腫瘍内科医の存在
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
「腫瘍内科医」は抗癌剤治療の専門医で、本来は全身の臓器や部位にできるがんに対応できることが求められます。日本にいる腫瘍内科医の人数はまだ千人ぐらいと少なく、全ての総合病院にいるとは限りません。がんの摘出手術を行った外科医などの一般医が直接抗癌剤の投薬を行うことは普通です。
抗癌剤治療は副作用という大きなリスクが伴いますが、副作用よりも治療メリットのほうが大きいと判断した場合、抗癌剤治療が勧められます。抗癌剤以外、もちろん外科手術と放射線治療の選択肢もありますので、どの治療法がいいのか、或いは複数の治療法を組合わせたほうがより高い効果が期待できるのか、治療開始と終了のタイミング、考えられる副作用と効果など、主治医の先生から詳しい説明を聞いた上で、患者さんご本人が治療法に同意し、治療開始という流れになります。
がんの診断を受けてから、うちの治療院に初診でいらっしゃる患者さんを治療するに当たり、まず一番大事なことは、これから病院で始まる抗癌剤、手術、放射線治療に耐えられる体力と免疫力をつけておくことです。そのための鍼灸治療と同時に生活指導も欠かせません。既に病院での外来治療を受け始めた患者さんに対する治療方針も同様で、加えて白血球減少、四肢末端の痺れ、食欲低下等の副作用を緩和するための治療も同時に行います。鍼灸で非常に良い治療効果が得られ、多くの患者さんが普段通りの仕事と日常生活をこなしながら、治癒した方もいらっしゃれば、高いQOL(生活の質)を維持しながらがんとうまく共存している方もいらっしゃいます。しかしその中に、重大な抗癌剤の副作用に苦しむ患者さんを目にすることも時にあります。
今1人抗癌剤の副作用で容体が急変し緊急入院した患者さんを見て、そう思います。転移・再発した、元々体力のない高齢の患者さんに、そこまで強い抗癌剤を長期にわたり、投与する必要が果たしてあるのでしょうか。しかも患者さんは既に一度全く同じ副作用で重篤状態になったばかりです。その患者さんは先週治療院で生き生きとした笑顔で、「先生が食べなきゃだめというから、昨日お寿司を食べに行った、とても美味しくてたくさん食べた!」と確かに言いました。顔色はよく、しゃべる声も力強い、1人で電車に乗ってうちの治療院に通うぐらいの体力は十分にあります、血液検査でリンパ球等白血球の数字もいいレベルに維持できています。しかしわずか一週間後の緊急入院と集中治療室。私は思います、患者さんのがんのステージ、年齢、体力に合わせて使う抗癌剤の種類、治療期間、場合によっては抗癌剤を一旦中止する別の判断も検討も調整も、本当はもっとあるべきではないでしょか。腫瘍内科医のような抗癌剤副作用のリスクマネジメントのプロに早い段階でセカンドオピニオンを求めることもできるのではないでしょうか。そもそも患者と主治医の間の意識のずれを主治医の先生が気付いているのでしょうか。
1人の患者さんの命がかかっているのです。自分の鍼灸師としての限られた立場で、どうしたらもっと患者さんのために役立てるのか。考える日々が続きます。