どうして鍼灸は効くの(16)?
七、日本の鍼灸現状はどうなっているか
三十年ぐらい前に日本では再び鍼灸ブームになりました。このブームに乗り鍼灸専門学校や鍼灸学科のある専門学校はすでに100校近くあります。京都府にある明治鍼灸大学は鍼灸師養成大学で、2008年4月に明治国際医療大学に改名され、鍼灸学部と大学院鍼灸学研究科が置かれています。1987年3月10日に当校からは初めて92名の鍼灸学士が誕生しました。また大学院には、博士前期課程(修士課程)と博士後期課程が設けられ、卒業すると鍼灸学の修士学位と博士学位が取れます。これからたくさんの有志有識の士が現れ、鍼灸学についての研究はどんどん進み、鍼灸治療効果の秘密が全部解明できる日もそう遠くないかもしれません。
現在、日本では毎年鍼灸学科の卒業生の人数は約7,000人がいます。近年、鍼灸療法は医学として重要視されつつあり、各国の研究はかなり速いスピードで進んでいるため、学校で勉強する内容の広さと深さはますます強化され、難しさもいっそう増しています。学校を卒業できれば国家試験を受ける資格が取れます。国家試験に合格したら鍼師と灸師の資格が取れ、鍼灸師として臨床仕事ができるようになります。国家試験の内容が年々難しくなり、学生たちも資格を取るために相当真剣に勉強しなければなりません。
鍼灸師の資格を取ってから、臨床治療に携わることができますが、皆さんはほとんど数年をかけてどこかの治療院か学校の付属施術所などで修業しています。鍼灸師たちの就職先は、総合病院の鍼灸科或いはリハビリテーション、個人病院の整形外科、接骨院、老人ホームなどですが、うちの一部の鍼灸師は独立開業しています。鍼灸ブームといっても、日本ではまだ西洋医学一辺倒の状態で、様々な理由から鍼灸師の資格を持っていても臨床のお仕事ができない人はいるのではないかと思います。
日本鍼灸師の団体としては社団法人・日本鍼灸師会があります。昭和25年(1950年)11月30日に参議院会館において創立総会が開かれました。翌年(1951年)日本鍼灸新報が創刊し、同年10月には日本鍼灸治療学会が発足し、第一回の学術大会は開催されました。以来、鍼灸師の専門職能団体として各方面で活躍しています。
鍼灸医学の学術団体としては全日本鍼灸学会があります。鍼灸師をはじめ、医師、歯科医師、医科学研究者など、鍼灸医学に関心を持つ方々が加入しています。鍼灸師たちは国際シンポジウムに参加したり、各国の研究者などを招いて日本でシンポジウムを開催したりもします。毎年全国規模の学会が開かれる以外、各地域で支部研修会・勉強会などを開いたりします。最近、特に「健康で長生き」、「エコ医療」など環境に優しく、自然治癒力を確実に高めることができる鍼灸医学についての研究は盛んに行われています。日本鍼灸師会の学会誌としては「全日本鍼灸学会雑誌」があります。
現在、鍼灸治療は健康保険の効かないものが多いですが、いくつかの条件がそろえば、次の症状が健康保険で治療を受けることができます。
①神経痛(たとえば坐骨神経痛)、②リウマチ、③腰痛、④五十肩、⑤頚肩腕症候群、⑥頚椎捻挫後遺症。
「条件」というのは、まず医師の同意書が必要です。また3か月ごとに医師同意の更新が必要です。そして、鍼灸治療を受けている期間は同じ病気で病院にかかることができません(これは病院の減収につながります)。それ以外に、鍼灸師のほうにまたいくつかの条件がついているため、実際には、日本で保険を使って仕事を行う鍼灸治療院はかなり少ないです。健康保険で鍼灸治療を受けられないのは、日本における鍼灸の普及に一つの障害になっているのではないかと思います。
もちろんこのブログシリーズはこの議論が言及対象ではありませんが、既に年間43兆円を超える国民医療費のシェア2トップである「悪性腫瘍(新生物のうち悪性のもの)と循環器系」疾患への鍼灸による予防効果を考えれば、今後国の政策レベルで議論する意義はあるかと思います。
紫陽花は綺麗になってきました。
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