症例紹介:帯状疱疹後神経痛
こんにちは。渋谷区幡ヶ谷の胡鍼灸治療院です。
ひと昔帯状疱疹という病気はそれほど多くなく、帯状疱疹後神経痛も少なかったですが、今ではよく知られるようになり、子供の頃に一度水痘にかかり、大人になった後になる病気です。水痘は水痘・帯状疱疹ウィルスによりおこる病気で、このウィルは非常に強い伝染力を持ち、直接触れ合わなくても、発症者の近くにいるだけで感染します。重症の帯状疱疹と水痘発症者からは空気感染することがあります。
さて、水痘に一度かかると、体内に侵入した水痘・帯状疱疹ウィルスがそのまま脊髄神経節に居残り休眠します。免疫力が低下した時に覚醒し活動が活発になり、結果的に帯状疱疹が発症します。帯状疱疹の典型症状はまず皮膚のピリピリとした痛み或いはかゆみから始まり、そして帯状の水泡を伴う発疹になります。一部の方(特に高齢者や帯状疱疹の治療が遅れた方)は発疹が治った後も、強い痛みが残り、帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行してしまいます。こうなると、治療が長期化し、痛みがなかなか治りにくく生活の質が著しく損なわれます。
PHNを予防するには、何といっても自身の免疫力を保ち、帯状疱疹を予防することです。うちの治療院に定期的に通われている方(病気予防・健康増進のため)は途中で帯状疱疹を発症することはまずありません。これはみなさんが鍼灸治療を通して高い免疫力をずっと保たれているからです。さて、今日は治療期間三か月半の症例を紹介致します。
患者様 :88歳女性、初診
治療期間:2025年8月2日ー2025年11月14日
初診時主訴:2025年4月に右側の頭が痛いと感じ、軽い目まいと目の違和感、体のだるさもありました。頭痛持ちではありませんので、ほかの病気ではないかと心配して、近所のクリニックを尋ねましたが、総合診療できる大きな病院を紹介され、翌日受診したところで、後頭神経痛と診断され、神経痛の薬を処方されました。しかし、症状が緩和されなかったので、数日後再度総合病院で診てもらったところ、頭部の帯状疱疹だと診断を改めました。その後、右眉毛の上から、右額、右頭頂部の頭皮まで疱疹が出るようになり、帯状疱疹の治療薬を飲み終わったところで、疱疹がまだ目立っていたとは言え、少しずつかさぶたがでて、改善方向に向かっていったのですが、痛みは変わりません。その後神経痛治療薬と鎮痛薬の服用を毎日続けているのですが、痛みは引かず、受診した日も痛くて、今後何年もこの痛みは続くのではないかと不安で仕方ないそうです。
治療結果:最初の三回は週に一回、それから2週間に一回、合計9回で痛みが取れて治療を終えました。六回の治療を終えた段階でご本人の判断で、鎮痛薬の服用をやめたそうで、やめても痛みはないそうです。
鍼灸治療の役割は以下の通りです:
①ウィルスにより障害された脊髄神経の修復
②疼痛のコントロールと軽減
③外部物理刺激に対する疼痛閾値(敏感度)を下げる
④体全体の状態を整え、免疫力を上げ、再発を予防する
⑤薬物療法を受けている方にとって、薬の副作用を軽減する
ここでいう免疫力は特に細胞性免疫を正常な状態にもっていく必要があります。細胞性免疫はNK(ナチュラルキラー)細胞を含めた、キラーT細胞など、免疫細胞そのものによるウィルス感染細胞や癌細胞を攻撃する免疫のことをいいます。
薬の副作用は主に、鎮痛薬や神経痛治療薬による腎臓障害の予防、胃腸障害の緩和、不眠状態の改善などです。
帯状疱疹後神経痛になってしまったら、痛い場所だけを治療すればいいということではなく、免疫を含めた全身の状態をよくしていく必要があります。これは治療薬を服用していても、患者様ご本人がまず意識していただくことです。帯状疱疹になった時点で、免疫力が既に低下してしまい、体が悲鳴を上げていることを理解し、からだ全体の回復に取り組まないと、免疫力低下によるほかの病気にもかかりやすくなります。
帯状疱疹後神経痛に関しては、鍼灸治療は非常に治療成績が良く、個人的には治療の第一選択肢にしたいところです。一旦なってしまったら、ぜひご近所で信頼できる鍼灸治療院を探して、治療を受けることをお勧めします。











