが多く、若者では、胃酸の分泌過多が一番の理由です。
治療するには、生活習慣の改善、投薬、手術などがあります。治療薬は一般的に、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬、制酸剤、(食道)粘膜保護剤、漢方薬が処方されます。再発が多いため、症状がなくなっても、長期にわたり、薬を飲み続けることは多だあります。
生活習慣の改善には、腰を曲げるような姿勢、早食い、高脂肪食、肥満、服薬の副作用の見直しが必要です。ただし、Aさんの場合は、これらはあまり該当しないため、規則正しく食事を取ること、ストレスの対処法をまず考える必要があります。
Aさんの症状は多岐にわたっていますが、東洋医学で考えると、原因はシンプルです。まとめると「気滞血瘀」、「胃火上逆」になります。ここで特に「肝郁気滞」による「肝脾(肝)不和」に注目します。最近女性が社会で活躍する一方で、仕事や会社の人間関係によるストレスも受けるようになりました。こうなれば「肝気」が滞り、胃酸の分泌過多になったり、胃の動きが悪くなります。またイライラ、不眠などの精神症状、生理不順、目の疲れ、頭痛、耳鳴りなどの症状も出ることはよくあります。また、血流のめぐりも滞り、肩こりや肌荒れなど多彩な症状を引起してしまいます。
1回の治療を経て、すぐに胃もたれ、生理不順、首・肩こりの改善が見られました。笑顔が見られるようになり、今までの強い緊張感やストレスもかなり和らいだそうです。5回の治療を経て、顔色は明るくなり、お肌の艶も出てきて、体調全般がとても良くなったため、主治医の先生と相談した結果、半年間飲んでいたプロトンポンプ阻害薬を一切やめ、様子を見ることにしました。薬をやめた後も再発はなく、現在に至っています。今は月に1、2度の治療で再発防止、肩こりや目の疲れを改善しています。
家のハイビスカスは次から次へと咲いています。この色はやはり一番好きです!