どうして鍼灸は効くの(65)?
三、鍼灸はどんな病気に効くのか
鍼灸はすべての病気の治療に使われます。なぜなら、鍼灸治療の本質は、人間が本来持っている自然治癒力を呼び覚まし、回復・向上させることにあります。もちろん、万能な医療は存在しないように、鍼灸も万能ではありません、患者さんが治療を始めた時の基礎体力、病の進行度、患者さんご自身の日常生活内容などにより、同様な治療でも予後が様々に違ってきます。
自然治癒力は以下のような機能を持ちます。
○生体内恒常性(ホメオスタシス)の調節・維持機能。細胞の正常生命活動を維持するために、細胞の生存環境を一定にしなければなりません。体内環境は栄養素、酸素、温度、イオン濃度、pHなどを指している。これらを正常に維持するのは循環器、消化器、呼吸器、泌尿器などの正常な働きに依存します。
○正常な血液循環の維持機能。心臓の正常な収縮・拡張、血管の血液輸送機能の確保、血管の再生・側副循環枝の形成などにより血液循環機能を正常に保ちます。
○毒素の処理・排出機能。食物と一緒に体内に入ったウイルス・細菌、食べ物に入っている化学添加物・農薬、呼吸により吸入した有害物質、注射や飲んでいる薬物など、身体に有害な物質を、肝臓・腸・腎臓・肺臓などによって解毒・排出されます。
○細胞・組織の再生・修復機能。慢性炎症・骨折・手術・外傷による皮膚・筋肉・結合組織・臓器などの損傷は、細胞の再生や組織の修復能力によって治癒されます。
○幹細胞による再生機能。造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞、脂肪幹細胞、生殖幹細胞、臓器幹細胞などの幹細胞により、細胞・組織・器官の再生が維持されています。
○老化・不要な細胞の処分機能。老化・変性・形成不全・修復不能などの、体にとって不要な細胞が自ら死滅します(アポトーシス)。そしてアポトーシス細胞は免疫系の食細胞によって処分されます。
○免疫系の機能。免疫機能や免疫バランスの調節が自然治癒力のもっとも重要な内容です。
鍼灸の適度な刺激により自然治癒力が調節され、病気の予防はいうまでもなく、かかっている疾患の症状の改善・治癒も促進されます。西洋医学の治療手段は薬物、手術、放射線、機能訓練などがあげられます。いずれどちらの治療を受けても、最終的に病気を治してくれるのは患者さん自身の治癒力です。
四、鍼灸治療を受けるタイミング
どの病気も早めに治療を受けるほど予後が良く、鍼灸治療も例外ではありません。例えば、風邪、難聴、腰痛や頚椎症のような関節の痛み、痺れ、めまい、リウマチなど、軽いうちに鍼灸治療を受ければ、一回の治療で自覚症状がなくなるのは珍しくないことです。すぐ治らなくても数回の治療で完治するのもあり得ます。
○持病や慢性疾患なら、いつ鍼灸治療を受けてもよい。
これらの患者さんは治療院に来られる時は既に長い間、様々な病院で各種の治療を受けてきています。例えば、膠原病などの自己免疫疾患、坐骨神経痛、慢性的な膝関節症・股関節の痛み、糖尿病、慢性腎臓病、慢性膵炎、肝硬変、喘息、肺MAC症、慢性咽頭炎、アトピー性皮膚炎、悪性腫瘍治療後の体力回復、不妊症、生理不順、更年期症状、原因不明なめまい、頭痛、過敏性腸症候群など、病院の治療だけで効果的に改善されない場合、鍼灸治療を試してみるお気持ちで来られる方はほとんどです。
病院の治療を受けながら鍼灸治療を受けるケースと、一旦病院での治療をやめて完全に鍼灸のみの治療を受けるケースと、患者様ご自身の判断でそれぞれありますが、
・東西医療の相乗効果で病気の治癒が早くなる、
・薬や手術による副作用を鍼灸で緩和する、
・減薬 or 薬をやめることの実現、
・治療効果の維持&再発予防、
・合併症など、関連する複数の病気を同時に治療・予防する、
・他人の手を煩わすことなく、自力でなるべく健康長寿の期間を伸ばす、
などの利点があります。
○急病なら、まず病院の診察を受けてから、鍼灸によるアフターケアをする。
急病といっても、さまざまな事態があります。
・すぐ手術しなければ命の危険があるような病(心筋梗塞、脳梗塞、大動脈解離症、胃穿孔、腸閉塞、網膜はく離症など)は一刻も早く総合病院へ行かなければなりません。
・急な頭痛、腹痛、吐き気、めまい、喘息、下痢、腰痛などの症状は、まず病院の検査を受け、はっきりとした診断をもらい、適切な治療を受けたほうがよいです。
・病院の治療効果が理想的ではない場合は、慢性化させないためにも、むしろ早めに鍼灸の治療を受けたほうがいいです。たとえば、帯状疱疹後神経痛、四十肩、膝・腰・股関節の痛みなどの運動系疾患、自己免疫疾患、肺MAC症などの免疫低下による難治症、喘息・花粉症などのアレルギー疾患、膀胱炎、咽頭炎、頭位性めまい、偏頭痛、不妊症、生理不順などの疾患に対しては、鍼灸の治療効果はてきめんです。
健康増進・病気予防のために長年うちの治療院に通われている患者さんは、急に関節・筋肉痛になった、急にめまい・頭痛・腹痛、動悸&息切れ、風邪っぽい症状があったといったような日常的な小さなトラブルにおいて、まずうちでの治療を希望されることが多いですが、いずれにして、前述した通り、こちらで患者さんの全般的な体調を診察したのち、鍼灸で十分に対処できるか、或いはすぐに病院で処置してもらったほうがいいのかを判断し、患者さんの利益を常に第一に、的確なアドバイスをさせていただいております。
可愛いてんとう虫さん!
黒い鯉が見えますか。
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