鍼談灸話(4):老化を引起す慢性炎症に対する鍼灸治療②—微小循環
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
2016年12月8日のブログ「鍼談灸話(2):老化を引起す慢性炎症に対する鍼灸治療①」では、鍼灸が慢性炎症を抑える四つの仕組みを提起し、そのうちの「炎症性サイトカイン」に焦点を当て、自分なりの考え方を述べさせていただきました。今回の「鍼談灸話」では、鍼灸と微小循環の活性化の関係について、お話をさせていただきたいと思います。
さて、もう一度鍼灸が慢性炎症を抑える仕組みを書きますと、
①炎症性サイトカインを抑制し、抗炎症性サイトカインを活性化できる。
②炎症性物質や老廃物をすばやく回収するための微小循環を活性化できる。
③慢性炎症を取り除く免疫応答機能を回復&強化できる。
④自律神経のバランスを取り戻し、抗炎症作用を強められる。
現時点では、上記の四つを考えております。
慢性炎症に関与する炎症性物質や老廃物を炎症部位からすばやく回収すれば、炎症の更なる拡大と慢性化がある程度防げることは容易に想像つくと思いますが、これには炎症部位周辺の微小循環を活性化させる必要があるのです。
人体の血管は心臓から直接出ていく大動脈、動脈、細動脈、毛細血管、細静脈、静脈、そして心臓に返る大静脈に分類されます。つまり、細動脈と細静脈はそれぞれ動脈と静脈の末端にあり、二者をつないでいるのは全身に分布する毛細血管です。「微小循環」はこの毛細血管、細動脈、細静脈からなりまして、循環系統の中心的な役割を果たしております。微小循環を介して、各組織に栄養と酸素等を提供し、代謝後の老廃物や炎症性物質を回収します。微小循環が障害されると、各臓器の機能低下、組織の機能不全につながり、生命維持自体が難しくなります。
微小循環を活性化するには、
○循環血液量(心筋収縮力)の増加
○血管拡張
○血液粘性(血管壁に異常蓄積する脂質)の改善
○活性酸素の除去
が必要です。
例えば、普段よく聞く「動脈硬化」も微小循環と密接に関係しております。動脈硬化は、血管内の過剰なLDL(悪玉コレステロール)が活性酸素によって酸化され、損傷した血管の壁にマクロファージ、血小板が集まってくることにより、血管の壁が脆弱し、やがて繰り返し血栓を形成することで起こります。大動脈硬化だけでなく、細動脈硬化も当然起こりえます。微小循環の障害はこの動脈硬化、高血圧以外に、糖尿病による血管障害、心筋梗塞、脳梗塞などの危険性を高めてしまいます。
以前のブログで、シリーズ「どうして鍼灸は効くの? →鍼鎮痛」の①、②、③では、軸索反射、体性-自律反射について書かせていただいたことがあります。鍼による痛みを抑える効果を現代医学の立場から検証したものですが、その中で、鍼による血管拡張作用について既に幾度触れておりました。また、お灸の治療も、血管を拡張し、お灸を据えた局所だけではなく、全身の血液循環をもよくする作用があります。
今まで中国や日本で行われてきた臨床実験でわかったことがあります。鍼灸治療により、体内にある抗酸化酵素のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を活性化させ、活性酸素の産生を抑制する効果があります。また、血中の中性脂肪とLDLを有意に下げ、HDL(善玉コレステロール)を増やします。このことにより、鍼灸は活性酸素の除去と血液粘性の改善に有効だと言えます。
また、鍼灸治療による強心・増血作用も認められ、これに関しては東洋医学の教科書や国家試験にも出てくるぐらい、鍼灸の治療効果の中で有名な話です。鍼灸によって微小循環が改善されるのは今となってわかったものではありません、これらの研究は長い間世界各国でなされてきました。また、微小循環の改善は今回の主題:「老化を引起す慢性炎症」の改善に役立っていることは既に前回の「鍼談灸話(2)」でお話させていただいた通りです。