症例紹介:帯状疱疹後神経痛の鍼灸治療
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
先日日本のあるコロナワクチンセンターにおける研究結果(今年7月末)を拝見しましたが、うちの治療院でこのごろ受診した「帯状疱疹後神経痛」の患者さんのことを連想させてくれるような内容でした。この研究結果の中で、まれにある副反応の中に「帯状疱疹」という報告がありました。ただし、同センターでまだ報告数が少ないため、新型コロナワクチンとの因果関係は不明で、今後のさらなる研究が望ましいとも書かれています(海外においても「帯状疱疹」等の副反応が報告されております)。
さて、近々一ヶ月間帯状疱疹後神経痛で来られた患者さんの一例です。
患者さん:60代男性、基礎疾患なし
初診時主訴:新型コロナウィルスワクチン2回目を受けてしばらく経つと、右肩が痛くなり、肩こりがひどくなったと思い、ご友人の紹介でうちの治療院を予約しました。しかし、その直後に痛いところに赤い発疹が出てきて、皮膚科で診てもらったら、「帯状疱疹」だと診断されました。抗ウィルス薬を10日間飲んで発疹が徐々に収まりましたが、痛みはまだ引かず、右肩から右胸にかけて、波様の強い痛みが襲ってきます。お知り合いの中で、同ワクチン接種後に帯状疱疹になった方はほかにもいらっしゃるそうです。
帯状疱疹後神経痛に関しては、今年4月18日に公開した「帯状疱疹後神経痛の鍼灸治療、そして新しい帯状疱疹ワクチン」でその詳細をご確認いただきたいと思いますが、鍼灸治療の役割は以下の通りです:
①ウィルスにより障害された脊髄神経の修復
②疼痛のコントロールと軽減
③外部物理刺激に対する疼痛閾値(敏感度)を下げる
④体全体の状態を整え、免疫力を上げ、再発を予防する
⑤薬物療法を受けている方にとって、薬の副作用を軽減する
ここでいう免疫力は特に細胞性免疫を正常な状態にもっていく必要があります。細胞性免疫は今日の午前に公開したブログ「どうして鍼灸は効くの(58)?」で言及したNK(ナチュラルキラー)細胞を含めた、キラーT細胞など、免疫細胞そのものによる、ウィルス感染細胞や癌細胞を攻撃する免疫のことをいいます。
経過及び治療結果:週に1度、3回の治療を終えた時点で発疹のある場所の痛みはだいぶ治まってきました。2週間後に念のためにもう一度予約をされたのですが、恐らく4回目の治療で、全治療を終えることができるかと思います。
新型コロナウィルスワクチンは、現段階で特に重症化を防ぐという場合において有効だそうです。mRNAワクチンの特徴の一つは抗体を作る液性免疫だけでなく、細胞性免疫も誘導できると言われています。ワクチンを受けた後に、この二つの免疫系統のバランス、Th1/Th2のバランスはどう見ていくのか、個体差をどう評価するのかなど、上記の研究結果の記載にあるように、今後のデータ蓄積及び更なる研究が望ましいです。
帯状疱疹は自然に治る場合も多いですが、帯状疱疹後神経痛に合併してしまう確率は60歳代では20%だと言われております。チリチリやピリピリのような今までと違った痛みやかゆみを感じたら、帯状疱疹の可能性も念頭に、皮膚科での早めの受診をお願いいたします。
余談になりますが、どんなワクチンもそうですが、ワクチンを受けた人の、その時の、免疫システムの働きにより効果が発揮できます。つまり、元々免疫バランスに何らかの問題を抱えていて、正常に機能していない、或いはギリギリの線引きで機能している人はワクチンを複数回受けても、期待通りにワクチンが体内で正しく作用しない可能性があります。ワクチンもいいですが、なにより、ここでもう一度確認しなければならないのは、自分の免疫力、体調全体をいかに回復し、保ち、高めていくことです。食事栄養、睡眠、軽い運動、精神的なストレス、飲酒といった生活習慣を見直して、まず自身の免疫力を整えていくことが一番大事だと思います。今の新型コロナウィルスもそうですが、今後更に強くなった変異種や新種ウィルスが出てくる時に、一番の特効薬はまず、自身の免疫力です。