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どうして鍼灸は効くの(46)?

2020年09月09日 公開

今日は熱ショックタンパク質と鍼灸の関係をお話します。

6、熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein: HSP)

ヒトのからだは水分、たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、無機質などの物質から構成されています。水分は体重の60%を占めていますが、水分を除いた乾燥重量の3/4はたんぱく質が占めると言われ、たんぱく質の種類も多く様々な機能を果たしています。その中の一種類は熱ショックタンパク質(HSP)があります。

HSPは1974年に発見されました。当時はショウジョウバエの幼虫が高温にさらされると、ある特定のたんぱく質が速やかに発現し且つ増えることがアルフレッド・ティシェールらの報告でわかり、熱ショックたんぱく質と名づけられました。実際には熱以外のストレス、例えば炎症、感染症、放射線、飢餓、疲労、低酸素状態などもHSPを増加させることができますので、ストレスたんぱく質(Stress Protein)とも言われます。

注目すべきところは、HSPは分子シャペロン*21という性質をもつということです。この特別な性質がありますので、HSPは様々な機能をもち、多種多様な役目を果たせるのです。

 

(1)たんぱく質のフォールデイング形成時の補助作用

私たちは肉・卵・豆腐などのたんぱく質を食べていてもそのまま吸収されず、消化酵素によってアミノ酸にまで分解されてから吸収できるようになります。吸収されたアミノ酸が細胞核にあるDNAの遺伝情報に従って更にいろいろな種類のたんぱく質を合成します。

たんぱく質の合成は種類を問わずすべて細胞内で行われています。大まかな細胞の構造ですが、細胞膜(形質膜)、細胞膜に包まれる細胞質と細胞核からなります。細胞質にさまざまな細胞小器官(前出)があり、それぞれの機能を果たしています。小器官の一つに小胞体があり、表面にボールの形をするリボソームと結合しているのは粗面小胞体、結合していないのは滑面小胞体です。たんぱく質は粗面小胞体のリボソームで作られています。リポソームでは、DNAの遺伝情報を転写された伝令RNA(m-RNA)が持っている遺伝暗号に従い、アミノ酸を次々と結んで、長い鎖の形をするポリペプチドやたんぱく質を作り上げていきます。

たんぱく質は50以上のアミノ酸残基からなるポリペプチドで、この細長いアミノ酸の配列は一直線の形にすると、非常に不安定で破壊されやすいため、自身の構造を安定化させるために、何度も折りたたんで、最後に丈夫な立体構造を形成するわけです。ところで、こんな複雑な立体構造(Folding、フォールディング)を形成する過程において“手助け”が必要です。この“手助け”をしてくれるのは実に熱ショックたんぱく質(HSP)で、HSPのこの補助作用のことを分子シャペロン機能ともいわれます。

新生たんぱく質のフォールディングの過程において、HSPのシャペロンとしての助けがあるため、順調に安定な立体構造を完成できるわけです。異常な高温(火傷)や低温(凍傷)などによる細胞たんぱく質の変性、化学製剤、薬物、感染症、免疫異常症など様々なストレスによる細胞たんぱく質が破壊された場合でも、HSPは破壊されたたんぱく質の構造修復、そしてたんぱく質新生のためのフォールデイング完成過程において、大いに活躍しています。そのため、HSPは細胞の再生、組織・器官の修復において重要な役割を果たしています。

 

(2)タンパク質移動時の補助作用

リボソームで生成されたたんぱく質はそれぞれに必要なところへ行かなければどうしようもありません。新生されたたんぱく質は、小胞体の中に入ったり、ゴルジ装置、ミトコンドリアなどの同じ細胞質にあるほかの細胞小器官に行ったり、また、細胞外に出たりして、活発に移動しています。ところが、小胞体に入るにしても、様々な細胞小器官、また細胞の外へ行くことでも、すべて膜(生体膜)を通らなければなりません。膜を通るときにたんぱく質の立体構造が壊される恐れがあるため、こんなときもHSPの分子シャペロン作用は大変役に立ちます。HSPの手助けにより、たんぱく質が無事に様々な生体膜を通過して移動できるようになります。

 

(3)細胞死に対する補助作用

細胞は個体と同じように発生から死に至るまで一定の生活期間、つまり寿命をもっています。細胞の寿命は種類によって著しく異なります。たとえば、赤血球は成熟してから約120日で死に至ります。骨細胞の寿命は約10年ですが、骨折の場合、細胞分裂が激しくなり数週間で治ることがあります。寿命の一番短い細胞は胃腸の表面を覆っている消化管上皮細胞で、24時間です。寿命が一番長いのは神経細胞と心筋細胞で、生まれてから一度も分裂せず、母体と同じ寿命をもっています。すなわち、分裂の激しい細胞ほど寿命は短く、再生能力も強いです。

細胞再生のため、古い細胞がまず死にます。不要になった細胞や損傷を受けて修復不可能な細胞の除去、癌化した細胞の処分など、個体を良い状態に保つために、管理されている環境で細胞死は計画的に行われています。そのため、細胞が死んでいくのは生理的で、自然なのです(細胞の自然死はアポトーシス、プログラム細胞死とも言います)。

自然死に対して、虚血・感染・外傷などによる細胞死を壊死(ネクローシス、受動的な細胞死とも言います)と言い、或いは病的なアポトーシスとも言います。実際には、アポトーシスとネクローシスはしばしば混在し、はっきりと分けることができない場合はよくあります。

この細胞死の過程において、熱ショックたんぱく質(HSP)は重要な役目を果たしている。細胞質で酵素により分解されたペプチドはHSPのシャペロン作用で小胞体TAP(ポンプ)へ輸送し、小胞体に存在するHSPによって、ペプチドとMHCⅠ分子との結合が促進されます。そして細胞質に存在したHSP-ペプチド複合体は細胞外に放出され、抗原提示細胞の樹状細胞(DC)上のHSP受容体にキャッチされたあと、免疫T細胞に提示し処分されます。

アポトーシスの重要性を示す一つの例には、毎日癌化した細胞が発生しているのに、癌にならないのはアポトーシスのおかげです。アポトーシスの過程において、HSPの働きを忘れてはなりません。

 

(4)免疫機能における補助作用

HSPは抗原提示などの重要な働きを持つため、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を処分するには役立っています。

 

鍼灸はHSPに対してどう影響しているのか

鍼灸臨床に使っている灸の材料はほとんどヨモギから加工されるもぐさです。昔はもぐさを直接皮膚に据える直接灸でしたが、近年、やけどになるのは嫌がられるため、もぐさと皮膚の間に空気層の距離を置く温灸(間接灸)が広く応用され、数多くの種類が開発されました。どの種類の灸であっても、もぐさが燃焼されるとき、光輻射の近赤外線(波長約1.5㎛前後)と熱輻射の遠赤外線(波長約7.5㎛前後)が出ます。近赤外線の伝導が遠くて表皮より10センチ以上組織の深くまで届くと言われます。遠赤外線が産生する熱も深く浸透できます。灸炷を表皮から8mmの高さで燃焼させると、皮膚表面の温度は56〜60℃になり、皮下の温度は45℃にもなります。お灸の光輻射と熱輻射は熱ショックたんぱく質に対してどんな影響を及ぼすかについて、近年、大変注目され、数多くの研究報告がありました。

熱ショックたんぱく質ファミリーにはHSP60、HSP70、HSP90などがあります。中にHSP70がもっとも広く存在し、多彩な働きをします。中国衛生部(日本の厚生省に相当)に所属する北京病院鍼灸科と北京中医薬大学鍼灸学院の共同研究で、お灸によってラットの血漿HSP70mRNA*22とHSP70値はともに上昇したという報告がありました。お灸のアンチェイジング効果を研究目的として更年期に入る直前のメスラットの腹部にある関元穴に点灸(直接灸)をし、週に2回、8週を経ってから脳視床下部のHSPmRAN、HSP70を測定したところ、お灸していない対照組と比べると、お灸を施す組のHSPmRNA値は25〜59%上昇し、HSP値70は38〜40%上昇しました。

 

貴陽医学院付属病院鍼灸科と病理科はお灸の温熱刺激が間脳にある松果体から分泌されるメラトニンというホルモンに対する影響や老化防止・長寿との関係を究明する目的で動物実験をしました。

メラトニン(N-アセチル-5-メトキシトリプタミン)の分泌は昼間に少なく、夜になると多くなり、血中濃度は一日の中で変化し、概日リズムを持ち、睡眠ホルモンとも言われています。以前からメラトニンは不眠症、時差ボケに治療効果があると認識されていますが、最近の動物実験で、強力な抗酸化作用(ビタミンEの2倍)、成長ホルモンの生成刺激作用、細胞の保護作用(核DANやミトコンドリアDANの保護作用)、免疫増強作用、腫瘍進行の阻止作用、細胞老化の防止作用などがあり、大変注目されています。

しかし年に従い、松果体の石灰化が進行し、細胞数が減り、メラトニンの分泌も少なくなります。いかに松果体細胞数を維持してメラトニンの分泌を保てるのか、貴陽医学院はこの研究に着目しました。

貴陽医学院は実験用のラットを老衰モデル組、灸組と対照組に分けました。灸組は老衰ラットの背中にある腎兪穴、脾兪穴に皮膚から5センチ離れた高さで5分間の棒灸を施します。6週間後に3組の松果体の細胞数とHSP70を測定したところ、モデル組の松果体細胞数が著しく減少し、配列が悪く間質が多くなりましたが、灸組の松果体細胞数がモデル組より多く、間質も少ないです。そして、モデル組松果体のHSP70陽性細胞がだいぶ減りましたが、灸組のHSP70陽性細胞は対照組ほどではないですが、モデル組よりはるかに増えました。結果としては、お灸の温熱刺激は熱ショックたんぱく質(HSP)の生成を増加させることができ、細胞の健全な再生を促し、健康維持、病気予防、老化を遅らせる効果があるとの結論が出されました。

 

お灸には生体のHSP産生を促進する充分な熱さをもっています。細胞の再生、組織の修復、抗原提示作用による免疫増強やガンの予防などに重要な一翼を担っています。身体全般の健康維持にはもちろん、局所の治療に効果的です。例えば、膝の炎症(変形性膝関節症など)に対して、炎性物質の吸収・処分、組織の修復・再生などの作用により、膝の痛みや腫れなどの症状は速やかに改善できます。ほかの部位の筋・腱・靭帯・関節などの損傷・炎症に対しても、灸療法は確実な効果があります。

 

*21 分子シャペロン作用:シャペロン(chaperon)の本来の意味は、若い女性の付き添いをする婦人のことで、特に社交界に出るときに必要としている役です。分子シャペロンは、たんぱく質構造の形成や分子の移動・変化するときに助けてくれる役割を果たす意味です。

 

*22 HSP70mRNA:mRAN(メッセンジャーリボ核酸 伝令RNA)はHSP70がリボソームで合成されるとき、DNAからの情報を伝える役割をします。その指令に従ってHSP70は合成されます。mRNAの量が多いならHSP70の合成も多いです。

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