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どうして鍼灸は効くの(45)?

2020年07月13日 公開

前回は生理活性物質である血管作動性腸管ペプチドを書かせていただきましたが、今日はもう一つ、アセチルコリンとコリン作動性抗炎症性経路に関連する話題をお届けします。

 

5、アセチルコリンとコリン作動性抗炎症性経路(CAIP)

 

2000年にアメリカ人のLyudmila V.Borovikovaが「コリン作動性抗炎症性経路」という仮説を提出しました。その趣旨は副交感神経の興奮により抗炎症効果が起こされるということです。また、日本国内の多数の関連機関の研究においても、同じ結論は出されました。

自律神経の節後線維のシナプス結合において、副交感神経の末端からアセチルコリン(ACh)という神経伝達物質を放出します。効果器にあるACh受容体は2種類があり、一つはニコチン作動性受容体、もう一つはムスカリン様受容体です。

AChを伝達物質とする神経をコリン作動性神経ともいう。副交感神経の働きは前文に紹介したように、主に血管拡張、心拍数減少、消化管運動増強、消化機能亢進などがありますが、最近大変注目されたのはその抗炎症性作用です。近代医学の研究機関において多数の動物実験や臨床研究報告がありました。それらの内容をまとめてみると、次のようになります。

 

① ヒトのニコチン受容体にはα1-7、α9-10、β1-4、δ、ε、γなど複数のサブタイプがあります。免疫細胞のマクロファージ、マスト細胞(肥満細胞)、ミクログリア(中枢神経系における貪食細胞)などにα7受容体が存在しています。

 

② 副交感神経、とくに迷走神経は炎症の刺激で興奮して放出するAChがマクロファージなどの免疫細胞にあるα7受容体と結合し、免疫細胞を活性化させます。

 

③ 活性化した免疫細胞は同時に腫瘍壊死因子(TNF)*17などの炎症性サイトカインの放出を抑制する機能を発揮します。アセチルコリンの放出から免疫細胞の抗炎症反応まではコリン作動性抗炎症性経路と言われています。

 

④ コリン作動性神経と免疫細胞の間の反射は自律反射です。反射中枢は脊髄にあるものは脊髄反射で、脳幹にあるものは上脊髄反射です(詳細はこのシリーズブログ37回などをご参照ください)。中枢神経系もコリン作動性抗炎症機能に関与している。迷走神経内の感覚線維(求心性線維)が生体の炎症を感じ取ると、その信号を視床下部や大脳辺縁系などにシグナル伝達*18で送り出す。脳は抗炎症シグナル伝達機構による対応・統合された後、またこのシグナルを迷走神経の遠心性線維を介して各々の臓器に伝達します。これで中枢神経系は直接且つ素早く炎症の過剰反応を抑制し、免疫系活動のバランスを調節する。

 

では、鍼灸はこの抗炎症性経路にどのような関係性を持つのかについて見てみましょう。

 

① 自律神経を調節するのは鍼灸の最も得意の技です。前文に紹介したように、交感神経系の節前線維は第1胸髄から第2~4腰髄までの脊髄側柱に起始し、一部は脊髄神経に入り皮膚にある血管、汗腺、立毛筋に終止します。副交感神経系は脳幹に発する動眼神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経と仙髄に発する骨盤神経からなります。中の迷走神経は心臓、肺、気管支、胃腸、肝臓、膵臓などの機能を支配し、最も支配領域が広いです。体幹部を鍼灸で刺激すると脊髄反射により交感神経が調節されますが、手足にあるツボを刺激すると上脊髄反射により副交感神経が調節され、特に興奮しやすいのは迷走神経そのものです。

 

② 迷走神経は、外受容性知覚線維、内臓運動性線維、内臓知覚性線維および味覚線維を持っています。外受容性知覚線維は耳介枝を出して、外耳道の皮膚、さらに耳介一部の皮膚感覚を司ります。ヒトの耳に逆さまになっている胎児のように、体のすべての組織・器官に関わるツボがあります。経絡のツボと違って、独自のツボ配置と刺鍼のやり方があります。外耳介あたりの皮膚に多数のツボがあり、中で有名な「痩せツボ」もあります。痩せる効果があるのは迷走神経の消化機能調節作用によってなされていますが、ここで特に言いたいのは耳珠前にある「腎上腺」(副腎)というツボです。このツボは副腎皮質ホルモンと同じように抗炎症作用、免疫増強機能があると言われていますが、実は、この抗炎症作用もやはり迷走神経を刺激してコリン作動性抗炎症性経路を活性化した結果です。

 

③ ツボ辺りにはマクロファージ、肥満細胞(マスト細胞)などの免疫細胞はツボでないところより多く存在しています。刺鍼すると、免疫細胞は更に鍼の周辺に遊走してくるということは、ラットなどを使った動物実験ではっきりと分かっています。この現象は肥満細胞の脱顆粒(後文参照)などと関係がありますが、免疫細胞は鍼を異物だと認識して処分しようと鍼の周囲に集まってくると理解してもよいです。実際、刺鍼すると、鍼の周りが赤くなったり、少し膨らんだりする現象は臨床でよく観察されます。赤くなるのは軸索反射によるものでもありますが、活性化された免疫細胞、特に肥満細胞における貯蔵顆粒から血管作動性アミンを放出して、血管拡張・血管透過性の亢進によるものでもあります。

 

④ 鍼灸によって副交感神経と免疫細胞は同時に活性化されることで、コリン作動性抗炎症性経路(CAIP)がが形成されます。鍼灸臨床でアレルギー性鼻炎、慢性関節リウマチなどのアレルギー性炎症、慢性気管支炎、潰瘍性大腸炎、慢性胆のう炎、慢性膵臓炎など内臓の炎症、関節、筋肉、腱鞘など運動器官の炎症に対し、確実に治療効果があります。また、使い過ぎによる手指の痛み、歩き過ぎによる足の痛みなど、病院へ行くほどではないのですが、つらくて仕事に支障をもたらす症状に対しても、一、二回の鍼灸治療で改善されることがよくあります。この効果もCAIPの理論で説明できます。

 

中国中医科学院鍼灸研究所は動物実験(ラット)で、鍼灸の刺激によってCAIPの活性化が促進されるのを実証しました。ラットを12匹ずつに、モデル組、耳珠迷走神経鍼組に分けました。両組のラットにLPSというリポ多糖*19を注射して敗血症や中毒性ショックを起こします。注射して一時間半後に、鍼組のラットに両側耳の迷走神経耳介枝が分布する外耳道と耳介部に2本の鍼を刺鍼し、低周波で20分の持続的な刺激を加えます。そして、各組のラットの腹大動脈の血を採って、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)と炎症性サイトカインのインターロイキン-6(IL-6)を測定します。また、肺組織をとり、肺組織の核内因子NF-κBp65*20を測定します。

 

その結果、TNF-α、LI-6、NF-κBp65の三項目のデータについて、モデル組はすべて著しく上昇したのに対し、耳部鍼組は明らかに低くなりました。結論としては、鍼による迷走神経の活性化は有効的に炎症性物質の放出を抑制できます。そのメカニズムは、外耳介に分布する迷走神経の外受容性知覚神経の一部が内臓知覚性線維核(孤束核)に投射し、孤束核で情報処理した後の信号を迷走神経背側核から出てくる内臓運動性線維を介して、迷走神経の活性を強化させたと考えられています。

 

この実験は4月19日のブログ(「“重症化しない”がキーワード―withコロナ時代に生きる」)で既に書かせていただきました。新型コロナウィルス感染による重症化を鍼灸治療で予防及び治療する医療現場の試みもこのブログで言及しており、ご興味のある方はこのブログをご覧になってみてくださいませ。ここで概略しますと、肺炎に移行してしまうような重症化には、“炎症性サイトカインストーム、つまり免疫暴走”が関与していることがわかり、いかに免疫暴走を起こさせないと同時に、正常な免疫力を回復させるかは、ここで重要になってくるわけです。今日のブログで紹介したように、鍼灸治療は元々この免疫暴走を止めながら、患者さん本来持つ免疫レベルまで免疫力を回復させる効果があるため、重症患者病棟で鍼灸師が活躍できたわけです。医療はいかなる時でも患者さんの体のことを含めた、患者さんの利益を最優先に考えるべきですので、特に特効薬とワクチンはまだない中、副作用のない鍼灸治療に特別に期待します。

 

次回は熱ショックタンパク質の話をさせていただきます。

 

*17 腫瘍壊死因子(TNF): 最初に腫瘍を壊死させる機能を持つサイトカインとして発見されましたので、腫瘍壊死因子と名づけましたが、のちにむしろ炎症性サイトカインとして注目されるようになります。マクロファージ・樹状細胞・リンパ球・好中球・マスト細胞・表皮細胞・線維芽細胞・血管内皮細胞など様々な細胞から産生されます。TNFは、ガン細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導したり、好中球が血管から感染箇所に遊走するのを助け、好中球・マクロファージなどの食作用を増強したり、血管新生、線維芽細胞の増殖・傷ついた組織の修復などを促進する働きがあります。

 

*18 シグナル伝達: 情報(信号)伝達のことです。情報伝達は細胞間で行われるものと細胞内で行われるものに分けられています。私たちの身体はリガンド(ホルモンやサイトカインなどのシグナル分子)が細胞膜にある受容体と結合する瞬間から一連の反応をおこし、最終的に受けた情報(指令)に従い、細胞膜のチャネル開口、遺伝子の転写、たんぱく質の再生、細胞のアポトーシスなどの生理応答がおこり、生体内環境の恒常性(ホメオスタシス)が維持されるようになります。

 

*19  リポ多糖(Lipo.polysaccharide,LPS): 脂質と結合した多糖類の総称ですが、グラム染色陰性菌の細胞壁表層にある脂質と多糖の複合体は動物に対して強い特有な毒性をもちます。この毒性を内毒素(エンドトキシン)といい、炎症性サイトカインの放出を亢進させます。過剰な炎症性サイトカインは生体に強い毒性をもたらし、中毒性ショック、多臓器不全、更に死に至ることもあります。

 

*20  NF-κBp65(核内因子κBp65): NF-κBは転写因子として働くタンパク質複合体です。サイトカイン、ストレスなどの刺激によって活性化され、炎症性サイトカインのTNF-α、IL-1、IL-6の放出を促進します。また放出された炎症性物質によりNF-κBtが活性化され、生体の炎症を悪化させます。構造的にNF-κBはクラスⅠとクラスⅡの二つに分類され、p65はクラスⅡに属します。

20190507121054_IMG_0537 遠くへ遊びに行きたいという思いはありますが、今は行けませんので、1,2年前の写真を眺めます^-^。

20190619164046_IMG_2007~2 こちらもだいぶ前の写真ですが、透き通った川で泳ぐ亀の子は可愛いです。涼しそうです。

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このシリーズの内容は当治療院の許諾を得ないで無断で複製・転載した場合、当治療院(=作者)の著作権侵害になりますので、固く禁じます。

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